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柳谷理事長・大六野学長 新春対談「次代に輝き続ける明治大学になるために」

リバティタワー23階特別室にて

あけましておめでとうございます。今回は新春対談として「次代に輝き続ける明治大学となるために」と題し、柳谷孝理事長と大六野耕作学長のお二人に年頭所感を含めお話をお伺いします。

2024年をさらなる飛躍の年に



柳谷孝 理事長 あけましておめでとうございます。昨年に続き、ロシアのウクライナへの侵攻やイスラエルとパレスチナの紛争等、世界の分断が進み、一方地球の温暖化等、人類はPolycrisis(複合危機)と呼ばれる難局に直面しています。私たちはこうした先行き不透明な時代だからこそ、羅針盤となる未来を探っていかなければなりません。そのために明治大学はこれからも人類と地球環境の調和した未来を創造することに貢献できる有益な人材を広く社会に送り出すべく、教学と法人が一体となってその実現に取り組んでまいります。

さて、本年の干支は「甲辰」です。生命や物事の始まりと成長を意味する「甲」と、草木が成長して活力が旺盛になる状態を表す「辰」。この組み合わせから成功という芽が伸び、上昇し、勢いを増しながら、ぐんぐん成長していく縁起の良い年といわれています。本学もアジアのトップユニバーシティを目指し、2024年をさらなる飛躍の年にしたいと考えています。



大六野耕作 学長 あけましておめでとうございます。私たちは先行きが不透明で変動し続ける社会の中で生きていかなければなりません。そのような状況下に置かれているという意味で、人間のあり方や社会のあり方を根本から問い直さなければならない時代になっているのではないかと思っております。そうした時代に先を見通すために今何が必要なのか、どのような経験をしたら良いか、どのように現実に生かしていくべきなのかを考え、現代社会を生き抜く応用力を備えた学生を輩出することが、これからの大学の大きな役割だと思います。予測困難な現代社会に対して、消極的あるいは悲観的な態度で臨むことなく、これを一つのチャンスと捉えるべきです。チャンスを生かし、自ら見いだせる学生を育てていきたいと考えております。

コロナ禍を乗り越え新たな歩みを

—— 2023年の明治大学を振り返っていただけますでしょうか

柳谷 2023年はコロナも5類感染症となり、やっと元気溌剌にキャンパスライフを送る学生たちと接することができるようになりました。

また、10月22日開催の第26回ホームカミングデーでは、4年ぶりに全校友とそのご家族、そして近隣住民の方々にもご案内し、これまでの最高となります5090名が駿河台キャンパスにお越しになりました。また、北野大校友会長よりご提案をいただいております卒業70年目の方についても特別招待校友とし、本年の第27回ホームカミングデーにご案内できるよう検討を進めております。同様に、元父母会の方々についても、本年の連合父母会創立50周年を機に、「第2の母校」としてご案内を申し上げるなど、本学に関わる多様な人々の集うホームカミングデーを目指してまいります。

さらに11月19日には同じく4年ぶりに明治大学全国校友大会が愛知県で開催され、1000名近い校友が名古屋に集結しまして、大盛況でした。校友の皆さまと共に肩を組んで声高らかに校歌を歌うことができ、私も少々涙腺が緩んでしまいました。コロナ禍にもかかわらず、準備を進めていただいた校友会愛知県支部の皆さまの、強い信念と団結力に敬意を表したいと存じます。

このように、9月14日開催の連合駿台会創立70周年記念式典などを含め、人と人とが直接接することの大切さを実感した2023年でした。

なお、施設整備では3月に競走部とサッカー部の新合宿所が竣工いたしました。それぞれの部にトレーニングルームやミーティングルームを完備した最新の合宿所となっております。

また、4月には、生田キャンパス第二中央校舎(仮称)の建築に着工しました。2014年竣工の第一校舎6号館以来、11年ぶりの新校舎が誕生することとなります。ロシアのウクライナ侵攻等により建築資材が高騰し、当初の予定より2割程建築費用が上昇しましたが、こうした施設整備のための引当特定資産は、2015年には67億円という水準でしたが、2016年より計画的に積み増し、2022年度末には342億円となりましたので、当初の予定通り着工し生田キャンパスの強靭化に取り組んでおります。

