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明治大学広報
第627号(2011年1月1日発行)
2011新春座談会 創立130周年
21世紀の明治大学グランドデザイン
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 急速にグローバリゼーションが進む21世紀、今、世界は環境問題や金融危機、食料・エネルギー問題など、国境を越えた課題に直面している。世界を取り巻く環境が変化し、新たな価値観が求められる中、日本が果たすべき役割も変化してきている。創立130周年を迎える本学は、「世界へ─『個』を強め、世界をつなぎ、未来へ─」をコンセプトに掲げ、建学の精神「権利自由」「独立自治」を堅持しつつ、「個を強くする大学」としてさらなる国際化推進と研究力強化を加速している。「世界に開かれた大学、グローバル・コモン」の確立に向けた展開を、長堀守弘理事長、納谷廣美学長、向殿政男校友会長に語ってもらった。



はじめに ─130周年を迎え─

 米山(司会)あけましておめでとうございます。21世紀に入り世界は新しいスタンダード、秩序をつくらなければいけない時代に入っています。そうした中にあって、日本の大学を取り巻く環境は厳しく、18歳人口の減少はまだまだ続く一方で、世界の人口は毎年約8000万人ずつ増えて70億人近くになっています。グローバル化が進む世界で、トップユニバーシティーを目指す明治大学の取り組みをお聞かせください。

 長堀 創立130周年を迎える明治大学は、これまでに約50万人の卒業生を輩出してきました。この間、時代に即応した改革や、未来を見据えた挑戦を繰り返すことで、教育・研究機関として確固たる地位を築いてきました。

 近年では、文部科学省の「グローバルCOEプログラム」(2008年度)、「国際化拠点整備事業(グローバル30)」(2009年度)に相次いで採択されるなど、本学の特色ある取り組みが高い評価を受けています。これらのことは、全関係者の誇りとするところですが、到達点ではなく、新たな出発点としてとらえ、さらにどのような飛躍にするのか。

 創立130周年は、次の創立150周年へのスタートの年だと位置づけています。

 納谷 明治大学は今、大きな質的転換を教育・研究の中で行おうとしています。明治らしい教育・研究とは何か。創立者の3人の先生が新しい国造りについて言われた、「国民が立派に育つことで国を強くし、それが日本の近代化に資する」との考えに繋がってくるのではないかと思います。創立130周年の本年は、もう一度過去をしっかり確認しながら、将来を見つめた明確なグランドデザインをつくる記念すべき年です。

 現在の学生が20年後、社会や世界のさまざまなポジションで、どういう役割を担うか。われわれが標榜している「個」を強くするとは、他者との協働を通して自らの役割を自覚し、社会や組織との協調の中で輝ける自己すなわち「個」を形成し、そこで活躍できるような人材を育てることを意味しています。

 向殿 明治大学の校友会の目的は、大学を賛助・支援し、これを通して校友同士の親睦を図ることにあります。そこに向かって、「明治は一つ」をスローガンに、オール明治、全員参加の校友会を目指しています。

 明治大学とは不思議な大学です。卒業して年を重ねるほど明治が好きになる、明治と聞いただけで熱狂的に応援したくなる、自分の息子や娘を明治に入学させたくなる、だんだん明治大学出身を誇りに思うようになる、明治大学出身でない父母でさえ父母会活動を通じて明治大学のファンになっていく。それは、本学の多様な個性を認める自由さと、どんな分野でも活躍している人がいるという分野的な幅広さと、風雪に耐えてきた大学の長い歴史と、後輩には文句なく優しく面倒をみるという温かい心と、どんなことにもへこたれない「前へ」精神と、愚直なまでのひたむきさ、「明治魂」によるものです。その根源は「権利自由」「独立自治」という建学の精神にあるに違いありません。

