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学振特別研究員採用者体験談21

篠崎 大樹 氏(研究分野:植物生理学・細胞生物学)

2021年度DC2採用

在学中の所属:農学研究科・生命科学専攻 環境応答生物学研究室

(1)学振特別研究員へ申請しようと思ったきっかけ

 私が特別研究員を志した理由は3つあります。1つ目は、力試しをしたいと思ったことです。高い能力と向上心を持った他の申請者と競い合うことで、自身の実力がどこまで通用するのか知りたいと思いました。2つ目は、キャリアアップに繋がると考えたことです。限られた人材しか登用されない難関を突破することは対外的に能力を証明することに繋がるし、その経験を通じ多くの能力を身に着けられると考えました。3つ目は、良質な研究環境が得られると考えたことです。特別研究員に採用されると生活費と研究費が支給されるため、研究をより発展させることが出来ると考えました。
 

(2)学振特別研究員の申請開始時期及び申請を終えるまでの期間について

 私は前年度にDC1の申請を行い不採用となっておりましたので、その通知を受け取った時点で次年度DC2へ申請することを決めていました。実際に申請書の作成を開始したのは3月上旬ですが、内容についてはそれ以前から前年度の反省を生かし構想を練っていました。申請書の第1稿を作成した後は、指導教員とともに2ヶ月弱かけて申請書を磨き上げていき、最終締め切り直前まで粘って提出しました。申請書作成期間は、実験のスケジュールを上手くコントロールし、研究が遅延しないように注意しながら申請書作成にあてる時間を確保するように努めました。

(3)申請書作成時の留意点、苦労話、採用につながったと思うポイント等

 申請書において最も重要なのは学術的な「面白さ」であることは言うまでもありません。ゆえに、申請書において最大のウエートを占める今後の研究に関する記述は、面白さを的確に伝えるために、精密にロジックを組み上げ、幾度も検討を重ねて練り上げていく必要があると思います。加えて、社会的意義に言及し、研究の独自性と実現可能性を効果的に示すことも重要でしょう。審査官目線での読みやすさを意識しながら既定の様式内でこれらの要素を成立させるのは決して容易ではありませんが、理想を目指して粘り強くブラッシュアップを重ねたことが採用に繋がったのではないかと感じています。
具体的なブラッシュアップの方法としては、指導教員との1対1のやり取りだけでなく、多様な視点(他の研究者や学生、時には学術に関係ない家族など)が取り入れられると良いかと思います。また、校正においては、誤字脱字の確認程度に留めるのではなく、見出しの書式や、下線および太字の利用、フォント、行間や文字サイズ等に至るまで徹底して読みやすさを追求していくことが必要であると感じています。なお、特に図においてはモノクロ印刷された場合を想定して、配色に十分に注意して作成する必要があります。

(4)特別研究員になって良かったと実感したこと

 大きく2つ挙げられます。1つ目は、特別研究員というステータスを得られたということです。特別研究員への採用は決して容易な道ではないことは広く認知されているため、その身分を持っているだけで一目置かれることが多々あります。つまり、特別研究員であるということは、自身の実力を客観的に証明する指標となり得ると言えます。2つ目は、充実した研究環境が得られたということです。特別研究員に採用されると生活費が毎月支給されるため、集中して研究に取り組むことができます。加えて、自身を研究代表者とした科研費を獲得することができるため、物品調達などを自身の裁量でマネジメントして研究を加速させることができます。さらに明治大学においては、特別研究員に採用されると学費が全額無償になり、かつRAとの兼任により追加の給与が支給されるため一般就職に劣らないレベルの収入が得られます。

(5)特別研究員を目指す本学大学院生へのアドバイス

 博士後期課程に進学して特別研究員に興味があるという皆様におかれましては、大学で研究と出会い取り組んでいく中で、何か特別な瞬間があったのではないでしょうか。申請書作成やそこに至る前の成果を得る過程において辛いと感じた時には、ぜひその瞬間のことを思い出すようにして下さい。純粋に研究を「楽しむ」という感覚は、前に進むための強力な原動力になると思います。
特別研究員への採用は、見えない敵と戦う過酷なレースです。このレースは申請書を書き始める以前から始まっています。積み上げてきた実績、何を考えて何を行ってきたのか、妥協なく最善手を模索し続けたのか、これら研究を始めてからの全ての経験がものを言います。幸運は用意された心のみに宿る — 初心を忘れずに粘り強く楽しみ続けることが採用につながると私は確信しています。