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 参考までに、西洋史学専攻の授業やゼミの活動・合宿の様子をお伝えします。
 

基礎演習(西洋史)A・B (担当 谷口 良生 講師)

 高校までの歴史科目と大学で学び研究する歴史学はどのように異なるのでしょうか。大学に入学したばかりの1年生を対象に、大学での歴史学の基礎を身につけるための授業がこの基礎演習です。少人数による授業で、単に一方向的に知識を学ぶだけではなく、参加者同士で議論したり、自らの関心にしたがって報告したりする実践型の授業です。私の専門は近現代フランス史ですが、この授業の参加者は古代ギリシア史から現代アメリカ史までというように、教員の専門に縛られずに学んでいます。
 この授業には二つの柱を設定しています。ひとつは、すでに述べたこととかかわりますが、高校までみなさんが学んできた歴史科目をふまえながら、大学での歴史学へと橋渡ししていくことです。歴史科目といえば暗記科目という印象をもつ方もいると思います。もちろん、歴史上の出来事や人物などの知識は、大学で学ぶ歴史学でも重要性を失いません。しかし、大学での歴史学は、そうした知識をどのように語っていくか、どのように過去の世界を解釈して、歴史として提示できるか、こういった営為が重要です。こうした違いを実践のなかで学びながら、スムーズに歴史学の専門教育へとつなげていくことが、この授業のひとつの目標です。
 もうひとつは、「議論する」ための技術を磨くことです。上記のとおり、大学の歴史学は単なる暗記科目ではありません。歴史をどのように解釈するかを考える学問です。そうであれば、ときにはさまざまな解釈があらわれることもあるでしょう。そのため、歴史学は独りよがりの学問ではなく、議論を通じた開かれた学問でなければならないのです。自分のテーマに関する報告をしたときにほかの参加者の意見を聞きながら応答する、あるいは反対に、ほかの人の報告に対して何らかの意見を言う、こうした「議論する」ための能力が歴史学においてはとても重要です。「議論する」というのは簡単なようでむずかしいです。そのための技術を1年間かけて磨いてもらうことをもうひとつの目標として設定しています。

