プロフェッショナルの矜持
博士(工学)
現代の我々が住む世界は、次々と進化する技術革新やグローバル化、価値観の多様化により、社会がかつてないほど不安定で複雑になっている現代において、私たちはその影響に直面しています。諸行無常と言われるように世の変化は常でありますが、現代社会の変化は、あまりに急速で様々な要因が複雑に絡み合い、既存の常識やルール、前例が通用しない不確実な時代を象徴しています。このような社会環境における「学び」では、単に知識やスキルを習得するだけでなく、実務における複雑な課題に対して異なる視点や立場を持つ他者との対話を通して理解をより深め、解決策を協創する能力を涵養することが求められています。明治大学専門職大学院の使命は、社会科学分野における総合型専門職大学院として学術研究を基盤としながら実務を担い真に価値を創造することができる“プロフェッショナル”=高度専門職業人を養成することです。
学術研究は、現象の観察や広い意味での実験・試行を繰り返すことで真理を探究する営みですが、その意義のひとつは、探究によって示された結果を社会に実装することにあります。現在、本学専門職大学院では、専門職学位課程としてガバナンス研究科(公共政策大学院)、グローバル・ビジネス研究科(ビジネススクール)、会計専門職研究科(会計大学院)、法務研究科(法科大学院)の4つの研究科を設置しています。そもそも我が国における専門職学位課程は、学術の理論及びその応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識と卓越した能力を培うことを目的としております。まさに、学術研究を実践に結び付けることが専門職学位課程の存在意義であり、そのために本学専門職大学院では、研究者教員と実務家教員の融合による実践的な教育プログラムを提供しています。学生自らがその専門性を構築するとともに、様々な課題に果敢にチャレンジし、新たな価値を創造できる人材の育成に努めています。特に、「実務家による教育」と「実務家のための教育」を重視し、第一線で活躍する実務家教員が数多く参画しており、実務や現場に根ざした知見を惜しみなく共有しています。
一方、真理を探究する学術研究は、その長い歴史の過程において多くの成果が蓄積され、学問体系が構築されてきました。蓄積された研究成果や知見は、常に新たな問いを提起し、その後に続く新たな研究活動によって、反証され修正される運命にあるとも言えます。学術研究は永遠に終わりのない営みであり、その発展過程は間違いと訂正の繰り返しの歴史です。我々は、今日の知見や成果に常に疑問を持ち、真実に到達するための努力を続けなければなりません。明治大学専門職大学院は、プロフェッショナル人材の養成機関であると同時に、社会で生じる問いに答えることで学術研究の進化・発展に貢献していきます。
明治大学は建学以来、個人の権利や自由を認め、学問の独立を基礎として自律の精神を養うという「権利自由、独立自治」の理念を掲げています。“プロフェッショナルスクール”である専門職大学院はその精神を受け継ぎ、学術的な枠組みを通した思考力、そして現在の課題解決に向けて前に進む実践力を構築する場を提供しています。より良い社会を実現するために、多様な価値が交錯する越境的なコミュニティへ皆さんの参加をお待ちしています。