キック泳では泳ぐスピードの違いで足部周りの渦の構造が変化する
2025年02月05日
明治大学
キック泳では泳ぐスピードの違いで足部周りの渦の構造が変化する
学校法人明治大学
国立大学法人筑波大学
学校法人新潟総合学園新潟医療福祉大学
国立大学法人筑波大学
学校法人新潟総合学園新潟医療福祉大学
水中ドルフィンキック動作において前進するスピードを増大させていくと、泳者の足部周りに生成される渦の構造が変化することを発見しました。特に、2つの渦によって誘発されるジェット流の向きが、より鉛直下向きへと変化しており、これが身体を前進させることに貢献していると考えられます。
ヒトがキック泳で水中を進む際には、足の周りに渦が生成され、それが身体を前に進めるための力となります。しかしながら、泳ぐスピードが異なる場合、足の周りに生成される渦の構造がどのように変化しているのかはこれまで不明でした。そこで本研究では、スイマーの動作を光学式モーションキャプチャシステムを用いて分析するとともに、水の流れの変化を可視化するための粒子画像流速計測法により、泳ぐスピードの変化に伴う渦の構造の変化を調べました。 その結果、水中ドルフィンキックの下肢動作において、泳ぐスピードが上がるにつれて蹴り下ろし動作から蹴り上げ動作に移行する局面の渦の構造が変化していることが分かりました。具体的には、泳ぐスピードが上がるにつれて、足の周りに生成される2つの渦の間に生じるジェット流の向きがより鉛直下向きへと変化しました。この変化は、蹴り上げ動作で身体を前に進めることに貢献していると考えられます。 本研究は、キック泳中の泳ぐスピードを変化させた際の渦の構造の変化を観察した初めての研究であり、指導者や選手が水中ドルフィンキックの技術を改善する上での科学的根拠を提供することに加え、ヒトが水中を進むメカニズムの解明につながると期待されます。 |
研究代表者
角川 隆明 助教
新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科
下門 洋文 准教授
明治大学理工学部機械工学科
榊原 潤 教授
研究の背景
研究内容と成果
その結果、泳ぐスピードを上げると、足の周りに生成される渦の回転の強さが大きくなることが分かりました。また、脚を蹴り下ろす動作から蹴り上げる動作に移行する局面で観察された渦の構造に変化が見られ、泳ぐスピードの増大に伴って、足の周りに生成される2つの渦の間に生じるジェット流注1)の向きがより鉛直下向きへと変化しました。さらに、スピードを上げると、脚を蹴り上げる中盤の局面で、脚の周りに生成された渦を再利用することにより生成する、身体を前に進める方向への水の流れが観察されました。渦やジェット流は水の運動量の変化を反映しており、身体が水からどのような力を受けたかを理解するヒントになります。本研究で観察された渦構造の変化は、蹴り上げ動作で身体を前に進めることに貢献している可能性が示されました(参考図)。
以上のことから、蹴り下ろし動作と蹴り上げ動作を繰り返す周期運動である水中ドルフィンキックにおいて、前進するスピードを高めるためには、脚を動かすスピードだけでなく、蹴り下ろし動作から蹴り上げ動作への素早い切り返しに重きを置いたトレーニングが重要であることが明らかになりました。
今後の展開
参考図

用語解説
回転方向の異なる2つの渦(渦対)によって誘発される強い流れ。渦やジェット流は水の流れの変化、つまり運動量の変化を反映しているため、流体力学分野においては着目すべき変数として扱われている。
注2) スカーリング動作(sculling motion)
手を左右方向に連続的に動かして水をかく動作。アーティスティックスイミングや水球競技において、身体を浮かせるための技術として使われている。
研究資金
掲載論文
題名
(ヒトの水中うねり泳における泳速度の変化に伴う渦構造の変化)
著者名
掲載誌
掲載日
DOI
- お問い合わせ先
-
研究内容に関するお問い合わせ
角川 隆明(つのかわ たかあき)
筑波大学体育系/ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP) 助教
TEL: 029-853-2643
E-mail: tsunokawa.takaaki.ke@u.tsukuba.ac.jp
URL: https://www.arihhp.taiiku.tsukuba.ac.jp/member/#p-25 -
取材に関するお問い合わせ
明治大学 経営企画部 広報課
TEL:03-3296-4082
MAIL:koho@mics.meiji.ac.jp
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