卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
これまで、ご子女の勉学を温かく支えてこられたご父母ならびにご関係の皆様、本日、学業の区切りを迎えられ、お慶びさぞかしのことと存じます。心からお祝いを申し上げます。
卒業生の皆さんは、学部、大学院、法科大学院、専門職大学院の各課程を修了し、新たな進路へ向かう日を迎えました。在学期間を通じて豊富に用意された思索の場に分け入り、研鑽を重ねた成果として、各人それぞれに新しい可能性と未来を見いだしたことと思います。
入学して間もない頃を思い起こせば、それまでとは異なる、世界の広がりを目の前にして、躊躇や逡巡を覚えたことが懐かしく思われることでしょう。
しかし、戸惑いからの一歩がたとえ小さな一歩であったとしても、皆さんは、それを踏み出すことによって次の一歩が容易になることを知り、ひたむきに歩み続けて今日に至りました。努力の継続が生み出す成果の大切さを、今まさに実感しているに違いありません。これまでの本学での学びは、主体的に考え、判断し、そして行動する力を飛躍的に高めたはずです。
本学で学んだことを端的に言い表せば、「科学の眼」と「『人』としての眼」を涵養することであったといえます。自然科学、社会科学、そして人文科学、それぞれの分野において、目の前に展開する現象や事象をとらえ、そこに内在する課題を発見し、分析し、解決策を導くまでの科学的方法を学びました。そして、この地道な検証作業を繰り返すことによってのみ、科学的根拠を伴う真理が得られることを知り、ものごとの本質を見極める力が培われたのです。さらに分野を超えて広く学ぶことで、科学のまなざしとともに、一人の「個」として、「人」としてのまなざしをもち、文化や人間のふるまいを深く見つめることも学んできました。
明日から、皆さんは再び新たな世界に身を投じます。活躍の場は各々異なっていても、明治大学で修めた高等教育の成果は、皆さんの内なる核として、生涯にわたって人生を強く支えることは確実です。苦難に直面した時こそ、その心に宿った想いが、未来を描き出す推進力となるはずです。そしてその内面的支柱は、今後の人間的成長に大きな役割を果たすとともに、グローバル化社会をしなやかにたくましく生き抜くための拠り所になると信じます。
皆さんがこれから向き合う現代社会は、グローバル化の急速な進展とその普遍化のさなかにあります。そしてそれは、国際社会の相互依存関係をこれまで以上に緊密化させ、経済成長や経済発展の促進という可能性に一筋の光明をもたらしています。しかしながら同時に、貧困、経済摩擦、世界経済の不安定化、富の偏在など、経済問題を一層複雑で困難なものとするとともに、内戦、テロ、国際紛争、難民問題、ナショナリズムの台頭など、政治的課題の深刻化を誘発し、容赦なくその暗い影を投げかけています。
グローバル化社会は、実に荒々しい姿でそこに存在しています。第二次大戦後、70年を経過しても、今なお地上に紛争が絶えたことはありません。他方、人類の英知は、生命科学や宇宙物理学に象徴される科学の目覚ましい進歩をもたらしています。しかしながら、武力や軍事力の行使を抑止し、紛争の常態化を避けることにおいて、英知が優れた力を発揮しているとはいえません。
我々には人類の足跡である歴史を振り返り、それが示唆する原理を学ぶことを通じて、よりよい未来を作り上げていく責務があります。それにもかかわらず、なぜ我々は同じ過ちを繰り返してしまうのでしょうか。そして混迷を深める現実に対し、皆さんは何を思うでしょうか。この極端な英知の落差が存在することに、言葉を失いますが、あらためて、わたくしたちは、現代の文明とは何であるのか、問い直す必要に迫られていると考えます。
卒業生の皆さん、解を求められる問題の大きさにたじろいではなりません。皆さんは明治大学において、「科学の眼」、すなわち論理的思考力と、「『人』としての眼」、すなわち人間愛を理解する力とを備えた人材となるため、修練を重ねてきました。
明日からの進路において、これらの「まなざし」をもって、それぞれが担う社会的役割を一つ一つ確実に果たしていくことが、平和で豊かな社会の構築につながるのです。一人一人の力がわずかなものであったとしても、刻苦を厭わず、長期間、粘り強く継続することによって、社会を、そしてやがて世界を動かす大きな力となるはずです。
それは、我が国の未来のために、留まることなく激動の時代に立ち向かった3名の創立者の歩みと同じ軌跡を意味します。彼らの「青雲の志」は、135年の時を経てもなお色褪せることなく、激動の社会に飛び込む皆さんに受け継がれているのです。明治らしい先取の気概を持って力強い一歩を踏み出してください。輝く未来を導く望みは、次代を担う皆さんの優れた未来開拓力に託されています。奮闘を期待します。
