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教員紹介

藤山 龍造(ふじやま りゅうぞう)

——簡単に自己紹介をお願いします

  1977年に仙台市で生まれ,横浜市で育ちました。住まいの周辺に著名な貝塚が点在していましたので,今から振り返ってみると,遺跡に囲まれて育ったことになります。2011年に明治大学に着任しましたが,その前は首都圏某私立大学のキャンパス内で遺跡の調査に携わっていました。もともと旧石器時代から縄文時代の自然環境と人間活動に広く関心を抱いていますが,あわせて考古学の方法そのものに大きな興味があります。趣味はクラシック音楽を聴くことで,そのためだけに欧州に弾丸旅行することがあります。

——考古学を学び始めたきっかけは何ですか?

 もともとのきっかけは笑ってしまうほど単純なのです。小学校,中学校と絵に描いたような劣等生でして,英語はおろか日本語もできない。それで文字のない世界に憧れることになった(笑)。何とも安直な理由であることは,まったく否定できません。きっかけはともかく,どういうわけか身の回りのモノには人一倍好奇心が強かったので,次第に考古学の世界に没入していったように記憶しています。

——考古学の面白さって何でしょう?

 遺跡から出てきたモノを通して,過去の人々と直接接点を持つことができる点でしょうか。ここ最近は,1万7千年前の石器,1万年前の土器や骨角器を扱っていますが,その時代の人々が触れたのと同じモノを今まさに自分自身が触れているわけです。1万年を上回る途方もない時間を経過していながら,こうして自由自在に時空を越えることが出来る。考古学の世界だからこそ出来ることではないでしょうか。

——考古学者に必要なものって何でしょう?

 地道な探究心に尽きるのではないでしょうか。たとえ1点の土器片であっても,それらを丹念に観察してゆくと,それを残した人々の姿が見えてくることが珍しくありません。大きな忍耐力が要求されることもありますが,まだ世界中の誰も知らない情報を導き出すことだって可能です。これこそ考古学の醍醐味ですが,それを支えているのは,繰り返し,繰り返し,資料に問いかけ,あるいは検証してゆく地道さだと思っています。

——明治大学の良いところって何でしょう?

 私自身は他大学の出身者ですが,外からの目で見ると,本当に羨ましい環境が揃っています。考古学史に残る貴重な資料が手元にありますし,それらを通して考古学の基本を学ぶことが出来るわけです。また,博物館の図書室をはじめ,ここまで文献が揃っている機関は日本でも一握りではないでしょうか。全国で活躍している卒業生が手厚くサポートしてくれる点も含めて,明治大学の学生が羨ましい限りです。

——大学生活で得たものって何でしょう?

 考古学に限らず,いろいろな分野を幅広く見渡すことによって,それまでは知りえなかった世界の広さを学べたことでしょうか。今から振り返ってみると,大学で学んだことに何一つ無駄なことはなかったような気がします。教室で学んだことはもちろんですが,研究室やフィールドで先輩方や先生方とコミュニケーションをとりながら得た知識や技術は,掛け替えのない財産になっているように思います。

——高校生のときにやっておくべきことってありますか?

 おそらく高校生の皆さん受験勉強のことで頭が一杯ですよね。その気持ちは痛いほど分かりますが,ぜひ受験勉強に偏ることなく,どんどん遺跡や博物館などに足を運んで,教科書では見えない広い世界へ目を向けてもらいたいと思います。大学に入ることも大切ですが,入った後のことはもっと大切です。受験勉強の最中には想像もつかないと思いますが,そうして学校の外で学んだ知識が大学に入った後に大きく活きてきます。そのときに活きる経験を今のうちからたくさん積んでおいてもらいたいと思っています。