また、各キャンパスの既存空間をリニューアルし、新たな学生交流スペースを創出しております。駿河台では、これまで学生が利用できる座席数が61席しかなかったものを、一気に431席へと増席しました。同時に生田キャンパスも110席増席し、現在575席となっております。学生支援部を中心に各キャンパスの若手職員が参加したチームでアイデアを出し合い、リニューアルが進んだ結果、学生たちのキャンパス滞在時間が大幅に伸びております。若手の意見やアイデアを採用することの大切さを実感した2023年でもありました。

ところで2023年から取り組んでいる事項について、2点ご報告いたします。まず2025年4月施行予定の私立学校法改正についてであります。本学ではすでに評議員会を最高意思決定機関として法人運営を行っており、予算や決算、寄附行為の変更をはじめとする重要事項は、全て評議員会の議決を経ることになっております。また、今理事会では常勤監事の設置や公益通報体制の整備等、ガバナンスやコンプライアンス強化にも取り組んでおります。一方、このたび示された私学法改正を見ますと、理事と評議員の兼職禁止や評議員に占める教職員の割合等、新たに対応が必要な事項も少なからずございますので、これらを踏まえ改正内容の遵守を第一に今後の検討を進めております。

次に、本年のNHK連続テレビ小説『虎に翼』の主人公のモデルに本学法学部昭和13年卒業の三淵嘉子さんが決まりました。1938年の司法試験で本学出身の久米愛さん、中田正子さんそして三淵嘉子さんが女性として初めて合格されました。三淵さんはその後、女性初の判事そして女性初の裁判所長となった方です。「日本女子法曹界の歴史は、明治大学女子法曹界の歴史そのものである」といわれるゆえんです。すでに昨年から収録が始まっており、後程学長よりお話があろうかと存じますが、どうぞ新春の朝ドラをお楽しみください。



大六野 やはり特筆すべきは新型コロナウイルス感染症が第5類に移行したことで、人と人とのつながりや学内行事をはじめとする各種活動の制限が取り除かれたことに尽きます。学生同士、学生と教員間での交流が元の状態に戻って、一気に花が咲くように人間関係が全面的な展開を見せるようになりました。2023年度に入るまでに、われわれは新型コロナウイルス感染症の蔓延から学んだことを具体的な形にしてまとめ上げました。例えばオンライン授業ではどういう教育ができるのかという可能性の追求、逆に対面授業で実施しなければならない教育とはどういうものなのか、オンライン授業と対面授業を組み合わせる場合にはどういう形が望ましいのか、といった具合です。また、学内のさまざまな会議は開く必要があったのかということも見直し、ガイドラインや規程を設けました。その結果オンライン授業の効果的な活用がより明確になり、キャンパス間の移動が減少し、会議の回数も半分以下になりました。この改善によって捻出された時間を教育や研究に振り向けることができるわけです。一連の取り組みは非常に大きな意義を持っていたと受け止めています。

また、授業以外における体育会や文化活動などの課外活動について、何らかの制限があったのに対し、すべて解除し、通常の活動ができるようになりました。学生にとってはコロナ後の次の時代に向け希望を抱くような精神的な高揚感というものが表に出てきたと感じています。

学生の海外留学にも言及しておきます。2019年度には本学から海外への留学者数と海外から本学への留学者数がそれぞれ2300名超を数えていました。コロナ禍を背景に、2020年度、2021年度は実質的にゼロに近い状況に陥ってしまいました。コロナ禍が収束に向かい始めた2022年度から徐々に復調しており、2023年度末時点には留学者数が2019年度水準を上回る実績になりそうだとの見通しが示されております。

本学にとってはこれからが一番重要な時期だと認識しています。コロナ禍で学んだことを新たな経験として取り込み、その経験を糧にさらなる飛躍を目指し、次代へと引き続き歩みを進めていきます。今後、研究課題や教育の方法も大きく変化し続けるのではないかと思っております。それらの教育の変化に対応した代表的な施設が2022年3月竣工の「和泉ラーニングスクエア」です。新たなアイデアに基づく学修空間あるいは研究空間ともいうべき施設で、時代を先取りした施設として学生の勉学意欲の向上などに大きな効果を発揮しております。施設竣工以前と比較してみるとそれは明白です。学生が授業終了後にさまざまな活動ができるこのラーニングスクエアに立ち寄り、滞在できるようになったことで人と人とが出会い、新たな価値観の出会いという現象が沸き起こります。さらに、その価値観の出会いは、新たなアイデアの創出へとつながっていくわけです。そうしたことから大きな期待感を寄せられる次代をにらんだ環境整備を実現できたと思っております。先行きが不透明なVUCA(ブーカ)の時代だからこそ、教育環境を整え、先を見通す力を養うことが大事なのだと痛切に感じます。

