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学長室

法制研究所パンフレット 学長挨拶 「『権利自由、独立自治』の担い手に」

2024年04月04日
明治大学 学長室

 明治大学は、143年前に創立された法律学校にその歴史を発します。江戸時代が終わってほんの10数年しか経っていない1881年です。この時期に、「権利自由、独立自治」を旗印に私立の法律学校を立ち上げた20代の3人の創立者達の心意気の高さを想像してみてください。その心意気の中には、明治維新後もなお権利自由も、独立自治も不十分であり、これからそれを追求していかなければならないという使命感があったんだろうと私は思っています。さて、それから143年が経過した現在、日本の、そして世界の「権利自由、独立自治」は既に実現され、完成されたでしょうか。否です。この間、今に至るまで非常に多くの粘り強い努力や悲惨な犠牲がありましたが、依然として実現できていません。しかし、放棄することはできません。人間社会が存する限り、日本国憲法がいうように「不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(12条)のです。明治大学も創立以来、この「権利自由、独立自治」を建学の精神として営々と引き継ぎ、それを実現すべく、存在しています。

 明治大学は、これを「個人の権利や自由を認め、学問の独立を基礎として自律の精神を養う重要性を示したもの」と理解していますが、これは、権利自由の自律的な主体である一人ひとり、つまり多様な「個」の尊重と不可分の関係に立ちます。その中で、明治大学は、例えば、女性が法曹界から排除されていた時代に、女性に門戸を開き、日本初の女性弁護士となった久米愛、三淵嘉子(日本初の女性裁判所長)、中田正子を輩出しました。
皆さんにも、それぞれが日本や世界の現状を知る一人の大人として、そして、明治大学の学生、卒業生として「権利自由、独立自治」の実現、多様な「個」の尊重に向けて、それぞれの場で活躍をしていただきたいと願っています。

 さて、法曹です。裁判官、検察官、弁護士は、「権利自由、独立自治」の実現、多様な「個」の尊重に向けて、端的にコミットできる職業だと思います。私自身の裁判官、弁護士の経験からしても、具体的な事件、具体的な人に直接関わるということは、自分の主体的な活動の結果が良くも悪くも直ちに現れることであり、非常に遣り甲斐を感じられる、そして刺激的なことだと実感しています。是非、まずは、興味を持っていただきたいと思っています。

 明治大学では、法曹を志望する学生、卒業生を支援するために、法制研究所という大学直属の教育機関を設置しています。ここでは、法学部の教員や現役の弁護士達が中心となって、全学部の学生を対象に、合理的なスケジュールの下で、親身な指導が行われ、毎年多くの司法試験、司法試験予備試験、法科大学院入学試験の合格者を輩出しています。
 法曹に興味を持ったら、半世紀前の私のように、是非、法制研究所の戸を叩いてみてください。それが、皆さんの人生が変わり、社会が変わるきっかけになるかも知れません。
 皆さんの人生に、皆さんが生きる将来の社会に、幸多かれ。