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明治大学広報
第580号(2007年2月1日発行)
シリーズ授業参観@
携帯電話で授業を活性化
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 大学の教育は、「教室の現場が発信源」。この視点に基づき、特集「授業参観」を企画した。
 今回は、携帯電話を利用した講義ということで、2004年の導入以来多くのマスコミで取り上げられるなど注目を集めた、情報コミュニケーション学部・川島高峰助教授の講義の模様をレポートする。


― 授業の様子 ―
教室に潜入


 訪問したのは水曜日2限目、和泉メディア棟303教室。「政治学」の授業。1945〜60年の政治史を題材として、政治学の基本概念や政治過程を学ぶもの。戦後の政治の原点に触れ、現代日本の政治への理解へとつなげる。

 教室が180人ほどの学生で満員になる。授業のはじまりは、前回の授業で出された課題に対して、学生から寄せられた回答集をもとに総括していく。この時のテーマは「東久邇内閣の評価」。提出された全154名の回答がB4判の用紙2枚に両面でびっしりと詰め込まれている。最長565文字、最短で20文字のコメントの中から特徴的なものをとりあげ、川島助教授は前回の講義を総括していく。「2番の人はおもしろい回答をしていますね。2行目、『最大の矛盾、両義性は“天皇”と“国民”なのではないだろうか。民主的な政策を取りながら、その目は常に天皇に向けられていた』―鋭い指摘だ」。

 回答は、携帯電話から専用サイトにログインして行う。携帯電話のない学生は、所定の用紙に書いて提出する。これが出席代わりなので、学生は真面目に聴くしかないのである。

 授業中にアンケートを行い、その結果を元に授業を進めることも可能だ。

Q1「戦後民主主義は与えられた民主主義である。」
 @そのとおり 
 Aそうではないかと思う 
 Bそうとはいえない部分もある 
 Cそんなことはない
 
学生は、IDとパスワードを入力して専用画面にログインする。4択の回答を選択し、送信すると、即座に集計され、結果がスクリーンに表示される。

A1 @20% A40% B39% C3%

 川島助教授はこの数字を読み解き、授業を続けていく。


― 開発者は ―
運用に適ったシステム作り


 システム開発に携わったのは、明大インキュベーションセンターに入居しているベンチャー企業、泣潟gル・フィート。「川島先生から『こんな風に使いたい』という要望をもとに開発。システムありきではなく、具体的な運用に適ったシステムを作るのが苦労であり面白さでもある」と代表取締役の愛甲慎一郎氏。システムは、専門的なパソコンスキルがなくても、教員が簡単にアンケートを作成できるように工夫されている。
 
 川島助教授の旗振りのもと「情コミスタイル」としてはじまったこのシステムも、大学として全学部で対応するようになり、現在、20名ほどの教員が導入者としてエントリーをしている。愛甲氏は「まだ奇抜なものというイメージを持たれがちだが、操作画面の見栄えを良くするなどで改善を図っていきたい。教員側の操作は大分完成したので今後は学生側の使い勝手をよりよくしていきたい」としている。
 
さらに「携帯電話を取り巻く環境がここ数年で劇的に変わってきている。今や携帯電話は電話として使われるよりもメール、インターネット、おサイフ携帯etc、そこに面白みを感じますね」と、さまざまな事業展開を視野に入れた可能性を語る。


― 導入して ― 川島助教授の話
いかにフォードバックするか


 授業中の通話やメールなど、学習モラルの低下を誘うものと見られることが多い携帯電話。これを逆に授業を活性化させる道具として利用する目新しさで、話題を呼び、導入以来マスコミにも数多く取り上げられてきた。

 しかし、「携帯電話を使って授業を行う、ということで一見手間が省けるように思えるけれども、実際に活用するとなると、授業をやる側としてもごまかしが効かなくて、かえって大変」と川島助教授は語る。携帯の活用は、教員に授業改善のための労力を強いるのである。携帯を「利用して得た結果をいかに学生にフィードバックするかが大事」なのである。実際、冒頭で紹介した学生のコメント集にしても、学生から寄せられた回答をプリントに編集し、そのフィードバックを行うには相当の手間がかかる。それでも、同じ設問に他の学生が何と回答しているのか、その情報を共有することは、学生にとって大きな刺激となるようだ。「『あの授業を受けたよね』というクラス・アイデンティティを後々持ってもらえたら」と川島助教授。

 そのほかに授業内容の予告もメール配信する。「今日は憲法改正の歴史について話す」など、イントロを伝えることで学生たちの授業に臨む態度がグッと変わるという。出席率にも影響する。またアンケートでリアルタイムに理解度を確認できることが大きいという。「教員は自分の言葉が学生に通用していると過信するのは危険だ」と力を込める。


― 参観を終えて ― 
教員・学生とも切磋琢磨


本特集を企画した当初、最新の機能を駆使したイマドキならではの講義の様子が取材できれば、と考えていたが、実際に教室で目にしたものは、教員と学生が互いに一生懸命授業に臨んでいる姿勢だった。熱のこもった講義、私語は皆無。熱心にノートを取る筆音が心地良かった。授業の後は質問に訪れる学生が途切れなかった。とても密接なコミュニケーションを感じた。

「携帯授業の効用 −デジタルとアナログの狭間で−」
  教育の情報化推進本部長 吉田 悦志
 「学生に聞く」(授業の感想)



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ダイナミックで密度の濃い講義に圧倒される




アンケートの回答画面。設問の回答を選択し、送信すると結果はすぐさま集計される。携帯電話が投票ボタンに早変わり



アンケートの集計結果がスクリーンに映し出され、授業の素材として活用される


前回の課題の回答集。文字の大きさは6ポイント程。154それぞれの視点が興味深い。



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