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鼎談:明治大学の新型コロナウイルス感染症への対応と『明治大学学生・教育活動緊急支援資金』について



緊急事態宣言解除後の5月26日、駿河台キャンパス・大学会館で 柳谷孝理事長、大六野耕作学長、北野大校友会長による鼎談が行われました。鼎談のテーマは、明治大学の新型コロナウイルス感染症対応のこれまでとこれから、そして、このほど新設された 『明治大学学生・教育活動緊急支援資金』 について。明治大学校友の皆様に向けたメッセージです。ぜひご一読ください。

取材時は、間隔を大きく空けて換気を十分にするなど、感染防止に最大限配慮した形で実施いたしました。

新型コロナウイルス感染症への対応と「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」の設立

——大六野学長にお伺いします。4月の就任以来、新型コロナウイルス感染症への対応にあたってどのようなお気持ちで取り組まれてきたのでしょうか。



大六野 学長就任以来、私の主たる校務は新型コロナウイルスの影響への対応です。大学は研究機関ですが、第一義的に人材を育てる教育機関であるという意識を強く持っています。そのような観点から、新型コロナウイルス感染拡大の状況の中で、いかに新入生を含む在学生の健康、安心、安全を保ちながら、質の高い教育をどのように提供していくかということが最大の目標となりました。学生の皆さんにとっては、突然に降りかかった災いだと感じ、なぜ自分達がこのような目に合わなければならないのかと、マイナス面からのスタートとなってしまったかもしれません。毎年猛威を振るうインフルエンザに対してはある程度の対応のノウハウはありますが、今回のような新たな感染症については、教職員も全く想定していませんでした。日本政府もそうでしたが、どのような対策を取ったとしても、誰もが満足できる答えはありません。その中で、学生や教職員の健康、安心、安全を第一として、第二に質の高い教育の提供を大学運営の軸としてぶれさせないということを柳谷理事長とお話しし、理解を得ながら今回の 「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」の設立に至りました。
 
もちろん修学の危機に瀕している学生への短期的な支援を速やかに行うとともに、同時にしばらく続くであろうコロナウイルスをはじめとした感染症や自然災害に対して、大学として常に対応できるレジリエンス(復元力、弾力性、強靭さ)を整備することが課題であると認識し、当ファンドの設立を決定しました。こういった提案はともすれば「良いアイデアだけどなかなか難しいね」とまとまらないことが多いのですが、柳谷理事長から「法人、教学が一体となってやりましょう」と心強いお返事をいただきました。おかげさまでスピード感のある決定ができたと思っています。

短期的な支援として5億円規模の緊急学生支援金と、今回設立した中長期的な視点で学生の学びを支えていくこのファンドを活用し、経済的な理由で修学が難しい状況にある学生への支援に着手しました。また、このような状況では唯一の授業提供手段となったオンライン授業の質の向上と持続にも尽力しています。これらに取り組んでいる間にもまだクリアできていない問題があり、それらに苦しむ学生が新たに発生しつつあります。これらの対応も一つひとつ解決していかなければいけません。日々現れる問題の中から、教育の質の維持のために必要な部分を抜き出して、理事会と相談し、できるだけ早く対応していくということが、学長として今、全力で取り組んでいることです。

過去を振り返りますと、1923年の関東大震災で本学の校舎は壊滅的な被害を受けた際に、教職員はもとより学生・校友が一致団結してその復旧・復興に当たりました。「同心協力」の精神が本学には深く根付いております。校友の皆様もそれぞれの生活の中で大変なご苦労をされていることと思いますが、この「同心協力」の精神で、学生・教職員・校友が一体となって明治大学というコミュニティを守っていくためにご支援いただきたいというのが私の考えであります。
——柳谷理事長にお伺いします。4月に発足した新理事会の取り組みについてお聞かせください。



