明治大学
English Korea Chinese Chinese 交通アクセス お問い合わせ サイトマップ
明治大学TOP > 明治大学広報 > 第620号(2010年6月1日発行)
明治大学広報
第620号(2010年6月1日発行)
論壇
法科大学院のこれから
法科大学院長 河内 隆史
明治大学広報TOPへ
 今年も5月12日から16日まで、間に1日の休みを入れて、4日間にわたって司法試験が実施され、9月9日には合格発表が行われる。21世紀社会を担う法曹としての高度専門職業人の養成教育を行う機関として、司法制度改革の中核に位置付けられた法科大学院制度がスタートして7年目を迎えたが、その後の法科大学院を取り巻く環境は、当初想定されていたのとは異なり、かなり厳しいものがある。その最大の原因は新司法試験の合格率の低さである。法科大学院制度が発足した当初は、修了生の7割、8割が合格するかのように喧伝されていたが、実際には不合格者が7割、8割というまったく逆の状況である。2008年度の合格者が2065名だったのに対して、2009年度は2043名とかえって減少しており、本年度あたりで3000人合格にするという閣議決定の実現はほぼ期待できない状況にある。それどころか先頃、新たに日弁連会長に選出された宇都宮健二氏は、新司法試験合格者を1500人に減らすべきだと主張し、それを多くの弁護士が支持したわけである。新司法試験に合格し、司法修習を無事に修了しても、就職状況が厳しいことも報道されている。法科大学院出身者はレベルが低いという声も法曹界にある。

 しかし、長く500人程度だった司法試験合格者が、20世紀末には1000人となり、現在では新旧併せて2000人を超える訳であるから、その全員がかつての合格者と同じレベルということはあり得ない。司法修習期間も2年だったのが1年に短縮され、教育レベルは当然低下せざるを得ない。司法修習での教育の一部を法科大学院に担わせるという制度設計だが、試験を間近に控えた者が合格後に必要になることの勉強に身が入るだろうか。就職状況にしても、時期によって大きく統計の結果が変わるのは当たり前で、最終的にはかなりの率で内定するようである。そもそも全国的に弁護士が過剰だというのは本当なのか。弁護士の知り合いがいなくて、相談したくても敷居が高いという話はよく聞く。本学法科大学院の修了生で、定期的にセスナで離島に行って法律相談に乗っている人がおり、大いに喜ばれているようである。若い法曹が積極的に市民と交流し、また新たな弁護士業務を工夫開発していけば、敷居の高さを感じていた一般人にとっても、法曹の裾野の広がりは十分意味をもつ。法曹と一般社会との関わりを学生にも一般人にも伝えるのは法科大学院の役割であろう。



前のページに戻る

ページ先頭へ

© Meiji University,All rights reserved.