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授業紹介

人文地理学概論
地理学専攻 2年 在学生

地理学専攻では人文地理学、自然地理学、地誌学の概論を必修科目としています。そのひとつである人文地理学概論では、人々のさまざまな営みの地域的な広がりやある地域を対象にした空間的な配置や構造を学んでいます。地域的な広がりとはいえ、その空間は近隣から国際的なスケールまでの多くの段階があります。講義では教授の研究実績を基にし、私たち初学者にも理解できるように教えてくれます。
日本における自動車製造業を例にするなら、常用従業員の供給市場は工場の周辺域となりますが、期間工は国内の遠距離地から供給されています。また、実修生の出身地は南米や東南アジアにおよびます。部品調達は近隣地域に限られることなく、システム化された工程に沿って、国内外から運搬されてきます。こうして、自動車はいくつかの圏を形成しながら製造され、商品市場は国内のみならず、アメリカやアフリカにまでおよんでいます。
私たちが学ぶ首都圏を例にした空間構造をテーマにした講義もあります。江戸の独特な街づくりから大政奉還後の「帝都」としての東京の発達、戦後の復興と周辺地域の開発、高度経済成長期下における爆発的開発とそれに伴う多くの都市問題、そして21世紀の東京のあり方なども対象となってきます。このように地域の形成過程や地域社会の経済的、社会的な問題に言及することも少なくありません。
高校時代の地理とはかなり異なり、事例的なテーマについて、データや分布などから考察していく講義と言えるでしょう。人文地理学はとても広い範囲をカバーしており、現代の社会構造そのものへ接近できるように思えてきます。
地理学研究法A
地理学専攻 3年 在学生

地理学はさまざまな現象が展開している地域を研究対象にします。しかし、すべての地域に足を運ぶことは不可能ですし、現地を訪ねても、必ずしも答えが見つかるとは限りません。そこで、地理学を学ぶにあたって欠かせないのが、フィールドワークと呼ばれる現地調査の方法です。この授業では、地図・空中写真・衛星画像などや統計を利用して、現地のイメージを膨らませながら学んでいきます。
高校での地理の授業は、教科書を参考にしながら自然環境や地域社会の経済事情に関する特徴を覚えたりしただけでした。大学では事例的に特定の地域を対象に、これらの現象がどのような過程を経て形成されてきたか、具体的に考察します。受動的であった高校時代とは異なり、主体的に学ぶ手法を会得するのがこの授業です。
この授業は、教科書のような既成のマニュアルを用いることなく、地形図、空中写真や統計資料を活用しつつ、対象地域を平面的に捉えるだけではなく、多角的しかも構造的に理解しようとする手法を学ぶ科目となっています。授業に出席し、聴講のみでこれらを理解するのは困難ですから、自らの作業を通じて、体得していくことになります。
こうした講義や作業を踏まえて、現地に赴きます。現地では手足のみならず目・耳など五感をフルに動かした観察をしながら机上作業を結び付けます。担当教授によって事例地域は異なりますが、私は東京の城東地域、房総半島や町なみ修景を進めている栃木市における現地実習に参加してきました。
この科目は10人程の少人数クラスで行われ、些細な質問でも時間をかけて詳しく教わることができます。クラスメートとの共同作業もあり、それもこの授業の魅力です。
文化地理学Ⅰ・Ⅱ
 文化地理学は景観や場所の状況を文化の視点から考える学問です。文化と聞くと風習や暮らし方、芸術などを想像するかと思いますが、それだけでなく思想や世界観、場所イメージといった精神的なものも文化として捉えて、今日まで文化地理学の研究が進められてきました。
 Ⅰでは、学史から丁寧に学んでいき、先生が執筆された論文・著作を中心に扱いながら文化地理学の実相を検討します。例えば、沖縄の祭祀施設を扱った論文では、琉球処分以降に祭祀施設がどのように解釈され、意味付けがどう変化していったのかを学びます。他にも沖縄の墓地やニューギニア島の集落の空間構造などを事例に取り上げながら、文化地理学の視座から地域をまなざすその方法を会得していきます。
 論文・著作を用いて講義を行うⅠとは異なり、Ⅱでは、映画等の視覚資料を通して都市の表象やそれをめぐる政治について、文化地理学的な視点から考えます。都市問題、社会的格差、未来のイメージなど毎授業違ったトピックが設定され、そのトピックに関連した視覚資料を観ていきます。映画等の視覚資料はその当時の状況や価値観を映しており、現在と比較しながら分析することで多くの気づきが得られます。ジャンルはコメディ、SF、サスペンスなど様々で、日本の作品以外にも海外の作品も扱うため、毎授業、楽しく受講することができます。

地理学演習
 3年生になると、「ゼミ」が始まります。ゼミでは、テキストの輪読などと並行して、ゼミ実習という現地学習・研究に取り組みます。ゼミ実習では自分たちでテーマを設定し、フィールドワーク(現地調査)を企画し実施します。そして、12月に学生自身が運営する「駿台地理学談話会」という研究発表の場で、その成果を発表します。さらに3月には「実習報告書」を刊行しています。