第589号(2007年11月1日発行)
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ニッチ産業、ニッチビジネスなどの「ニッチ」という言葉に、野球の変則投手のような、正統派とは対極のイメージを抱くのは私だけだろうか。「隙間」という訳語が、その原因ではないかと思う。
生物学用語としてのニッチは、ある生物が生態系の中で得た最適な生息場所、という意味を持つ。再生医療の切り札として期待される幹細胞は、生体内のニッチでのみ、その特殊な能力を維持することができる。このように「ニッチ」には「適所」の意味が強く、決して「変則投手」の代名詞ではない。むしろ王道のイメージさえ漂う。
個人や組織にも、ニッチがあろう。大学間競争の風潮の中で、本学のあり方も問われているが、もっとニッチを意識してはどうかと思う。
夜行性のフクロウは、昼行性のワシやタカと共通のエサを、時間をずらして捕食することで、自らのニッチを築いている。明治のニッチを確立すれば、危機意識を煽る生き残り競争の消耗戦からは一線を画して、教育・研究・社会連携にまい進することができよう。これぞ明治の勝ちパターンではないか。
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