EUはいま戦後最大の転機に直面している。英国のEU離脱決定は,EU内の反EU機運を刺激している。米国でトランプ大統領が登場したことで,排外主義の極右勢力が勢いづいている。この中で,4,5月にはフランスで大統領選挙が秋にはドイツで総選挙が行われる。それ次第でEU統合の行方が決まる。
しかし,2度の世界大戦を経てできた平和の組織,EUが崩壊するとみるのは妥当ではない。危機のなかでこそ,EUの粘り強さに着目すべきである。いたずらに悲観主義に陥ることなく,「EUの真実」を冷静に分析し,内向き化する世界にあってグローバル・アクターとしての役割を展望する。