第591号(2008年1月1日発行)
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「共済事業と日本社会」
押尾 直志 監修 (保険毎日新聞社、1890円) |
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2005年に保険法が「改正」された。この「改正」の裏に米・日の営利保険会社の要求が働いていたことは紛れもない事実である。米・日双方の営利保険会社は、近年、「死亡保障」を中心にした保険から「生存保障」の医療保険や傷害保険に参入するようになり、両者の間で非常に激しい「競争が行われるようになった。そこで両者が目をつけたのが「共済市場」である。日本の共済市場は非常に大きく、営利保険にとっては大変魅力的な市場である。
しかし営利保険が今直ちに農協や生協の共済を取り込むことは法的に難しいので、例えば、障害者とその保護者が組織した「自主共済」を規制して営利保険がそれを取り込むことができるようにしたのである。自主共済は、市民相互の信頼、助け合い、協同の努力などによって成り立っている。その自主共済を規制して営利保険に有利な法律を成立させたことは市民生活全般に重大な影響を及ぼす。何故なら、それは市民社会を支えている助け合いや協同の努力といった市民の営為を破壊する行為だからだ。本書は、こうした共済規制の本質とそれに対抗することの意味とを明らかにしている。
中川雄一郎・政治経済学部教授
(監修者は商学部教授)
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