第619号(2010年5月1日発行)
本棚
「オスカー・ワイルドに学ぶ 人生の教訓」
グレース宮田(宮田理奈子) 著 (サンマーク出版、1500円) |
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オスカー・ワイルドは警句の人である。会話ではもちろんのこと、作品には、逆説的警句が散りばめられている。この警句を拾い集めて、人生を生き抜く指南書としたのが本書である。
ワイルドを人生の指南書とすること自体が、逆説的である。ワイルド自身は、前半生は一世を風靡し小説家・劇作家として華々しい成功をおさめたが、同性愛問題から、スキャンダルや裁判、有罪判決と後半生は苦難に充ちたものであったのだ。
が、この本の著者グレース宮田氏は、人と合わせなくて良い、無理して溶け込まなくて良い、という人生観をワイルドから抽出しているのである。最近の言葉で言えば、「空気を読まなくて」良いと考える確信犯となるためのガイドでもある。
本書は、ワイルドの警句を日本語と原文で引いてあるので、英語を使うパーティなどで気の利いたセリフを言うための絶好の手引き書ともなるだろう。「人は、面白いか、退屈かの、どちらかなのだ」とすれば、退屈でない会話を実践するには、お手本があるに越したことはない。
辻昌宏・経営学部教授(著者は経営学部講師)
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