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明治大学広報
第587号(2007年9月1日発行)
論壇
「駿台学」と明大人
大学史資料センター所長 渡辺 隆喜
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 「駿台学」。この言葉を使い始めてすでに久しい。明治大学に個有な学問や知的伝統を指す言葉である。21世紀を迎え、この言葉に代表される伝統の検証は、明治大学にとって大変重要な課題である。

 かつて明治大学は、昭和6(1931)年、創立50周年を契機に、関係者の間で「大明治建設」論や、「学の明治」確立論が語られてきた。当時は政治経済学部、女子部が成立した直後で、かつ文科専門部(現文学部)誕生前夜であった関係で、大明治建設論は専ら学部増設論であった。以来今日まで、その伝統が継承されるに至った。 

 一方、「学の明治」確立論は、大正9(1920)年の明治大学への昇格を契機に、専任教授体制が義務づけられ、明治大学でも自校出身の優等生を海外留学させ、帰国後に教授に採用する方針がとられたことと関係する。これがアイデンティティ見直しによる明治大学独自の学問のあり方を模索する機会を与えることになった。こうして「学の明治」論が登場する。

 かつて私は、明治大学卒業生の留学先が、アメリカに多いこともあって、新興資本主義の影響をうけた若手教授層の誕生が、明治大学の清新な学風確立に寄与したことを指摘した。明大の建学理念と大正デモクラシーの風潮との合致が、新しき民衆中心の大学設立に結びつく可能性を考えたからである。

 大学史資料センターでは数年来、この「駿台学」を課題とし、初代文科専門部長で大審院判事の尾佐竹猛、愛媛県会議員安藤正楽、人権派弁護士の布施辰治、平出修、山崎今朝弥らのほか、元内閣総理大臣三木武夫の検証を行なってきた。尾佐竹がそうであったように、基本的人権と普通選挙制による立憲国家を描く学問は、明治大学の建学理念の学問化であり、21世紀学問の基本視点を提示する「駿台学」の原点を示すものであった。

 以後、その教育が卒業生や関係者に、どのような影響を与えたかは、検証するべき重要な課題である。明大出の有名人に限らず、地方在住の校友をはじめとする全明大人の生き様が問われる必要があるのである。この検証は明大が継続する限り果たさるべきものであるが、とりあえず明確にしておかねばならぬ緊急の課題がある。

 それは「大明治建設」論と「学の明治」確立論との相関の問題である。「個」の自立を単なる題目とせず、建学理念とかかわる新学部の教育哲学の構築がそれである。21世紀のリーダーとし、世界に飛躍する国際的な明治大学理念の創出が今、問われているのである。

(文学部教授)

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