第629号(2011年3月1日発行)
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『ケータイは学生の筆記具』だそうだ。事は「教員がプレゼン用ソフトを用いてパソコンのスライドを次々にスクリーンに映して説明する形式」で起こるらしい。つまり、スライドが次々と変わり書き取りできないので「パシャリ」ということである。そこで「この傾向が増長したら……」と想像した。
便利な『ケータイ』を使った、親切な講義風景。講義が始まるや否や、一斉にシャッターの音。その後、やおら先生が説明を済ませ、クリック。また一斉に「パシャリ」。そのうちに「先に全部映してよ!! 先生邪魔!!」と学生の声。そして「バイバイ!!」。
想えば昔の講義では、先生はチョッキのポッケに両親指を掛け、教壇を往来しつつ自説を開陳する風情であった。学生はその公演もどき講義に見入り、聞き入り、重要な知識をノートに書き留めたものである。ケータイ時代と比べ、不便ではあったが、先生の講義に「感情移入」する事が出来た。
ケータイ時代、「パシャリ」というシャッターの音が、教員と学生の間のシャッターにならないことを祈るのみである。
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