 時代は変わります。大学も時代に対応しながら変わっていくべきです。しかし、精神は変わってはいけません。世界がグローバル化するという歴史的な転換期に、日本のビジョンを示さなければいけない。その中で明治大学は、日本の中で、世界の中で、どういう役割を果たすのかということを明確にする契機として130周年に期待をしています。

国際連携の現状と展望

 米山 「世界に開かれた大学」を目指して、国際日本学部の開設や国際学術プロジェクトをはじめ、教育・研究の両面にわたり数々の環境整備が進められていますが、その現状と展望をご紹介ください。

 納谷 文部科学省の国際化拠点整備事業(グローバル30)で13大学の1つに明治が採択されたことが、本学の国際連携の取り組みを刷新するきっかけになりました。プロジェクト3年目に入る今年は、この取り組みを学内外にしっかり定着させます。このプロジェクト自体は5年間ですが、2020年には4000人の留学生を受け入れるとともに、1500人の本学学生を海外の教育機関に送り出す計画です。そのための教育・研究環境の整備を行い、創立150周年にむけ加速度的に国際化を進展させたいと考えています。

 今の世界は、環境や食料問題などをみんなで考えなければ、この地球を維持できない状況下にあります。そうした観点で、フラット化していく世界でそれぞれの国なり地域がどのように役割を果たしていくかという自覚を持ち合わなければならない。そのためには、世界中から留学生や研究者がたくさん来る、こちらからも関心のある地域・国にどんどん行く。そのような大学にしたい。そして、本学が創立150周年を迎えるころには、新しい役割を担った大学として世界でトップに位置づけられ、積極的に政策提言できる大学になっていることを希求しています。広い視野のもと、いろいろな考えを知り、そして解決していく知恵と志を持った学生・研究者が集まり、社会に出ていく。そうした大学になればいいと思い、今、一生懸命やっているところです。

 長堀 現在、大学に問われているのは、社会や個々の学生のニーズに適応した高度な教育をいかに提供していくかということです。また、国際化の時代と言われる中で、真の国際人とは、世界中の人々と対等なビジネスパートナーとなる資質と実行力を有し、社会に貢献できる人材であると考えています。その観点からも、国際競争力を持った「教育力」を備えることが重要課題であり、学内の国際環境整備を目指した本学の「グローバルコモン・プログラム」がグローバル30に採択された意味は非常に大きいと感じています。これを機会に世界各国・各界のエキスパートを集めた国際総合研究所(仮称)をつくり、明治大学から世界に向けて政策提言を発信していきたいと考えています。

 創立130周年記念事業としては、「アジア5大学長会議」を計画しています。今から約100年前、創立30周年には、西園寺公望内閣総理大臣をはじめ、文部大臣、他5大臣、東京府知事、東京市長、渋沢栄一男爵等、日本を代表する方々が本学にご来臨されました。また、ペンシルバニア大学、コロンビア大学、そしてシカゴ大学の3大学と留学生協約を結びました。100年前に他大学に先駆けて国際化政策を掲げてきた本学の姿を鑑み、現代における新たな形として実現したいと考えております。

 向殿 校友会も「世界へ」展開します。調べてみると、明治大学出身の駐在員が世界中におられるんです。明治が好きで、明治の情報がほしいという人が、世界中に散らばっているということがわかってきました。現在、外国の校友会支部は韓国と台湾の2つだけですが、何カ国か回ってみると、やはり集う会があって、明治を支援したいというグループができ上がっている。紫紺会という少し柔らかい形でもいいから、たくさん作って、世界に展開していきたいと思います。そこから留学生を紹介してもらったり、逆にこちら側からそちらへ行ったときは、そこの紫紺会に面倒をみてもらう。そういう関係で明治をサポートするという組織をつくりたいと思い、校友会としては初めてですけれども世界展開を始めました。

