第620号(2010年6月1日発行)
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最近の人気作家を見ると、一つの傾向に気付く。いずれも中高生の好きな作品がベストセラーの上位にランキングされている。重松清、森絵都はいうまでもなく、海堂尊、あさのあつこも高校生にファンが多い。絶大の人気を誇る東野圭吾は学園小説でデビューし、石田衣良はティーンエージャー向けの小説で名を成した。
この現象は大学生が本を読まなくなったことと関係している。じっさい、作家たちは高校生のことを意識するが、大学生の反応はまったく眼中にない。
振り返れば、明治から昭和中期にいたるまで、大学生の読書趣味は出版界を大きく左右していた。純文学も大衆小説も大学生のあいだで話題にならない小説はヒットしないし、人気作家は必ずと言っていいほど大学生に支持されていた。
大学生が本を読まないのはやはり好ましいことではないだろう。万巻の書を読まずとも、人間形成の大事な時期だから、勉強以外の分野でも、せめて五十冊の本を読んでほしい。これは無理な注文ではない。一カ月に一冊読めば、容易に到達できる目標である。
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