古山ゼミ
 古代史を専門とする学生たちの関心は、エジプト・メソポタミアからギリシア・ローマにまで至る広大な領域と広範な時代にわたっているため、少人数授業では問題の関心と研究方法の模索が散漫になりがちです。そこで、学年を越えて合宿に参加してもらい、先輩後輩間で発表と議論を重ね、短い期間であっても寝食をともにする中でお互いの考え方を学び合って、古代の歴史を見る目を養ってくれるよう努めています。毎年10月頃に実施している古代史の合宿は、4年次の卒業論文の中間報告を核にして、3年次の課題報告、簡単なレクリエーションも含め、刺激を与え合い受け止める絶好の機会になっています。 
豊川ゼミ
 ロシア・東欧史のゼミには様々な興味を持った人たちが参加している。あまりの多様さと斬新さ(奇抜さ)に教員はただただ驚くばかりである。東欧のナショナリズム、ハプスブルク帝国の民族問題、ペレストロイカの原因、ペテルブルク建設の歴史的意義、などはオーソドックスなテーマであるが、ロシアの料理とその現代社会学的考察、対馬事件とロシア、ペテルブルクの建築、などはいろいろな知識が必要になる。
授業はいたってシンプルである。3年生になって最初の授業のときに春休みに書いたレポートの提出を求めるが、1年間はそれにこだわらずに勉強してもらう。ゼミは大きく分けて二つの方法で行う。一つは英語文献の講読。いま一つは自分の勉強の進展についての小報告。今年のテーマは「ナショナリズム」である。昨年までのテーマは「貴族」・「義賊」・「民族問題」・「外国人の見たロシア」といった歴史学では良く取り上げられているテーマである。 
青谷ゼミ
 中世史のゼミには、北欧から南欧まで、社会経済史から文化史まで、様々な地域とテーマに関心を持つ人たちが集まってきます。そのため、各ゼミ生の関心をうまく汲み取りつつ、なるべく多様な角度から中世ヨーロッパという独特の文明世界について理解を深めてもらおうと心がけています。
授業の中心となるのは、英語文献の読解に基づいた討論と個別報告です。英語文献に関しては、「騎士」や「都市」といった中世史上の主要テーマに関するものを読んで、議論しています。後期には、各ゼミ生が個別テーマで報告を行います。それらの報告をもとに年度末にはレポートを作成してもらいますが、こうした作業を通じて確固とした卒論の土台が築かれてゆくはずです。
水野ゼミ
 ヨーロッパの近現代史に関心を持つ学生諸君は、「フランス革命」から現代のEUまで、様々な時代や地域に関するテーマを選び、日々、文献史料と格闘しています。そのアプローチ方法も、政治史的なものから社会史的なものまで実に多様です。また、それぞれのテーマを深く掘り下げるために、ドイツ語やチェコ語など、対象地域の言語を学ぶゼミ生も少なくありません。研究の成果は、通常のゼミでの時間やゼミ合宿で発表してもらいますが、ゼミ生同士の議論は、ときに異端審問のごとく(?)容赦ないレベルで展開されます。まさに互いに徹底して討論し合うなかで、ますます歴史の深みにはまっていく、そんな経験をするゼミ生が(幸か不幸か?)着々と増え続けています。
鰐淵ゼミ
 アメリカ史のゼミには、時代的には植民地時代の先住民史や魔女狩りから現代の対中外交やヒップホップまで、地理的には合衆国だけでなくカナダやキューバといった国々も含めて、きわめて多様な関心をもった学生が集まります。授業では、英文テキストの読解とともに、ゼミ生各自の関心に基づく研究報告を行います。研究テーマは人によってバラバラですが、実はアメリカ史に関して日本語で勉強できることは多くありません。自分から英語論文や原書の世界に飛び込むことで、研究の可能性は何倍にも何十倍にも広がります。積極的に英語を研究言語として活用してほしいと思います。また、アメリカについては、その世界的なプレゼンスも相まって、政治や外交、軍事からファッション、音楽など、現代のことに注目しがちですが、ゼミでは現代に近い事象を扱う場合であっても、歴史的観点からアプローチするように指導しています。歴史的手法を身につけることでアメリカの深淵を覗いてみてください。得られるものは少なくないはずです。 
谷口ゼミ
  このゼミは、西ヨーロッパ(主にフランスやイギリス、スペインなど)の近現代史(宗教改革・ルネサンス~現代)を学びたい学生が集まっていますが、その関心はフランス革命といった政治史から砂糖やお茶、闘牛などの社会・文化史にいたるまで非常に多様で、地域もときにはヨーロッパ諸国の帝国の一部であった北アフリカやインドにまで広がります。こうした多様な関心に沿いながら、卒業論文の執筆に必要な能力を身につけられるようにゼミを運営しています。
 3年生のゼミでは、ヨーロッパ近現代史の専門知識と外国語文献の読解能力を身につけるとともに、自身の関心に沿った勉強を進め、卒業論文のテーマへの「切り口」をみつけることを目標としています。そして、4年生の1年間は、ゼミ全体での議論を通じて卒業論文を完成させていきます。ゼミ生たちは、先行研究や史料と苦闘しながらも、歴史に対するそれぞれの回答を考えながら、日々取り組んでいます。
山本ゼミ
フランス語圏の歴史

 現在フランス語の話者は、全世界でおおよそ3億人にのぼります。これは話者の多さで言えば、中国語、英語、スペイン語、アラビア語に続き、世界で5番目にあたります。しかしフランス共和国の人口は6800万人弱であり、話者の大半は非ヨーロッパ地域に暮らしているわけです。特に多いのはアフリカ大陸で、フランス語話者の6割程を占めており、その他にも北アメリカ大陸、カリブ海、インド洋、太平洋などの地域で広く話されています。この世界的な広がりは、フランスが近現代に領有していた植民地帝国と密接に関連しています。そこでフランス語圏の歴史では、近現代のフランスが本土で国民国家を築き上げるのと並行して、広大な植民地帝国をうちたてていく過程を学び、現代社会の理解を深める一助となればと考えています。受講生は、授業中アンケートなども含め、是非主体的に講義へ参加してください。