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明治大学広報
第607号(2009年5月1日発行)
本棚
「きみに語る」
─近代日本の作家と作品─
吉田悦志 著(DTP出版、1500円)
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 本書は、近代日本文学史を飾った作家と作品を通して「人間」を学ぶことを目指した書。作家は、どんな価値観を持ち、どんな行動をしたのか。

 たとえば、川端康成は、愛の世界を描きながら本当の愛の姿を描こうとはしなかった。それは、天涯孤独になってしまった少年時代の体験や青春時代の失恋経験によって培われた人間観の投射である。「自殺」は、奪われ続けた川端が、唯一自分で奪うことができた「復讐戦」だったのでは、と示唆する。

 夏目漱石から太宰治に至る10人の作家を俎上に載せ、彼らの生涯の光と影を追究している。読み終わると、「生きる」とはどういうことなのかがずしりと胸に残る。そのためのサジェストも随所に提示されている。「マイナスのカードをプラスに転ずる努力をしてほしい」などと。

 「人間」を学ぶ視点が説得力を持つためには、著者自身がまっとうな神経を持つヒューマニストである必要がある。著者は、それを見事に体現した人物。文学を通して、「生きる」ことを学びたい方に、一読をお勧めしたい。

山口仲美・国際日本学部教授(著者は国際日本学部教授)



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