第600号(2008年10月1日発行)
本棚
「世界俳句2008 ─第四号」
夏石番矢(乾昌幸)・世界俳句協会 編(七月堂、1600円) |
|
|
詩歌の翻訳は難しい。俳句を英訳すること、ほかの言語で俳句を書き日本語に訳すこと、いずれも不可能を可能にするような離れ業だろう。この困難に挑戦しつづける世界俳句協会編「世界俳句」の第四号を読んだ。
前から始まる日本語の頁と、後ろから始まる各言語の頁が、真ん中で出会う。途端にどちらが前でも後ろでもなくなる。言語境界を越え、リズムが体現する年月を越え、各文化の「内」にある約束事を越えてゆく翻訳の蛮勇。試みつづけることの力を感じた。
横道にそれ/死は苦しむ/花弁をなくした花のように(デヤン・ボゴイェヴィッチ、セルビア)
やれそうに思えてくる ポケットに虹(フー、アメリカ・日本)
一点の命へ落下する鷹よ(長澤奏子)
鼠は穴で青い夢見る大草原(夏石番矢)
俳句と短詩の違い、詩の翻訳は何よりまず詩でなくてはといった議論、ラトヴィアやルーマニアの俳句に関する随筆、中国語やスラヴ諸語などによるジュニア俳句のコンテストも掲載。
(中村和恵・法学部准教授、編者は法学部教授)
前のページに戻る
|
|