本書は、気鋭の経営史家による本格的な実証研究の成果である。とはいえ、各章の解説は平易で、一般読者への配慮も十分になされている。本書のテーマである「国際競争力」自体、一見明確なようで、じつは漠然とした言葉であるが、本書は国際経営史の視点より、その源泉を実証的に追究する。多彩な事例が駆使され、決して読者を飽きさせない。

　英米機関車メーカーの競争、ボンベイ航路での日本郵船の奮闘、日米タバコ産業の角逐、アンモニア合成工業での日独対決、戦前戦後の日米自動車摩擦、フランス自動車部品工業の世界展開、アメリカ市場での日英陶磁器の摩擦、日本フルート製造業の世界戦略、日本トイレタリー市場での国際競争戦略、日本石油化学工業のアメリカでの事業展開、イギリス化学工業における巨大企業の終焉。本書のケーススタディは以上１１に及ぶ。

　「国際競争力」はきわめて今日的なテーマであるが（大学にとっても）、その源泉はどこに求められるべきか。本書の主張は大変示唆に富んでいる。一読をお薦めしたい。

　横井勝彦・商学部教授（編者は経営学部教授）



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