柳谷 今回のコロナ禍における新理事会の役割は、第一に学生と教職員の健康と安全を守ること、また、その基盤となる大学業務の継続性を守ることでありました。具体的な対応として、まず緊急事態本部を立ち上げ、全学的な課題共有と対応策について協議を重ねました。その際、学長を中心とする教学の意向を法人が支援して一体となって対応していくことが最重要事項ですので、各担当の大学役職者や法人役員、教学と法人部門の事務職員の間で、細部にわたる調整を行っていただきました。緊急事態宣言に伴いまして、先生方には在宅研究やオンライン授業の準備への対応など大変ご苦心をされたことと思います。また、職員の皆様も、初めての在宅勤務ということでご苦労も多かったのではないでしょうか。幸い、事務系のメールシステムなどがクラウド型に更新されましたこともあり、オンライン会議や各種機能が実装されて、在宅勤務も織り交ぜて必要な業務を継続させることができました。

また、生活が困窮している学生に1人10万円、総額5億円の学生支援を理事会として決定し、5月15日より受付を開始いたしました。緊急に人手が必要でしたので、この業務に対応できる職員を駿河台キャンパスで募ったところ、なんと60人を超える方から申し出があり、部署間の垣根を越えた対応チームが編成されました。受け入れ部署もこの業務に対応するスキームを設計し、8人程が交代で勤務すれば業務が円滑に遂行できるような体制が整いました。コロナ渦におけるこうした教職員の皆様のご尽力に対しまして、心より御礼を申し上げますとともに、まだまだ課題山積でございますので、今後とも教育・研究活動に必要な諸施策に対し優先順位を見極めながら支援してまいる所存です。

さらに、大六野学長をはじめとする教学からのプランで、当面の対応に加えて、中長期的な対応として災害やウイルスで学生達の修学機会が奪われることのないように 「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」を設定することといたしました。

そして、このたび誠にありがたく心強いことに、校友会より2億円のご寄付をいただくことになりました。法人からの当初の5億円の供出と各年度での追加供出や、校友・教職員の皆様からのご寄付等により、今理事会の任期中に総額10億円を超えるファンドとする予定です。

早速本日、北野校友会長よりご寄付を賜りました。校友会の皆様に改めまして厚く御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
——北野校友会長にお伺いいたします。「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」に対して、校友会より2億円のご寄付に至った経緯をお聞かせください。



北野 校友会活動の目的は母校の支援ですが、それはとりもなおさず学生支援に尽きます。今回のコロナウイルスの問題だけでなく、自然災害対策なども含んだ長期的な視点でファンドをつくるというのは素晴らしいアイデアだと思っています。メディアで聞く限りでは今回のコロナウイルス対策としての学生支援はさまざまな大学が取り組んでおられますが、このような考え方は明治大学だけなのではないかと思います。柳谷理事長をはじめ、明治大学の皆様に敬意を表したいです。
 
このたび、校友会でこのファンドに少しでもお手伝いすることができたのは、当然これまでの校友の皆様のお力のおかげです。校友の皆様がきちんと活動してきて、いずれ、もし母校に何か起きた時にはお使いいただこうと貯めてきたものがこういった形で基金となり、それが母校に、特に学生支援に役立つこととなり大変喜ばしいことと考えております。
 
昨年7月に、校友会長に就任した際、最初に校友会の基金は何のために集めているのかと役員の皆様に質問しました。すると、明治大学の「いざという時」のためということでした。今がまさに「いざという時」、大変な時期ですので、学生の皆様の支援に役立てることができれば幸せだと思っています。
 
明治大学に限らずやはり日本は教育あっての国ですから、学生を支援するということは、彼らが社会に出て仕事をして、我々にも戻ってくることにつながるわけです。彼らの将来を支え、日本が豊かになると我々も豊かになると、良い意味で教育に投資すると考えても良いのではないかと思っております。

校友の皆様へ「明治はひとつ、同心協力」

——校友の皆様に向けてメッセージをお願いいたします。



北野 ご存知のとおり、明治大学は卒業して年月が経つほど愛校心が増してくるという珍しい大学です。我々も自分のことを勝手に「明治愛」や「明治馬鹿」などと言ったりしますけれども、自分に自信がなければ「馬鹿」と言えないわけです。

