第628号(2011年2月1日発行)
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「この前、電車で席を譲られたんだ」
正月明けの一夕、ビールジョッキを片手に、本学のOBで、神保町で出版社を経営されているK氏は、こう話し出された。ウィットの利いた厳しい警句で知られるK氏のことであるから、年寄りあつかいされたことに対するお腹立ちが炸裂するかと思いきや、おもむろに、懐から一片の紙切れを取り出された。それには、本学某学部の男子学生の名前が書かれていた。
「何ですか、これは。この学生がどうかしたのですか」「どこの大学の何という名前の学生か知りたかったから、これに書かせたんだ」「名前を書けと言われて、その学生は驚いたでしょう。社長が威圧したから、怖がって書いたのではありませんか」「イヤ、彼は彼女と一緒だったんだがね。堂々としていて実に爽やかだった。明治の学生にも良い子がいるね」
ご機嫌のK氏を囲んでの、出版祝いを兼ねた新年会のアルコールは、いつもより美味しかった。
建学の精神に裏打ちされた、凛として優しい「明治らしい」風が、教職員・学生、そしてOBの隅々にまで浸透する日を夢見ながら。
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