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2015年度 入学式 学長告辞



新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
全国有数の一般入学試験志願者数に象徴される難関を見事に突破し、本学入学の栄冠を勝ち得た皆さんに、心からお祝いを申し上げます。
また、これまでご子女を暖かく支援してこられたご父母、ならびにご関係の皆様、お慶び、さぞかしのことと存じます。誠におめでとうございます。

一方で、東日本大震災から4年が経過しました。被災された方々にあらためて哀悼の意を捧げるとともに、お見舞いを申し上げます。
この3月、卒業式を迎えた学部生の皆さんは、震災の影響で入学式を経験できませんでした。しかしながら、未曾有の災害にも負けず、学業に精励し、明治大学の全課程を見事に修了して、たくましい姿となって巣立っていきました。そして本日、明治大学の一員となった皆さんに、苦難に直面しても、諦めることなく立ち向かう、この強き精神が引き継がれました。伝統の継承者となった皆さんが、数多くの先輩方と同様に、卒業する時、たくましい姿となって、世界に羽ばたいていくことを願っています。

さて、新入生の皆さんが、これから明治大学で学ぶものは何か。皆さんが学ぶ科目群は、学部、大学院、法科大学院、そして専門職大学院、それぞれの「教育課程の編成・実施方針」に従って配置されています。その方針に共通して貫かれている根幹は、自然科学、社会科学、そして人文科学、それぞれの分野における基礎から高度の専門性に対応した、「科学の眼」を養うことです。

科学は、真理を探究する論理に矛盾のないこと、首尾一貫していることを厳しく要求します。問題とされる課題の何が原因で、何が結果なのかを分析する科学的方法として、まず、ある一定の因果関係を論理的に想定した仮説を立てます。つぎに、それを実証的に検証し、その結果と仮説との間に矛盾がないかどうか、を確かめます。もし、仮説と実証結果との間に不一致がみられるならば、仮説の修正と実証方法の検討を粘り強く繰り返して、仮説の精度を高めていきます。その成果として学問の世界に定着したもののみが、学術的知見や理論として生き残るのです。

これまでの学術研究の歴史を通じて営まれた、これらの膨大な作業の集大成が、皆さんの前にそれぞれの科学分野の体系として示されています。「科学の眼」をもつことは、その術を学ぶこと、そしてそれを応用して、科学的課題の解明に貢献することを意味します。
皆さんが大学で学ぶものは、まさにこのことなのです。端的に言えば、「科学の眼」、「科学のまなざし」を養うために、じっくりと深くものごとを考える力を鍛え、養うことであります。大学は本来、この「眼」を涵養する場として存在しています。めまぐるしく移り変わる時流に乗るのではなく、ものごとの本質を鋭く見極め、問題の所在を適確に把握して、解決の方法を自分自身の言葉で提案できるようになることが、皆さんに求められます。

思いを自らの言葉にすること、これは、考えることに他なりません。ある整った思いにたどり着くには、深く考え抜くことが必要です。さらにその思いを正確な言葉で表すために、相応しい言葉を探す作業が必要となります。しかし、自分自身の中に豊かな言葉の蓄積がなければ、自らの思いを正確に表現することは困難です。皆さんが文章を綴る時、もどかしさを感じるのは、この事態に直面していることを意味しています。

ものごとを深く、じっくりと考える訓練を繰り返すことを通じて、目先の鮮やかさにとらわれない、心深くから生み出される思いを豊かに表現する力が養われます。そしてその力は、斬新なアイディアや概念を創出する素地となるとともに、新たな思想にまで、発展する可能性を秘めています。
また、自分自身で考える習慣を体得することで、自身とは異なる切り口を持った他者の考えに出会った時、新鮮な知的感動や興奮を体験できます。それと同時に、他者の思考の斬新さや鋭さに、心の底から敬意を抱くことにつながります。深く考えることは、学びへの謙虚さを学ぶことでもあります。

今日ここに、入学式を迎えた皆さんは、基本的人権の尊重と自立した個人の確立を謳う、「権利自由」「独立自治」の建学の精神のもと、本学が豊富に用意する多様な学びの場に分け入り、大いに学び、積極的に知的関心を追求してください。知の宝庫である本学での真理探究の過程を通じて培う「科学の眼」は、次代を切り拓くための「未来開拓力」の原動力となります。
世界は、次代を担う皆さんの柔軟な発想と行動力を求めています。平和で豊かな社会を、そして、皆さんのあとに続く世代が、明るい未来を展望できる社会の構築に向けて、本日ここに集った多くの仲間とともに、新たなる一歩を踏み出してください。

われわれ教職員は全力で、皆さんを支援して参ります。実り多い成果を期待します。入学おめでとう。
 

2015年4月7日

学 長  福 宮 賢 一