また、これまで全国の各支部で校友の皆様が本当にさまざまなことに取り組んできていただきました。その一環として今回このような事態に対して、従来以上にスピード感を持って母校の支援をお願いしたい。それは巡り巡って自分のためにもなるのだという意識でご協力いただければと思っております。



柳谷 2011年の東日本大震災の実体験に基づいて国土交通省の東北地方整備局がまとめたレポートの冒頭は「備えていたことしか、役には立たなかった。備えていただけでは、十分でなかった」というメッセージでありました。これまで人類は、さまざまな災害やウイルスとの戦いをイノベーションに変えることで繁栄してきましたが、それでも備えきれない領域は残ります。なぜならば、事前に発生を予測できないものの発生すれば甚大な被害を及ぼすリスク「Black Swan」(黒い白鳥)や、発生確率が高く大きな問題を引き起こすものの普段見逃されているリスク「Gray Rhino」(灰色のサイ)などの脅威が地球上には潜在しているからです。私達は、こうした備えきれないリスクの領域を学生達のために「最小化」していかなければなりません。今回、 「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」を立ち上げた目的は、そこにあります。

先ほども関東大震災のエピソードの紹介がありましたが、明治大学の前身、明治法律学校の設立の趣旨には「同心協力」という言葉があり、文字通り3人の設立者とそれを支援する人達が作りあげたのが、今日の明治大学であります。その明治から巣立つ学生達が、それぞれの大きな舞台に挑戦し、活躍することは、大学役職者、法人役員、そして校友の皆様の共通する願いでありましょう。

北野会長のもと、校友会の皆様は「明治はひとつ」とおっしゃっていただいておりますが、このような災害やウイルスによって学生達の修学機会が奪われないよう校友会が一つになって現役学生をご支援いただいておりますことは、本学にとりまして誠に心強いものがございます。校友の皆様方には今後とも、学生達が安心して学び続けていけるよう、このたびの 「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」の趣旨にご賛同をいただき、どうか心温まるご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。



大六野 時代がグローバル化した結果、「個人の優先が第一」という時代になってきたように感じています。私としては、このような現代において、今一度「同心協力」の精神を大学運営の柱とし、この普遍的な理念を全国・全世界に広げていきたいと考えております。これからもより一層ご支援いただければと思います。よろしくお願いいたします。
柳谷 この精神は、本学に限らず実は世界のトップユニバーシティにおいても見て取れます。例えばハーバード大学で女性初の学長となったドリュー・ファウスト氏は、卒業生や学生達に常々「互いが競い合うのではない。つながるのだ」というメッセージを出し続けていました。世界に開かれた大学、世界に発信する大学を目指す本学としては、「同心協力」から始まったその精神を「明治はひとつ」へと清冽な地下水のように脈々と受け継いでいくことが一層重要なものとなることでしょう。
北野 改めて「同心協力」という言葉がこういった時代にこそ素晴らしい言葉だと思いました。「明治はひとつ、同心協力」とふたつ続けてみるのはどうでしょうか。これまで校友会では、さまざまな支援を行ってきましたが、どちらかといえば建物などハード面での支援が多かったと思います。今回のファンドへの支援はソフトそのものの支援ですので、ひとつの新しい形になるのではないかと思っております。
理事長 柳谷 孝
1975年明治大学商学部卒業。1975年野村證券㈱(現:野村ホールディングス㈱)入社。1997年同社取締役、2002年同社代表取締役専務取締役。2006年同社代表執行役副社長、2008年同社副会長など歴任。昭和産業㈱社外取締役などを務める。2016年5月より現職

学長 大六野 耕作
1977年明治大学法学部卒業、1982年同大学院政治経済学研究科博士課程単位修得退学。1982年明治大学政治経済学部助手、1995年同教授。政治経済学部長、副学長(国際交流担当)など歴任。2020年4月より現職。専門分野「比較政治論」

校友会長 北野 大
1965年明治大学工学部卒業。1972年東京都立大学大学院博士課程修了。2006年から2013年まで理工学部教授。現在、秋草学園短期大学学長。2019年7月より現職

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