高CO2環境でイネを増収させる「コシヒカリ」由来の遺伝子を発見 —気候変動下での持続可能な稲作に貢献— 明治大学大学院 農学研究科の山本 英司特任講師はゲノム解析で貢献
2023年03月31日
明治大学
高CO2環境でイネを増収させる「コシヒカリ」由来の遺伝子を発見
—気候変動下での持続可能な稲作に貢献—
明治大学大学院 農学研究科の山本 英司特任講師はゲノム解析で貢献
ポイント
- イネの穂数を増加させる新規遺伝子MP3(MORE PANICLES 3)を「コシヒカリ」から初めて同定
- 本遺伝子を導入したインディカイネ1)は高CO2条件下で元品種より多収となることを確認
- 大気中のCO2濃度上昇が続く気候変動下で国内外の稲作の安定・多収への貢献が期待
概要
本研究の成果は、国際科学専門誌「The Plant Journal」オンライン版(日本時間2023年3月28日)に掲載されました。
関連情報
発表論文
<論文著者>
<論文タイトル>
<雑誌>
DOI : https://doi.org/10.1111/tpj.16143
問い合わせ先など
国際農研(茨城県つくば市)
研究推進責任者
国際農研 プログラムディレクター 中島 一雄
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研究担当者
国際農研 生産環境・畜産領域
髙井 俊之
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髙井 俊之
国際農研 生産環境・畜産領域
辻本 泰弘
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広報担当者
国際農研 情報広報室長 大森 圭祐
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Tel:029-838-6708
Fax:029-838-6337
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プレス用 e-mail:koho-jircas@ml.affrc.go.jp
農研機構
研究担当者
農研機構 農業環境研究部門 長谷川 利拡
農研機構 作物研究部門 谷口 洋二郎
農研機構 作物研究部門 宇賀 優作
農研機構 農業環境研究部門 長谷川 利拡
農研機構 作物研究部門 谷口 洋二郎
農研機構 作物研究部門 宇賀 優作
広報担当者
農研機構 農業環境研究部門 杉山 恵
農研機構 農業環境研究部門 杉山 恵
Tel:029-838-8191 又は 6979
Fax:029-838-8199
プレス用 e-mail:niaes_kouhou@ml.affrc.go.jp
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プレス用 e-mail:niaes_kouhou@ml.affrc.go.jp
農研機構 作物研究部門 宮尾 安藝雄
Tel:029-838-8563
Fax:029-838-7408
プレス用 e-mail:www-nics@naro.affrc.go.jp
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東海国立大学機構 名古屋大学生物機能開発利用研究センター横浜市立大学木原生物学研究所兼任
研究担当者
辻 寛之
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広報担当
東海国立大学機構 名古屋大学 広報室
Tel:052-789-3058
Fax: 052-789-2019
e-mail:nu_research@adm.nagoya-u.ac.jp
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広報担当者:横浜市立大学 広報課長 上村 一太郎
Tel:045-787-2414
Fax: 045-787-2048
e-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp
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理化学研究所
研究担当者
環境資源科学研究センター 持田 恵一
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広報担当
広報室 報道担当
Tel: 050-3495-0247
e-mail:ex-press@ml.riken.jp
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明治大学
研究担当者
大学院農学研究科 山本 英司
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広報担当者
経営企画部広報課
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Tel:03-3296-4082
e-mail:koho@mics.meiji.ac.jp
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かずさDNA研究所
研究担当者
植物DNA解析グループ 長崎 英樹
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広報担当者
広報・研究推進グループ 平岡 桐子
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Tel:0438-52-3930
科学技術振興機構
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国際部
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Fax : 03-5214-7379
e-mail:global@jst.go.jp
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広報担当
広報課
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Tel:03-5214-8404
Fax : 03-5214-8432
e-mail:jstkoho@jst.go.jp
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e-mail:jstkoho@jst.go.jp
国際協力機構
担当
経済開発部 農業・農村開発第二グループ
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Tel:03-5226-8426
e-mail:edga2@jica.go.jp
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開発の社会的背景
研究の経緯
研究の内容・意義
- マップベースクローニング4)という手法により、「コシヒカリ」の第3染色体上にあり、穂数を増加させる遺伝子MP3を同定しました。この遺伝子は、OsTB1/FC1という既知遺伝子のこれまでに報告されていない遺伝子型でした。OsTB1/FC1は穂の基となる腋芽で働き、腋芽の伸長を抑制する役割を担っていますが、「コシヒカリ」が持つMP3の遺伝子型は、インディカイネが持つ遺伝子型よりも、その抑制の程度が緩やかであることが分かりました。その結果、コシヒカリ型MP3の腋芽伸長は、生育初期から促され、穂数が増加することが分かりました(図1)。
- 日本の多収品種「タカナリ」が持つMP3の遺伝子型は、腋芽伸長の抑制程度が強いインディカ型MP3であることから、コシヒカリ型に入れ替えた「MP3置換タカナリ」を育成したところ、一穂籾数は「タカナリ」に比べて殆ど減少することなく穂数が20~30%増加し、総籾数が20%増加しました(図2)。
- コシヒカリ型MP3の働きにより、総籾数を増加させた「MP3置換タカナリ」の高CO2濃度での反応を評価するために、大気CO2濃度を現在よりも約200ppm高い約580ppmに増加させた水田環境(FACE5))で栽培した結果、同系統は「タカナリ」に比べて、玄米収量がヘクタールあたり8.1トンから8.6トンと約6%多収となることが分かりました(図3)。一方で、通常のCO2環境では、両者の収量に明確な差は見られませんでした。
今後の予定・期待
今回同定した「コシヒカリ」由来の遺伝子MP3を穂重型品種に導入することにより、穂重型の一穂籾数と穂数型の穂数を併せ持ち、大気CO2上昇を伴う気候変動に適した新しい草型の多収イネを開発することが可能となりました。MP3はイネの栽培化やインディカイネの育種過程で、これまで利用されていないことも確認されており、国内だけでなく、インディカイネが広く栽培されている世界の諸地域においても今後の活用が期待できます。
また、穂数増加に寄与するMP3は、腋芽の伸長が著しく抑制されるリン欠乏条件でのイネの生産性向上にも貢献する可能性が示されています。このことから、サブサハラアフリカなど、肥料や土壌からのリン供給が乏しい地域でのイネの生産性向上にもMP3の活用が期待できます。
用語の解説
- 1)インディカイネ
- 2)腋芽
- 3)ゲノム研究
- 4)マップベースクローニング
- 5)FACE

図1. インディカ型とコシヒカリ型MP3の腋芽伸長の様子
コシヒカリ型MP3を持つ品種は、幼苗の段階で腋芽の伸長がインディカ型MP3よりも
旺盛であることが分かります(図中○印)。

図2. MP3置換による穂数と一穂籾数の変化
MP3は、12本あるイネの染色体の3番目にあります。コシヒカリ型MP3を交配により「タカナリ」が持つインディカ型MP3と入れ替えると、一穂籾数は殆ど減少することなく穂数が増加することが分かります。
(A)イネの染色体イメージ図、 (B)各イネの一株当たりの穂数の写真、(C)各イネの一穂の写真。

図3. 高CO2環境でのMP3による増収効果
(A)水田の一部を正八角形のリングで覆い、リングに繋いだチューブからCO2を放出することで、外気よりも約200ppm(390ppm→580ppm)CO2濃度を高くした水田環境(FACE)です。実験場所は、茨城県つくばみらい市です。
(B)通常CO2区とFACE区で栽培した収量の比較。FACE区で「MP3置換タカナリ」が、「タカナリ」よりも約6%多収となることが分かります。
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