明治大が皆さんに選ばれた理由のひとつは、「就職に強い大学」というところにあったのかもしれません。私は一般企業や公務員向けの就活はしたことがない(現在のようなものはもちろん、私たちの学生時代のものも)ので、たしかなことは言えませんが、社会学が就活で短期的に成果をあげるために直接役立つことはあまりないような気がします。問題はその後です。希望の会社にはいれたとしても、不本意な就職をすることになったとしても、その後をどう生きるか。それは個人の価値観、ライフスタイル、「要領」の問題で学問の問題じゃないでしょう、という人もあるかもしれませんが、それらだけで解決がつくことばかりでもありません。(自分の会社だけではなく)社会をどれだけ遠く、広く見通して、なおかつ冷笑主義(「ま、世の中こんなものだよ」と斜に構えつつ、実際的には、大勢——それがどんなひどいものになろうとも——に従っていくこと)に陥ることなく、そういうビジョンと自分や自分のまわりの人たちの人生との関係をどのようにつけていくか。私にわかる範囲で矮小化してしまっているかもしれませんが、ライト・ミルズが言う「社会学的想像力」(sociological imagination)とはそういうことではないでしょうか。