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明治大学広報
第611号(2009年9月1日発行)
本棚
「上司小剣論─人と作品」
吉田悦志 著(翰林書房、3200円)
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 吉田悦志氏は、話術の天才といわれ、その授業やリバティアカデミー講座で人気を博している。が、本書は、そういう吉田氏とは別の面貌を見せてくれる。吉田氏30年以上の研鑚の一成果であり、本格的な研究書となっているのだ。

 上司小剣という今日では日本近代文学史のうえで埋もれた感のある作家の人と作品を熱っぽく論じ、その発掘、復権を見事に果たしている。

 上司は、「かみづかさ」と読むのが正しいとし、その年譜的事項の検証から始める。小剣文学の原点ともいうべく摂津多田神社時代の考察、やがて明治社会主義への接近と離脱の時代などに及び、それらに関連した数々の作品を丁寧に論じている。その人と作品に関する同時代評を博捜、引用し検討を加えているところに特色がある。

 吉田氏は、かの高名な文芸評論家平野謙(1951年〜78年本学文学部で教鞭を執った)のお弟子さんである。本書を通読して所々に平野謙の文章の気息を感じた。平野謙ファンはいまだに多いと思うが、ぜひ一読を勧めたい書である。

 宮越勉・文学部教授(著者は国際日本学部教授)



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