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哲学プラクティス

哲学プラクティスについて

 哲学と言えば、古典的な哲学者の書物を文献学的に研究することだというイメージがありますが、そうとは限りません。西洋最初の哲学者であるソクラテスは、本を書くことを拒み、人々との対話に専念しました。彼は、アテネの共同体にとって本当に善いことは何かを、虚偽やレトリックによらずに、自由な言論の場で説得的に示すことのできる市民を、対話を通じて形成しようとしました。こうした歴史に根ざした哲学対話(Socratic dialogue)の取り組みが、今、知識詰め込み型の人材育成に代わって見直されはじめた、深く対話し創造的に思考するコミュニケーション力の育成法として世界的に注目されています。
 
こうした正統かつ新しい哲学の学び方を、私たちは「哲学プラクティス」の授業に導入しました。そのポイントはこうです。
 
(1) 哲学的問いは具体的な生活にある
(2) 問いは対話によって解き明かされる
(3) 参加・対話型の知識形成は批判的・創造的・ケア的なバランスの良い思考を必要とする
(4) その思考は、パブリックな場で他者を尊重しながら、自らの意見を表明する力
 
 この対話がその他の話し合いとは一線を画した「哲学」の一部である理由は、その問い方にあります。例えば、哲学対話においては、「いじめをどうやったら無くせるか」ではなく、「いじめとは何か」や「なぜいじめは悪いのか」を問います。Howの問いを問題解決型と呼ぶとすれば、WhatやWhyは問題の奥行きや拡がりを探求・発見するのに向いた問い方と言えます。この問題発見型ないし問題探求型の問いは、その個別の問題が生じてくる大局的なコンテクストを開き、錯綜した問題連関を解きほぐすことで、具体的な問題解決に焦点を絞るための必須条件であり、多様化し複雑化する現代社会に特に必要とされる実践的な知識運用の重要な部分となっています。
 具体的には以下のような内容を含みます。

・問いを立て、対話を行い、対話を振り返る。
・対話の素材(小説、絵本、映像など)を持ち寄り、その素材を使って対話する。
・哲学カフェに参加し、その報告をする。
・哲学プラクティスに携わっているゲスト講師から、哲学プラクティスの歴史や現状を学ぶ。
・グループごとに、哲学対話のセッションを企画し、開催する。