最後に、柳谷理事長から紹介がありました、三淵嘉子さんをモデルにした『虎に翼』については、法学部の村上一博教授が時代考証スタッフとして協力しております。個人的にも楽しみにしているところですので、校友の皆さまもぜひご覧いただければと私からもお願いいたします。

教学・法人一体となった取り組み

—— 2020年度から始まった理事会も4年目の最終年度を迎えております。4年間を振り返っていかがでしたでしょうか

柳谷 今理事会も4年任期の最終年度を迎えておりますので、この機会にこれまでを振り返りますと、2020年度から22年度の3年間は、まさにコロナ禍と重なっていた訳でありまして、そのような中で今理事会は「スチューデント・ファースト」全ては学生たちのためというスタンスで、まず、第一に「学生と教職員の健康と安全を守ること」そして同時に「大学業務の継続性を守ること」を掲げ、教学と法人一体になりましてその実現に取り組んでまいりました。

まず前者につきましては、職員の皆さんが部署を越えたチームをつくり、学生一人一人に確認しながら生活困窮学生5300名を特定し、1人10万円の支援や、全学生を対象にオンライン環境整備のための支援等、総額20億円を上回る支援を行ってまいりました。

また、教学からの提案で、他大学に先駆けまして、今後も起こりうるであろう災害やウイルスで学生たちの修学機会が奪われることのないよう、可及的速やかに支援を行うための「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」というファンドを立ち上げました。なお、このファンドには校友、ご父母、教職員をはじめ多くの方々からご寄付をいただき、学校法人からの供出金を含めまして、現在10億円を上回る規模となっております。コロナ禍を大過なく乗り越えられましたのも、こうした皆さまからのご支援のおかげでありまして、改めまして厚くお礼を申し上げます。

次に大学運営の継続性という点では、皆さまご承知のように本学は2021年に創立140周年を迎え、その記念式典の場において、次の創立150周年となります2031年に向けた本学のあるべき姿を示した長期ビジョンであります、「MEIJI VISION 150-前へ-」を学長と共に公表いたしました。現在はその実現に向けまして、より長期的なプランや目標数値を組み込んだ第3期中期計画を策定し、定期的に進捗状況を確認しながら、各年度の事業計画や予算編成に反映し、実行しているところでございます。

なお、その中の施設整備につきましては、2022年3月に竣工いたしました、和泉キャンパスの新教育棟「和泉ラーニングスクエア」に続いて、先程申し上げましたように昨年4月には生田キャンパス第二中央校舎(仮称)の建築に着工し、2025年春の竣工を目指しているところです。今後とも引き続き教育・研究活動の充実に取り組んでまいる所存ですが、これらを支えるのは、健全で強固な財政基盤であります。2022年度の決算では、企業の純利益に相当する、基本金組入前当年度収支差額がおかげさまで33億6800万円のプラスになりましたが、創立150周年となる2031年に向け50億円を目指してまいります。



大六野 最初の3年間は、多くのエネルギーを新型コロナウイルス感染症対策に費やしたと言えます。教学の対策協議会と法人の対策協議会が一緒になり、重要な事項に即時に対応する体制を取りました。このことが、本学が新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機を乗り越えられた大きな要因であるのは間違いありません。当初どういう感染症なのかも分からず治療薬やワクチンもないという状況で感染が広がり、恐怖感を持つ人や楽観視する人、事態に戸惑う人とさまざまな人間の心情が露呈しました。コロナ対策を振り返ると、個々の反応は異なるのに個別対応ではなく一括して対策を講じざるを得ないという点が非常に難しかったと言えます。