卒業生の皆さんの前途に幸多いことを祈ります。卒業、おめでとう。
これまで、ご子女の勉学を温かく支えてこられたご父母ならびにご関係の皆様、本日、学業の区切りを迎えられ、お慶びさぞかしのことと存じます。心からお祝いを申し上げます。
卒業生の皆さんは、学部、大学院、法科大学院、専門職大学院の各課程を修了し、新たな進路へ向かう日を迎えました。在学期間を通じて豊富に用意された思索の場に分け入り、研鑽を重ねた成果として、各人それぞれに新しい可能性と未来を見いだしたことと思います。
入学して間もない頃を思い起こせば、それまでとは異なる、世界の広がりを目の前にして、躊躇や逡巡を覚えたことが懐かしく思われることでしょう。
しかし、戸惑いからの一歩がたとえ小さな一歩であったとしても、皆さんは、それを踏み出すことによって次の一歩が容易になることを知り、ひたむきに歩み続けて今日に至りました。努力の継続が生み出す成果の大切さを、今まさに実感しているに違いありません。これまでの本学での学びは、主体的に考え、判断し、そして行動する力を飛躍的に高めたはずです。
本学で学んだことを端的に言い表せば、「科学の眼」と「『人』としての眼」を涵養することであったといえます。自然科学、社会科学、そして人文科学、それぞれの分野において、目の前に展開する現象や事象をとらえ、そこに内在する課題を発見し、分析し、解決策を導くまでの科学的方法を学びました。そして、この地道な検証作業を繰り返すことによってのみ、科学的根拠を伴う真理が得られることを知り、ものごとの本質を見極める力が培われたのです。さらに分野を超えて広く学ぶことで、科学のまなざしとともに、一人の「個」として、「人」としてのまなざしをもち、文化や人間のふるまいを深く見つめることも学んできました。
明日から、皆さんは再び新たな世界に身を投じます。活躍の場は各々異なっていても、明治大学で修めた高等教育の成果は、皆さんの内なる核として、生涯にわたって人生を強く支えることは確実です。苦難に直面した時こそ、その心に宿った想いが、未来を描き出す推進力となるはずです。そしてその内面的支柱は、今後の人間的成長に大きな役割を果たすとともに、グローバル化社会をしなやかにたくましく生き抜くための拠り所になると信じます。
皆さんがこれから向き合う現代社会は、グローバル化の急速な進展とその普遍化のさなかにあります。そしてそれは、国際社会の相互依存関係をこれまで以上に緊密化させ、経済成長や経済発展の促進という可能性に一筋の光明をもたらしています。しかしながら同時に、貧困、経済摩擦、世界経済の不安定化、富の偏在など、経済問題を一層複雑で困難なものとするとともに、内戦、テロ、国際紛争、難民問題、ナショナリズムの台頭など、政治的課題の深刻化を誘発し、容赦なくその暗い影を投げかけています。
グローバル化社会は、実に荒々しい姿でそこに存在しています。第二次大戦後、70年を経過しても、今なお地上に紛争が絶えたことはありません。他方、人類の英知は、生命科学や宇宙物理学に象徴される科学の目覚ましい進歩をもたらしています。しかしながら、武力や軍事力の行使を抑止し、紛争の常態化を避けることにおいて、英知が優れた力を発揮しているとはいえません。
我々には人類の足跡である歴史を振り返り、それが示唆する原理を学ぶことを通じて、よりよい未来を作り上げていく責務があります。それにもかかわらず、なぜ我々は同じ過ちを繰り返してしまうのでしょうか。そして混迷を深める現実に対し、皆さんは何を思うでしょうか。この極端な英知の落差が存在することに、言葉を失いますが、あらためて、わたくしたちは、現代の文明とは何であるのか、問い直す必要に迫られていると考えます。
卒業生の皆さん、解を求められる問題の大きさにたじろいではなりません。皆さんは明治大学において、「科学の眼」、すなわち論理的思考力と、「『人』としての眼」、すなわち人間愛を理解する力とを備えた人材となるため、修練を重ねてきました。
明日からの進路において、これらの「まなざし」をもって、それぞれが担う社会的役割を一つ一つ確実に果たしていくことが、平和で豊かな社会の構築につながるのです。一人一人の力がわずかなものであったとしても、刻苦を厭わず、長期間、粘り強く継続することによって、社会を、そしてやがて世界を動かす大きな力となるはずです。
それは、我が国の未来のために、留まることなく激動の時代に立ち向かった3名の創立者の歩みと同じ軌跡を意味します。彼らの「青雲の志」は、135年の時を経てもなお色褪せることなく、激動の社会に飛び込む皆さんに受け継がれているのです。明治らしい先取の気概を持って力強い一歩を踏み出してください。輝く未来を導く望みは、次代を担う皆さんの優れた未来開拓力に託されています。奮闘を期待します。
卒業生の皆さんの前途に幸多いことを祈ります。卒業、おめでとう。
2016年3月26日
学 長 福 宮 賢 一