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明治大学広報
第596号(2008年6月1日発行)
論壇
自治の大学共同体にむけて
教務担当常勤理事 土屋 恵一郎
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 明治大学は新しい理事会、評議員会の体制の下に、新しい年度を迎えた。学部長と連合教授会がその意志を共有して、結束を緩めることなく戦ったことが、現在の体制を作り出した。新理事会、評議員会の基盤は、教職員のゆるぎない団結のうちにある。このことは何度でも確認しておかなければならない。

 これからは、明治大学の教員自身が、大学自治と経営の中心であることの認識を新たにしなければならないだろう。

 創立者の岸本辰雄は「明治大学の主義」として「権利・自由/独立・自治」をかかげた。岸本自身、教育者であり、同時に明治大学の経営に奔走する経営者であった。「独立・自治」とは、国家に対して、私学のあり方を示すものであり、教育と大学運営が別のものではないことを語っている言葉であった。教員は、大学経営の主体であった。そのことを忘れてはならない。今もそのことに変わりはない。「自治」の原則を明治大学が建学の精神とするなら、教員が大学経営に対して何ができるのかを自問することが必要だろう。

 カントは、大学の自由と自治の原則を言うとき、国家の保護と援助を受けることに反対した。しかし現代において、まったく国家の補助を受けることなく大学を運営していくことはできない。だが、カントが言っていることがまったく間違っているわけでもない。教員自身が、大学運営の主体になるためには、教員自身が、いかにして大学経営を支えることができるかを考えなければならない。

 現在の明治大学は、借金はないが、また同時に新しいことを行い研究環境、教育環境を大きく飛躍させていくための資金もない。大学校地も、他大学に比較して極めて狭い。しかし、学生と教員のことを考えれば、さらなる教育、研究の充実が求められている。法人と教学を分けて考えるやり方では、もうやっていけないだろう。今こそ、教員自身が大学経営にかかわり、自らの責任と意志によって、大学を運営していく時である。これまでの明治大学の法人は、まったく基金を集めてくる能力がなかった。ほとんどが授業料収入である。これからもこの状態が劇的に変化するとは思えない。

 新理事会は、個々の理事がアイデアを持って営業マンとなり、外部の資金を集めてくる覚悟でいる。しかし、同時に、自治の原則を確立して、教員自身の手に大学を取り戻すためには、教員自身が、大学運営の中心であるという覚悟を持って、将来の明治大学の姿を準備する財政システムを作り出す必要がある。そのとき、初めて明治大学の自治の原則は貫かれることになるだろう。

(法学部教授)



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