そのような状況下で、学部長会や教務部委員会などの学内会議が「安全と健康を守りつつ教育と研究を維持する」という方針を打ち出し、この一点に収斂させる形で物事を的確に決定いたしました。本学が大過なくコロナ禍を乗り越えられた一番の理由は、こうした危機下での学内の機関決定の仕方にあったと個人的に思っております。

コロナ対策に関しては教職員の皆さんが本当によく協力してくださいました。具体的な例として、オンライン授業への取り組みが挙げられます。ある日突然「2020年に全ての科目をオンライン授業に切り替える」という通達を出したようなものなのですが、パソコン習熟の程度や年齢に関係なく全ての教員が迅速に対応してくれました。このことには本当に心から感謝申し上げたいと思います。

もう一つ見逃せない重要なことは、ステークホルダーであるご父母から大学に多大な協力を賜ったということです。明治大学連合父母会は、大学との間で非常に密接なコミュニケーションを形成していることで有名なのですが、コミュニケーションを取ることが困難な状況になってもオンラインで教職員とのコミュニケーションを保持し、大学の対策を支える役目を果たしてくれました。

また、校友会の皆さんには「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」へのご協力をいただきました。この資金は、学生が自宅の通信環境を整え、資料を印刷するための支援金として使われました。おかげさまで学生の間に大きな不安を生じさせることなくオンライン授業に移行することができました。

自身が変わり、次代への教育を

—— 最後に、2031年に迎える創立150周年や、その先の明治大学についてお聞かせください。そして、この先も明治大学が輝き続けていくためには何が求められるのでしょうか?

柳谷 創立150周年に向けた「MEIJI VISION 150-前へ-」の中の「大学経営における全学ビジョン」の重点目標として「1.施設整備計画」「2.情報化戦略」「3.財政計画」「4.寄付金収入」「5.付属校政策」「6.職員人事政策・事務組織」「7.校友との連携強化」という7つの項目を掲げました。

このうち、施設整備につきましては、2020年の理事会でスクラップ&ビルドをはじめとした「施設整備計画方針」を策定し、その上で2021年9月には、教学から駿河台再開発におけるコンセプトとして物理空間と仮想空間を自由に行き来できる力を育む未来型キャンパス「駿河台6.0計画」が示されております。これらの基本コンセプトに基づいて、各キャンパスの将来計画を策定していくとともに、150周年に向けて駿河台キャンパスをデザインしてまいります。

次に情報化戦略につきましては、本学における情報化戦略MUX(Meiji University digital Transformation)を打ち出し、膨大な情報の統合管理を進め始めています。そしてこれらを教学マネジメントや教育の質保証、学生の学び支援、法人IRの整備・強化による法人の経営戦略立案・策定などに利活用し、学生および教職員の創造力と生産性を高めます。

さて、こうした計画を支えるための財政基盤の強化について、具体的な目標数値を定めたのが、2031年までの基本金組入前当年度収支差額50億円と寄付金収入累計150億円です。これまでの実績から高い目標ではありますが、これを実現することでアジアのハブとなる教育・研究環境の整備を進めてまいります。校友をはじめとするステークホルダーの皆さまからのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

次に付属校政策につきましては、すでに学校法人日本学園の系列校化を発表しておりますが、現在本学と日本学園で新たな付属校としてのグランドデザインや学校運営の詳細を協議しているところであります。本年はいよいよ新しい理事会がスタートし、2026年4月1日には明治大学付属世田谷中学校・高等学校が誕生いたします。

ところで学校法人の経営と運営を中心となって支えているのは職員の皆さんです。今理事会では、職員一人一人の能力向上のため学内外での研修に注力しています。こうした研修成果の発表会を開催しておりますが、昨年からは優秀者を表彰する制度も始まりました。オーディナリー・ケイパビリティ(決められたことを正しく行う能力)とダイナミック・ケイパビリティ(急速に変化する外部環境に対し、自己変革する能力)を合わせ持つ、プロフェッショナル人材の養成に努めてまいります。職員の皆さんの成長と活躍を大いに期待しております。

