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研究・知財戦略機構 堀江特任教授による提言「世界の自然保護の重要性 国際的な努力を身近なものに」を公開しました

2014年07月23日
明治大学 広報課

 2014年の土用の丑の日(7月29日)を控え、国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)の理事を務める、本学の研究・知財戦略機構の堀江正彦特任教授より、ウナギ保護に関する提言が寄せられたので紹介します。




世界の自然保護の重要性 国際的な努力を身近なものに

研究・知財戦略機構特任教授 堀江正彦
IUCN (国際自然保護連合)理事

◎絶滅が危惧されるウナギくん

世界の科学者を擁して自然保護に努力する国際自然保護連合(IUCN)は2014年6月12日、“ニホンウナギ”をレッドリストに掲載しました。レッドリストとは、ご存知のとおり、世界で絶滅またはその恐れのある野生動植物を載せたリストであり、世界で最も権威のある絶滅危惧種の評価資料とされています。
我々日本人がこよなく愛するウナギが絶滅危惧種として指定されることは、夏バテを乗り越える土用の蒲焼に言及するまでもなく、我々日本人の食卓を直撃する強烈なパンチであり、IUCNの名前もニホンの津々浦々にまで結構知れ渡ったのではないでしょうか?
ウナギが、この半世紀にわたって、親ウナギのみならず稚魚も大きく激減しているのは、IUCNが悪いのではなく、ウナギの生態が把握しにくいこともあって、卵からの完全養殖に成功していないにも拘らず、日本人をはじめとするグルメにウナギがコヨナク愛され続けているからに他なりません。
環境省は、昨年すでにニホンウナギを日本のレッドリストで絶滅危惧種に掲載しています。IUCNは世界に対して科学的にこれを裏付けるとともに、絶滅しないよう手を施すべきことを警告しているに過ぎません。この警告を真剣に受け止め、持続可能なかたちでの種の保全を確保することこそが、将来にわたって土用の丑の日を楽しむために必要になります。
更に言えば、このレッドリストには、既にミナミマグロやクロマグロ、そしてトキやパンダも入っているわけで、ウナギに限らず多くの野生動植物を保護していかなければなりません。そうした努力は、IUCNをはじめとして世界で行われています。

◎IUCNとは一体何か?

2013年4月に私は、この国際自然保護連合の理事に選出されました。日本の理事としては過去に、千葉県知事や参議院議員を歴任された堂本暁子氏、駐タイ日本大使であった赤尾信敏氏、そして駐オランダ大使であった小池寛治氏が、このIUCNの理事として活躍されています。
ところが、「IUCNの理事に当選しました」と話しても、自然環境保全関係者を除いて、IUCNが何なのか知っている人は極めて少ないのが現実です。
「野生生物の国際取引を規制するワシントン条約」や「生物の多様性の保全やその構成要素の持続可能な利用に関するCBD条約」さらには「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全に関するラムサール条約」などの重要な国際約束の科学的根拠を提供する世界最大の自然保護組織であるIUCNが、人々に知られていないことは、実に残念なことです。
更に言えば、ユネスコの「世界遺産条約」に基づく世界遺産委員会の諮問機関として、自然遺産としての記載の可否について勧告するのもIUCNなのです。昨年6月に富士山が「信仰の対象と芸術の源泉」として、世界文化遺産一覧表に記載されたことは快挙でしたが、それは20年にも及ぶ関係者の努力の賜でもありました。初期の時点では、果たして富士山を「自然遺産」として評価すべきか、「文化遺産」として評価すべきかの議論が行なわれていました。
その詳細はここでは省略するとして、「文化遺産」の評価はICOMOS(国際記念物遺跡会議)が行い、「自然遺産」はIUCNがそれぞれ担当することになっており、仮に富士山について「自然遺産」として申請していたならば、日本においてIUCNの名はもっと知られたかも知れません。

◎イルカさんが歌う We Love You Planet!

世界には多くの機関が存在します。例えば、UNESCOは「ユネスコ」、UNICEFは「ユニセフ」と片仮名でも表記することができます。しかし、IUCNは「アイ・ユー・シー・エヌ」と4つの頭文字を発音するしかありません。
そこで思いついたことは、その名前を変更することは無理なので、IUCNを文字って、最後は「自然を見守る」ことを強調し、「アイ・ユー・シー・ネイチャー」“I, You See Nature”とし、それをイルカさんに、「私と、貴方とで、自然を見守ろう」と歌って貰うことでした。
イルカさんは、「なごり雪」で有名なあのイルカさんです。ちょうど10年前、赤尾大使がIUCN理事であったときに依頼して、イルカさんにIUCNの親善大使になっていただきました。今日でこそ世界で6人も任命されているIUCNの親善大使ですが、イルカさんは初めての親善大使として任命されています。それはイルカさんの名前故ではなく、イルカさん自身が自然保護に関心が深く、そのための活動も大いにされて来られたからに他なりません。
昨年7月にイルカさんに、「IUCNの歌」の創作をお願いしたところ、僅か半年ばかりで「We Love You Planet!~ひびけ!惑星に。」 と題した素晴らしい作品を完成されました。ぜひ皆さんにも一度聞いていただきたいと思います。イルカさんの描く自然の素晴らしさとその保全の必要性がひしひしと伝わって来て、感動されることを保証します。
イルカさんの歌声とともに、ウナギくんの保護や、富士山の環境保全も含め、世界で自然保護の運動が身近なものになり、盛り上がりを見せてくれることを期待しています。