 昨年、台湾と韓国に行ってみてわかったことは、戦前・戦後には留学生がたくさん来ていたこと、その人たちが非常に偉くなって、台湾・韓国では明治のOBというのはそれなりの名前を得ていること。ところが、最近だんだん留学生が減ってきているということに、両国も心配をされていました。今、明治が「世界へ」ということで留学生を増やそうということになれば、東南アジア中心で結構ですけれども、留学生にたくさん入ってもらって、その人たちが中心となり、また校友会が世界中に広がっていく。紫紺会は駐在員が中心かもしれませんけれども、だんだん留学生が入ってきて、留学生と駐在員が一緒になって、その国の紫紺会を、校友会をつくっていただきたい。そうしますと明治大学のサポーターが世界中にいるということになりますので、校友会としては、今の大学の方針に従って、海外にいる人をまとめて「明治はひとつ」の傘下に入ってもらおうという動きをしています。今までも大学が国際交流協定の提携などで海外を訪れると、たいてい校友(紫紺会)がサポートしてくれています。大学が思っているよりも校友は「明治魂」で世界中に飛び出しています。校友会としても何かやれるということは大変嬉しいことなのです。 納谷 飛び出す力というのは明治の力ですね。最近ありがたいことに、こういう国のこういう大学や機関もあるから、提携したらどうかという提案が多くなってきました。

 米山 明治大学が国際展開するためには、やはり校友の力は欠かせないですね。

トップユニバーシティを目指して 
─研究体制の整備について─


 米山 グローバル化、国際化を進める本学は、世界のトップユニバーシティを目指し、研究の高度化、深化にも果敢にチャレンジしています。その取り組みを教えてください。

 納谷 大学が強くなるということは、教育がある程度評価されなければなりません。それを支えるのは研究です。しかもその研究は、それが世界的な視野とか、社会との連携性をもったものであるかということを常に自覚して計画を立てて推進していくことが必要です。これからの研究は「チームづくり」で行うことになりますから、ネットワークをうまく構築して、研究・知財戦略機構のもと新しい研究を生み出すことが重要な時代に入っています。既にグローバルCOEプログラムに採択された、「現象数理学の形成と発展」を1つのモデルにして、学内では、理系、人文系、社会科学系の各分野からどんどん大型研究の申請が出てくるという雰囲気ができました。そういう中で、理事長からもお話がありましたけれども、政策提言型の国際戦略的総合研究所のようなものが創成できると、もう一段レベルが上がるのではないかと思っています。

 長堀 教育と研究はクルマの両輪のように密接不可分な関係にあり、双方が融合・触発することで、はじめて大学としての総合力が高められていきます。そのためには、教育・研究施設の充実も重要な課題です。現在、創立130周年記念事業として、中野キャンパス、自治体と連携した黒川農場(農学部・川崎市)の新設、さらには、駿河台キャンパス(新棟)、和泉キャンパス(図書館)、生田キャンパス(研究実験棟)、スポーツパーク(運動施設)などの開発および計画が進められており、これらの施設を駆使した教育・研究の深化・向上が期待されています。

 向殿 研究成果が大学として発信されるようになりました。校友としては、「母校はやっているんだな」と母校愛に燃えますし、まとまります。研究というのは世界に通用しますから、それが大学にとってある意味では命だと思います。経営者の校友もたくさんいますので、校友全体が情報を共有して、明治に今どういうプロジェクトがあって、それを見て協力できますよとか、そういう情報交換の場として『紫紺NET』というネットワークを計画しています。ホームページを立ち上げるところから徐々に動き出していますが、そのインターネット空間を経由して「明治はひとつ」というもう1つの世界ができると、それは研究体制に相当役に立つと思います。