以上の重点目標を達成し、「MEIJI VISION 150-前へ-」を実現するため、私も先頭に立って学校法人明治大学を牽引してまいりますが、何と申しましても校友、ご父母、教職員の皆さまをはじめとするステークホルダーからのお力添えほど心強いものはございません。「The best way to predict your future is to create it(未来を予測する最良の方法は未来を創ることだ)」という世界的な経営学者ピーター・ドラッカーの有名な言葉があります。皆さまとの連携を強化し「同心協力」を推し進めることで、「世界に開かれた大学」そして「世界に発信する大学」として未来に輝き続ける明治大学を創ってまいりたいと存じますので、本年も何卒よろしくお願いいたします。



大六野 柳谷理事長から150周年に向けた主要な施策についてお話しいただきました。私は教学の観点から少し話をさせていただきます。これからの教育研究を進めていくためには、それを支える財政基盤が重要ということは論を俟ちません。しかし、日本ではこれまで学長がこういうことを議論することは少なかったわけです。欧州も米国もそうなのですが、学長の主たる役割の一つは大学の研究リソースを社会に説明・発信し、それに対する評価を仰ぐことです。その役を果たすことなく、大学が優れた研究を行いつつ、その果実を教育に還元し、学生と共有していくことはまず無理であろうと思っています。ポジティブに捉えるならば、そういった積極的な姿勢を示すことで、明治大学はさらに輝いていくものと考えています。

大学の国際化という分野では、この7年間で明治大学・大学院を卒業もしくは修了後、フルブライト・プログラムに選ばれ、海外で学位を取り、それぞれ研究やビジネスの分野で活躍されている方が5名おられることが分かりました。このことは、明確な目的を持って努力を続ければ必ずその結果は出てくることを示しています。アイデアを語ることは簡単ですが、実現することは容易ではありません。足下を見ながら将来への夢を忘れることなく歩みを進めることが大切なのだと考えます。

私は1972年に明治大学に入学し、50年を超える人生をこの大学と共に生きてきました。このわずか50年の間にも、大学は幾度か苦しい出来事を乗り越えてまいりました。かつて若い先生たちが立ち上がり、あたかもお経を唱えるような一方的な授業形態について、見直しに動いたということがありました。事前にレジュメを配布して授業に臨もうという、今では当たり前の授業のやり方に改善を図られたわけです。このような努力があり、継続されたからこそ本学の今の姿があるのです。過去に改善すべき出来事があった際に力を注いだ人たちの遺産が引き継がれ、その伝統によって今があることをぜひ知っておかなくてはなりません。こうした改善への努力を怠ると、良き伝統は次第に失われていきます。それぞれがプロアクティブに自分たちで将来をつくっていくという意識を持ち、実践できれば明治大学の将来は明るいものになるでしょう。

冒頭、柳谷理事長が話されたように、世界を見渡すとありとあらゆるところで社会の分断が進み、それが紛争となり、戦争につながっている例もあります。しかも、かつてのような大国だけの対立ではなくなっています。こうした状況の中で対立をどうやって解消し、一人一人の幸せを追い求め、ウェルビーイングを高めていくべきかを考えたときに、多くの方は自分自身が変わらないでどうするのだろうと思うはずです。大切なのは自分自身が変わるということです。世界中どの国の大学の学長も同じような指摘をしております。次代を担う学生を育てるためには自分たちが変わる必要があり、そして推進するためには研究と教育に強くなくてはいけません。あらゆるアイデアを試し、仮にうまくいかなくとも軌道修正し、諦めずに継続していくことで、明治大学には輝く明るい未来が開かれると確信しています。

理事長 柳谷 孝
1975年明治大学商学部卒業。75年野村證券(現:野村ホールディングス)㈱入社。97年同社取締役、2000年同社常務取締役、02年同社代表取締役 専務取締役、06年同社代表執行役 副社長、08年同社副会長など歴任。昭和産業㈱社外取締役などを務める。 16年5月より現職

学長 大六野 耕作
1977年明治大学法学部卒業、82年同大学院政治経済学研究科博士後期課程単位取得退学。82年政治経済学部助手、84年同専任講師、88年同助教授を経て95年同教授。政治経済学部長、副学長(国際交流担当)など歴任後、2020年4月より現職。専門分野は「比較政治論」



聞き手 副学長
(広報担当、学長室専門員長) 浜本 牧子

1980年山梨大学工学部卒業、86年東京大学大学院博士課程修了。2004年農学部助教授、11年同教授。副学長(学務担当、広報担当)、学長室専門員長など歴任。博士(農学)