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明治大学理工学部機械工学科 助教 石田 祥子

人生は軌道修正を繰り返しながら、迷いながら進んで行くものかもしれません

【折紙工学 -研究内容とその魅力-】
折紙工学とは折紙のかたちを科学的に解明し、工学に応用する学問です。これまでに、折紙の「折りたたみ」のアイデアは、宇宙産業において、ソーラーパネルやパラボラアンテナといった巨大な構造物を地上で小さく折りたたみ、打ち上げ後に宇宙空間で展開し利用するという技術に応用されてきました。私の研究は、折紙の「折りたたみ」を機械工学の分野にも応用することです。折りたたみが可能な形状を利用した、自動車の衝撃吸収部材や防振器などの研究を行っています。分野を問わず、様々な応用可能性を秘めているところが折紙工学の魅力です。

【理学系分野に進んだきっかけ】
昔から理科や算数が大好きで、高校の時には普通科ではなく、理数科に進みました。高校生の時、向井千秋さんが日本人女性で初めて宇宙に行かれ、旦那さんが向井さんについての本を書かれたんです。その本を読んで「なんて格好いいんだ」と思い航空宇宙工学を志しました。

【企業から大学へ】
私は大学院修士課程を修了してから民間企業に就職したのですが、勤めて5年目くらいの時に、自分の仕事と本当にやりたかったことのギャップに疑問を持ったんですね。それまでやっていた仕事は、最初は楽しかったのですが、客観的に見たときに何か新しいことを生み出す仕事ではなかったんです。その後、部署異動で、希望する部署には行けたのですが、新入社員ではないので、私がやらなくてはいけないことは、また別にあって・・・。思うようにいかず、つらい時期がありました。そこで、お知り合いの大学の先生のご厚意で、平日は会社で働きながら土日だけ大学で研究させてもらうということを1年くらいやっていまして、徐々に大学で研究することのほうが面白いし、しかも新しい何かを生み出すという、私がやりたいことに近いんじゃないかと感じるようになり、最終的には大学の研究者に転職する決心をしました。会社によっては社会人ドクター等、社員が働きながら大学に通って勉強や研究をすることに協力的なところもありますので、仕事と大学での研究を両立するという選択肢もあると思います。人生は一見すると回り道したなと思えることがあっても、その時に最良だと思う方向に少しずつ軌道修正を繰り返しながら、迷いながら進んで行くものかもしれません。結果的に私は大学の研究者になりましたが、今はとても自分らしい生き方ができていると思います。企業で働いた経験や、そこで学んだことを今の研究にどうやって活かしていこうかなという風に思いますね。

【ワーク・ライフ・バランスについて】
今は自分の時間をすべて自分で使えるので、使える時間はすべて研究に使いたいと思っています。本当に幸せなことに、今は研究をすることがすごく楽しいと思っているので、90対10で仕事なんです。趣味はフルートを吹くことです。週末にレッスンを受けています。一人で吹くのではなく、ほかの生徒さんとチームを作って演奏するのがとても楽しく、良い気分転換になっています。企業にいたころは、月曜から金曜まで働いて、土日は休みというサイクルがありましたが、大学はいつ研究してもよいし、いつ休んでもいい。そういう意味では、自由といえば自由ですが、自分でちゃんと管理していかないと大変なことになるので、そういう難しさもあり、面白さもありますね。

【研究者を目指す学生さんへのメッセージ】
チャンスは誰にでも平等に来るわけではなくて、いつ来るかもわかりません。チャンスが来たときに、それをつかむだけの実力や用意ができていないと無駄になってしまいます。チャンスをつかめるだけの実力や経験をコンスタントに積んでほしいと思います。また、先生方や一緒に学んでいた友達など、どういう縁があって結びつくかわからないので、人との出会いも大切にして欲しいと思います。研究者は、一人で没頭する素質もとても大切ですが、一人でできる仕事は限られています。いろいろな人に協力してもらったり、サポートをしてもらったりすることもあるので、人との出会いを大切にしてください。

【女性研究者研究活動支援事業に望むこと】
女性の優遇制度で終わってほしくないと思います。育児や介護などで夢や仕事を諦めなければならない女性を支援してほしいと思います。諦めなければいけない人を一人でも減らしてほしいと思いますね。

※本ページ記載の役職は作成日現在のものです。