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卒業生の声

卒業生の声(高橋さん)

高橋 満(たかはし みつる)
福島県立博物館学芸員(1997年大学院博士前期課程修了)

——簡単に自己紹介をお願いします

 宮城県出身で,学生時代は縄文時代の勉強をしていました。福島県に来て20年となります。はじめは財団で発掘調査に従事し,その後県採用となり,県文化財センター白河館「まほろん」の立ち上げや文化財の保護と指定業務に携わり,今は2度目の博物館勤務となります。

——普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

 学芸業務として資料受入管理や館内ネットワークの保守などをしています。また,考古分野の展示・調査研究・体験学習の対応も行っています。さらに東日本大震災経験を継承するために「震災遺産」の保全にも取り組んでいます。

——現在のお仕事のやりがいは何でしょう?

 考古資料出土品は先史時代の文化や暮らしを示す断片です。想像できないぐらい古い時代の実物を手に取り,つなぎ合わせて調査研究や展示をします。観察すればするほど新しい事実が見えてきて,ダイナミックな地域の歴史や地域間の交流の様子が見えてくることが刺激的であり,魅力があります。

——現在のお仕事で心がけていることを教えてください?

 学芸員として「できること」,「やるべきこと」,「したいこと」,「求められていること」は微妙に異なることが多いのですが,なるだけこれらの重なる部分で専門性を活かして仕事をして,博物館や社会に貢献したいと考えています。

——なぜ明治大学の考古学専攻に進学したのでしょうか?

 歴史全般が好きだったので,歴史の勉強をして教員になろうかと漠然と考えていました。歴史を学べる学部が何処なのかわからず,それが「文学部」と知ったときは驚きました。史学もいろいろある中で,考古学は史料でなく遺跡から歴史を学ぶ学問と知りとても興味を覚えました。進学案内の本に「考古学は明治」とチョコレートのCMみたいなことも書いてあり...,それならば,と(笑)。

——どのような学生生活を過ごされていましたか?

 時間があれば,当時の考古学博物館(現在の明治大学博物館)に行き,ウロウロする。そんな生活を1年生の時からしていました。出土品の整理作業に入れてもらって,先輩方から基本的なことを学びました。大学が長期の休みに入ると,遺跡の発掘調査に行く生活です。

——考古学専攻で思い出に残っていることはありますか?

 やはり発掘調査です。発掘した遺跡の光景は今でも思い出せます。

——明治大学で考古学を学んで良かったと感じることは何でしょうか?

 発掘調査では学部の1年生から4年生,そして院生が加わるチームができます。全国から集まった,育った環境が異なる集団の中で過ごすと,個々の多様な考え方に出会うことができます。一緒に発掘した仲間に加え,年齢がだいぶ上の先輩方も全国各地で活躍しているので,地方に出かける際はいろいろと良くしてもらえます。

——文化財の仕事に就くために今から始められることってありますか?

 大小さまざまな博物館に行ってみることだと思います。知らない土地を知るにはその土地の博物館に行くと良いと博物館学の授業で習いましたが,まさにそうだと思います。自分の知らない歴史・文化・地域に接することのできる良い機会です。回数を重ねると博物館を支える学芸員がどんな仕事をしているのか興味が出てくると思います。

——受験生の皆さんにアドヴァイスはありますか?

 NHKの「ブラタモリ」という番組をよく見ますが,そこに出てくる地元の方の多くは学芸員や文化財の関係者です。知り合いがよく出ていますし,福島県博の学芸員も出演しました。地域の成り立ちを,地形や環境を土台に歴史や文化があるという視点から見直すと,何気ない風景に意味があることを気づかせてくれるところに魅力や人気があるのかもしれません。
 今,地域創生や観光振興そして町づくりが盛んに言われる時代ですが,このニーズの最も近いところにあるのが考古学なのかもしれません。活躍の場の多い,やりがいのある学問だと思います。