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明治大学広報
第604号(2009年2月1日発行)
論壇
「質が問われる時代」
理事 中村 義幸
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 景気には好不況の波があるが、遠望した八ヶ岳の稜線程度ならまだしも、麓から仰いだマッターホルンのようではたまらない。

 この度の不況は、百年に一度の「大恐慌」の再来とも言われるが、資本主義は、かつて体制側は「戦争」で問題を解消したことにし、反体制側は「革命」でこれに答えようとした。それにしても、わずか一世代前には「新自由主義」を提唱して「規制緩和」を強要し、国家公共的規制から逃れようと図って野放図なマネーゲームを展開し、その結果破綻した途端に当の国家の公的資金にすがりつくなど、資本による国家のご都合主義的利用は目に余る。それとも、そもそもこれが理論的帰結というべきか。いずれにせよ人類は、全ての人々の幸福のために資本や国家を自家薬籠中の物として適切に制御する術をいまだ見出しえていないことだけは確かである。

 のっけから風雨荒れ狂う大状況に飛び込んだが、明大内に目を転ずると、最近は一部の指数を見ると、比較的順調に推移しているようである。

 例えば、「学びたい学部・学科があるかどうかの高校生アンケート」で本学が第1位にランクされた結果はうれしい驚きであった。

 2004年の情報コミュニケーション学部設置まで半世紀間新学部の設置がなかったのであるから、それ以前であればおそらく六大学クラス最下位間違いなしであったろう。今では、伝統学部の中にも「生命科学」「新領域創造」「地域行政」「環境」「公共」「会計」などを冠した新学科があり、さらに「国際系」の新学部もあるなど、本学はようやくにしてかつての先進性を取り戻しつつある。

 受験志願者数も、2005年度あたりまでは18歳人口の自然の増減に沿った動きを示していたが、こうした人気の反映であろうか2006年度以降は自然減に抗して増勢に転じ、ここ2年程は全国第二位の志願者数を記録している。急激な増加は入試制度改革の成果でもあるが、底堅い人気は数年前に種をまいた新学部・新学科が実を結び開花し始めた証であろう。

 スポーツでも数々あるが、箱根駅伝のシード権獲得だけに触れておこう。ここに至るまでには手弁当の部長を中心とした関係者の涙ぐましい努力の積み重ねがあったことを筆者は知っている。テレビ画面で華々しく襷がつながった裏には「駅伝明治の復活」に懸けた地道な関係者の長年に渡る努力の襷渡しがあったのである。

 さて、本学の研究や教育に関する上記のような成果の一端は、数量的には将来に明るい展望を持つことができそうではある。

 しかし、冒頭の大状況的な人類の課題は依然として最重要な課題であり続けており、人類共通の普遍的価値である「権利自由」「独立自治」を校是として長年にわたり研究と教育を展開してきた本学は、いよいよその個性を思う存分発揮し、数量に加えてその質を広く世に問い、積極的に国家社会に貢献できる時代がやってきたといえよう。

 (情報コミュニケーション学部教授)



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