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明治大学広報
第602号(2008年12月1日発行)
論壇
「大学の価値を高める社会貢献について」
理事 村田 嘉一
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 わが国の最大の財産は「春夏秋冬の四季の変化である」といわれている。しかしながら日本の農業や林業はこの恵まれた環境の中にあっても、もう10年以上衰退が続き、その結果地方が疲弊し大きな社会問題となっている。

 食糧自給率は4割、木材自給率は2割と極めて低い。農地の約13%の約60万ヘクタールが耕作放棄地や不作付地で、その面積は東京都と埼玉県を合わせた面積に匹敵する。これは、農業就業者の6割が65歳以上の高齢者で、明日の農業の担い手が育っていないためだ。

 政府の農業政策は遅まきながら歴史的大転換を図ろうとしている。すなわち従来の保護農政から規模の大きい強い農家を育成する農政への転換だ。その成果には大いに期待するが、実現は容易でない。日本農業の再生には政府の農政だけに頼らない農業自体の自立化が必要だ。そのためには株式会社の農業への新規参入や担い手の育成など民の活用が不可欠だ。

 林業についていえば、日本は国土の66%が森林という世界有数の森林大国である。年間の木材蓄積量は8千万立方メートルで自給率を9割まで改善できるが、この豊富な森林資源が有効に活用されていない。

 これは多くの規制があって国産材の安定供給ができないためだ。森林は木材供給機能だけでなく、水源涵養・国土保全・地球温暖化防止など多面的機能を持つ貴重な社会資本である。林業の衰退から森林の荒廃が進み、このまま放置すれば森林の機能は大きく損なわれる。

 農・林業を自立可能な産業として再生し、地方の活性化を図ることは、今や国家的課題だ。

 明治大学は、農学部を擁する数少ない大学であり、農・林業再生にどう取り組むべきか真剣に考える立場にある。

 担い手が育たないのは、農・林業の生産性・収益性が低く、若者たちに魅力ある産業と考えられていないためだ。しかし世界の人口は中国やインドを中心に増加を続けており将来食糧危機の到来は必至であるから、やり方次第で日本の農業は魅力ある産業に成長すると思う。

 例えば野菜や果物・花卉などのハウス栽培や畜産など農地は狭くても付加価値の高い集約農業は有望だ。また、東北大学農学部が、水田利用法として開発し、推奨しているマコモタケは収益性が高い。

 本学の農学部のノウハウを活用し、農・林業自立化を目的とした就学期間3〜5年の実験校(高校や専門学校)を開設すれば、教育・研究を通して明日の農・林業の担い手を育成できる。これは、明治大学だからできる大きな社会貢献であり、本学の価値を飛躍的に高めることができる。

 明治政府は1876年北海道開拓のため、札幌農学校を開校し、有為な人材を輩出したが、本プロジェクトは、その21世紀版である。



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