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明治大学広報
第622号(2010年8月1日発行)
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名画で読み解くブルボン王朝12の物語」
中野京子 著 (光文社新書、980円)
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 『ハプスブルク家12の物語』の姉妹編登場! 今度はブルボン王朝250年の興亡をめぐり、冒険小説さながらの楽しさで、歴史=物語の面白さを堪能させてくれる。政略結婚を要とした国際関係、思いもよらぬ展開、謎の死・・・。

 思えばここ半世紀ほど、西欧歴史学の主流では、心性や経済構造の変遷等々、偶発事にとらわれない大きな流れが対象にされてきた。本書は、そうした潮流の水面に浮かび上がる個々人の顔の魅惑、きらきら輝く波のような偶然性の魅惑を愉しませてくれるだろう。

 肖像画の扱いも絶妙だ。たとえば、ルーベンス筆アンリ4世妃マリーの肖像画。マリーの生涯を描いたこの巨大な連作は、史実からすると「事実の歪曲」「過剰な美化」であると、指摘されてきた。しかし本書でマリーの人生を辿りつつ観るとき、この「バロックの傑作」は、美化といった生やさしいものではなく、実の息子との政争に敗れたマリーの恐ろしいほどの妄執として迫ってくるのだ。

 これも、もう一枚の「怖い絵」なのである。

 谷川かおる・理工学部兼任講師(著者は理工学部兼任講師)



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