第594号(2008年4月1日発行)
本棚
「インドの女性たちの肖像」
−経済大国の中の伝統社会
鳥居千代香 訳 (つげ書房新社、2500円)
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「恋愛結婚の末、切り裂かれて」「隣人達に暴行されて」「伝統的売春村落の少女たち」「魔女の汚名をきせられた女性」…。目次に並ぶ各章のサブタイトルである。読み進むのが辛くなるような現実が、近年経済躍進目覚しいインドでの女性たちの姿である。本書はそのインドで、事態を改善すべく設置された「インドの女性のための委員会」の委員を務めた著者が、実際に扱った事例をもとにまとめたものである。
結婚しなければ救われないというヒンズー教の教えのもと、学ぶことも、働くことも、抵抗することをも否定された女性たちの生活がいかに虐げられ苦渋に満ちたものかが、著者の怒り、そして無力感とともに語られている。
医学部進学を夢見て希望に燃えた少女が、やがてすべてを打ち砕かれ精神的にも肉体的にも崩壊していくさまは痛ましいとしか言いようがない。だがその中でも著者のように戦う人がいて、訳者のようにそれを広く世界に知らせようとする人がいる。希望を失うことはできない、との著者の言葉に救われる思いがする。
吉田恵子・情報コミュニケーション学部教授
(訳者は政治経済学部講師)
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