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明治大学広報
第603号(2009年1月1日発行)
本棚
「石川啄木」─その散文と思想
池田 功 著
(世界思想社、5800円)
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 本書は、著者の『石川啄木  国際性への視座』(おうふう)につぐ啄木研究に関する単著二冊目であり、第一章「散文の世界」と第二章「思想の世界」によって構成されている。

 第一章では、啄木の小説の細部を読み、例えば同世代作家が看過した赤痢という病をいかに啄木がビビッドに描いたかの指摘、また啄木の神経衰弱に対する認識のありようの考察などに新鮮なものが見られる。さらに啄木のローマ字日記、書簡などが意識的に作品化を意図したものであることを説いている。各種関連資料の調査は見事で読み手に多くの有益な情報を提供している。

 第二章では、社会進化論が啄木に与えた影響を主軸にして、「生存競争」から「相互扶助」の考えに啄木が共鳴し、やがて無政府主義に近づいてゆく過程を綿密に分析している。

 今日啄木に関する研究書の類はおびただしいが、本書は、総じて個々のテーマに関連する他作家作品、他分野資料への目配りがよく効いていて、啄木の新しい側面が浮き彫りにされている印象の強い好著となっている。

宮越勉・文学部教授(著者は政治経済学部教授)



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