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明治大学広報
第587号(2007年9月1日発行)
本棚
佐藤義雄、恒川隆男 編著 津田洋行、長沼秀明、井戸田総一郎
ほか 著
「『近代への架橋』 明治前期の文学と思想をめぐって
(蒼丘書林、5,600円)
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 福沢諭吉が「一身独立して一国独立す」といったことはよく知られている。「近代」の意味がこのようだとするなら「一国独立す」は今日の文脈では憲法改正と愛国心教育に向けられているようにみえる。

 私たちが自明としている「近代」が明治時代の初めに人びとに構築された観念であるとするなら、今日「近代」がこのように使用されるのは、この観念の構築の仕方に問題があったからではないか。

 本書に論考を寄せている6人の著者たちは福沢諭吉と横井小楠の思想、明治初年の政治小説、日本語ローマ字化論、演劇論、小説に描かれた都市と象徴などを検討することで、当初の近代のニュアンスを明らかにしようとする。

 明らかになるのは、たとえばこうだ。福沢諭吉の理想とした国の運命と自分の運命を重ねて考え一命を投げ出すこともいとわない国民は、啓蒙と教育からではなく、日清戦争での対外戦争と天皇への熱狂から生まれたということ。文明開化のためのさまざまな活動には影の部分もともなっていたのである。

杉山光信・文学部教授
(編著者はともに文学部教授、著者は順に同教授、同講師、同教授)



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