第626号(2010年12月1日発行) 
      
            		
          
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                「アジア周縁から見たアメリカ1850〜1950年」
             
             
林義勝、ゲイル・K・サトウ、寺内威太郎、高田幸男 著 明治大学人文科学研究所叢書(彩流社、4000円) | 
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 第二次世界大戦後、われわれは戦火を交えたアメリカがどのような国であったのか、つぶさに検証してきた。しかしながら、こうした視点は、往々にして日米関係の枠内で、米国主流派の検討や、その対戦国としての日本のみを重視しがちだ。 
 
 本書は、こうした二国間関係に留まることなく、第二次大戦に至るまでの1世紀に行われたアメリカとその周縁としてのアジア太平洋世界の相互関係を考察する。 
 
 4人の論者が論じるのは、アメリカの地理的外部である太平洋地域にしろ、米国内におけるアジア系移民にしろ、米国主流派にとっては、異質な他者からの視点である。
   
いずれの論考も、アメリカに対する周縁的他者からの眼差しを明確に捉え、「アメリカ」の問い直しを試みる。
  
 
「アメリカと他」という対立構造に拘泥するのではなく、アジア太平洋的空間から、地理的・国家的枠組みを超えてアメリカを描き出すことはまた、日米関係の見方の再検討をも促す。より広域的な視点からアメリカを見つめ直す契機となる労作である。 
 
金澤宏明・文学部兼任講師(著者は全て文学部教授) 
       
       
       
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