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卒業生の声

卒業生の声(中村さん)

中村 新之介(なかむら しんのすけ)
板橋区立郷土資料館学芸員(2010年大学院博士前期課程修了)



——簡単に自己紹介をお願いします

 今(2017年)から15年前に高校3年生だった中村青年は,日本の歴史を考古学的に勉強したい!と思い立ち,明治大学のオープンキャンパスに参加しました。そこで佐々木憲一先生の講義を受け,講義の最後に長野市の大室古墳群で発掘をしているというお話を聞いたので,その年の夏に発掘現場へお邪魔しました。そうした行動力を買って頂いたのか,自己推薦特別入試で考古学専攻に入学することができました。
 大学在学中は教員志望だったので,中・高の教員免許のほか学芸員や社会教育主事など積極的に資格を取りました。また,国内外を問わず史跡や遺跡を見て回り,地元である杉並区や中近東文化センターが主導していたトルコでは,現地で発掘調査を体験させていただく機会に恵まれました。語学をはじめ,勉強が得意ではなかったのですが,大学院まで進み,大室古墳群を中心に古墳時代の鉄製武器や武具について3年かけて修士論文として提出しました。大学院3年目には,大田区立郷土博物館でお世話になり,大学院へ通いながら埋蔵文化財の保護(区内遺跡の発掘調査とその調整)の仕事に携わり,一般企業への就職活動も進めながら学芸員の採用があった板橋区を受験し,運よく板橋区での採用が決まり現在に至ります。

——現在のお仕事を教えてください

 板橋区に学芸員という専門職で採用され,今年で8年目を迎えました。採用されてから6年間は板橋区教育委員会生涯学習課文化財係という部署で,大田区の時と同じような埋蔵文化財の保護を中心に仕事をしていました。現在は,郷土資料館の中で展示の企画立案や学校の社会科見学への対応など,現場で発見・発掘した史資料を活用することが仕事の中心です。

——なぜ現在のお仕事を選ばれたのでしょうか?

 中学や高校で日本史や世界史の授業が嫌いな人と話をすると,「年号や単語を覚える作業が苦痛で,歴史は地味だ!」と言われてしまうことが多かったように記憶しています。別に自分が歴史を背負っている訳ではありませんが,“歴史って面白い!”と思う瞬間の体験を多くの人と共有できる仕事をしたいと思い,今の仕事に就きました。

——なぜ明治大学の考古学専攻に進学したのでしょうか?

 佐々木先生との出会いが1番大きな切っ掛けだったと思います。入学前後の頃は人と人の争いや戦争について研究したいという気持ちがあり,先のオープンキャンパスでも佐々木先生にどんな本を読めばよいのか質問をしました。即座に松木武彦さんの『人はなぜ戦うのか』(講談社メチエ)という本を勧められました。専門用語の分からない高校生でも読みやすく,考古学でこんなことまで分かるのか!という視野が広がったという意味で非常に刺激を受けた本です。こうした的確なアドヴァイスをもらうことができ,現地でのフィールドワークも豊富な中で考古学の勉強ができるという環境に憧れて明治大学の考古学専攻に入学しました。

——明治大学で考古学を学んで良かった,と感じることは何でしょうか?

 何といっても考古学専攻出身のOBやOGが多いことではないでしょうか。フィールドワークがあることで,学年や世代を超えた繋がりができ,人間関係を大きく広げることが出来ました。大学に在学中も今の仕事をしている時も多くの先輩・同期・後輩のネットワークに助けてもらいながら,研究や仕事を進めていくことができるのは大きな財産です。

——文化財の仕事に就くために,今から始められることってありますか?

 中村は文系でもなく,理系でもなく,体育会系なので積極的に身体を動かしてほしいと思います。発掘現場を受け持つときや資料の運搬など,力仕事を求められる場面が意外と多いほか,代わりの人が豊富にいる訳ではないので,体調を維持していくことも重要です。ただ,中村も体力が必要だから運動を始めたわけではなく,中学・高校生の時に熱心にラグビーに取り組んでいたことが今に活きていると感じています。目標のための努力は必要ですが,目標とは一見,関係のない体験が役立つ場面も多いので,最短ルートを模索するより,自分の通ってきた道が最短ルートだったと思えるよう,目の前にことに全力で取り組むことが重要ではないでしょうか。