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明治大学広報
第605号(2009年3月1日発行)
本棚
「日本書紀【歌】全注釈」
大久間喜一郎、居駒永幸 編
(笠間書院、1万2000円)
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 本書は元経営学教授とその一門の研究者によって行われた、『日本書紀』所載のすべての「歌」の注釈書である。思えば『日本書記』の「歌謡」(一般的呼称)の全部を考察、分析したものは昭和51年に土橋寛によって書かれた『古代歌謡全評釈・日本書紀編』以来のことである。

 この本のタイトルが示すように、これまでは古事記や日本書紀記載の韻文は「歌謡」と呼ぶのが通例で、これを疑う者はいなかった。すなわち、それを一つの独立したもの、あるいはその作品が別の所で生成され、本文の中に付会されたと見るのが一般的であった。歌謡という視点から、その作品が立ち上がってきた現場を民謡的世界やテキストの外に求めることが多かった。

 本書はこうした歌謡論を否定はしないが、むしろ書紀の本文と韻文の「歌」がどのような関係にあるのかに注目し、そこに編纂者の文学生成の営みを見ようとするものになっている。つまり歌謡ではなく、歌の視点に立つことで、新しい読みの可能性を開いた画期的な注釈書だといってよい。

 永藤靖・文学部教授 (編者は順に元経営学部教授、経営学部教授)


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