さらなる飛躍を目指して

 米山 20年後の創立150周年に向けてさらなる飛躍を目指すことになりますが、抱負をお聞かせください。

 長堀 13世紀の初頭、アジアから東ヨーロッパへと疾走したモンゴル帝国の初代皇帝チンギス・ハーンは、「人間(じんかん)に上下なし、地上に境界なし」という言葉を残しています。本学においても、これまで以上に国際社会への発信力を高めながら世界のトップユニバーシティを目指すとともに、国境の枠を飛び越え、グローバル・ビジネスや国際貢献の分野で活躍できる真の国際人の育成に取り組んでいきたいと考えています。新たな歴史を刻む「明治大学元年」にあたり、さらなる改革と「大学力」の向上に努めていく覚悟です。

 納谷 強い意志を持ち、何ごとにも立ち向かうのが「明治魂」です。時代の変化や社会の要請を先取りし、未来に羽ばたく優れた人材を育成するため、そして新しい時代にふさわしい価値を見出し、世界に向けて発信するため、歴史と伝統に安住することなく「変化する勇気」を持ち続けていくことこそが、明治大学の進むべき道です。

 国の内外を問わず、複雑・多様化した課題が山積している現在、国際社会の中で輝き、その未来に貢献できる若者を社会に送り出すことは、130年間にわたり、常に時代が求める「知」と「人材」を創出してきた本学の大きな使命でもあるのです。創立150周年のときには、本学が新しい大学、新しい私学、新しい人材の提供ができる大学になっていることを願っています。

 向殿 「個」を互いに認め合いながら「和」を保つ。違ったものを認め合うということはものすごく大事です。グローバル化の中で明治が出ていく一番大事なキーポイントになります。そのためには、日本を、地方を大事にし、各国を大事にしながら、全体を「和」で包むことが大切です。

 校友会としては、各地域の校友会を活発化して、地域と連携しながら明治をサポートする。世界中に紫紺会をつくりながら、各地域で貢献をしてもらい、地域で尊敬される校友会になる。それが大学をサポートすることになるということを、次の目標にしたいと思っています。

 米山 創立130周年の新春にあたり、明治大学の将来についてお話をしていただきました。明治大学が世界から注目される素晴らしい大学へさらなる発展を続けるものと期待されます。今日はありがとうございました。(了)


■出席者

理事長 長堀 守弘
(ながほり・もりひろ)
1933年東京都生まれ。1959年明治大学文学部卒業。株式会社ナガホリ創設者。数多くの公益法人の会長・理事長・役員を歴任。
1992年4月より明治大学評議員。1996年4月より2004年3月まで同理事、2004年4月より2008年2月まで同評議員会議長。2008年4月より現職。

学長  納谷 廣美
(なや・ひろみ)
1939年北海道旭川生まれ。1962年明治大学法学部卒業。1966年東京大学大学院法学政治学研究科修了(法学修士)。1968年より弁護士。同年、明治大学法学部専任助手。同講師、同助教授を経て、1980年同教授。 教務部長、法学部長などを歴任し、2004年4月より現職。学外では大学基準協会会長、日本私立大学連盟副会長などを務める。 専門分野は民事訴訟法。

校友会長  向殿 政男
(むかいどの・まさお)
1942年東京都生まれ。1965年明治大学工学部卒業、1970年同大学院博士課程修了。同年明治大学工学部(現理工学部)専任講師、1978年同教授。
情報科学センター所長、理工学部長等歴任。2009年7月明治大学校友会長就任。工学博士。
主要担当科目は「ファジイ理論」。 学外では、私立大学情報教育協会会長などを努める。

『明治大学広報』編集委員長・学務担当常勤理事
米山 勝美

(よねやま・かつよし)
1942年山梨県生まれ。1966年東京農工大学農学部卒業、1968年東京大学大学院修士課程修了。1990年明治大学農学部助教授、1995年同教授。農学部長、評議員等歴任。2008年4月より現職。農学博士。主要担当科目は「植物病理学」。
【主な著書】
『植物病原アトラス』(ソフトサイエンス社、共編)、『芝生の病害虫と雑草』(全農協、共著)



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長堀守弘理事長


納谷廣美学長


向殿政男校友会長


米山勝美本紙編集委員長
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