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明治大学広報
第618号(2010年4月1日発行)
本棚
「生きて、語り伝える」
G・ガルシア=マルケス 著、旦 敬介 訳(新潮社、3600円)
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 1927年生まれのガルシア=マルケスが8歳まで暮らし、『百年の孤独』の舞台マコンドのモデルとなる地アラカタカ。ガルシア=マルケスの回想録の第一部にあたる本書は、22歳の彼が母親とこのアラカタカを再訪し、目にするものの一つひとつに、「書かなければ死んでしまう」という焦燥を感じた旅の話で幕を開ける。この、稀代の物語作家の記憶の宝箱には、豊かな友情のなかで彼が作家になることを決定づけたさまざまな要因と、彼ののちの作品を形成することになるイメージや逸話があふれている。ガルシア=マルケスの筆致と翻訳の力によって読者は、ひとりの作家の誕生と彼の作品世界の萌芽を目の当たりにするわけだ。わくわくせずにはいられない。

 一族の物語に及びつつ、幼少期から、28歳で新聞社の特派員としてスイスにたどり着くまで、彼がなにものでもなかっただけに伝説的、神話的な時期を描く本書はまた、『百年の孤独』完成までが語られるという未完の次作を読みたいという欲求を世界中の読者と共有する結果を生む、罪な一冊でもある。

 内田兆史・政治経済学部講師(訳者は国際日本学部教授)



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