Go Forward

合格者体験談(2017年度)

2016年3月修了 I.T

筆者略歴
2014年明治大学法学部法律学科卒業
2016年明治大学法科大学院修了(既修)
2016年1回目の受験 短答合格,論文で落第
2017年2回目の受験 最終合格
選択科目:国際公法

1,序

この手の合格体験記は,うまくいった勉強方法について書かれることが多い。しかし,読者にとっては,必ずしも教訓性が高いとは限らない。その反面,人の失敗談については教訓性が高いのではないだろうか。
私は,略歴記載のとおり,1回目の受験で落第し,2回目に登第することができた受験生である。こうして振り返ると,多くの失敗をしてきた(恥の多い生涯を送って来ました)。これらの失敗を述べることで,読者の皆さんに資するところがあれば幸いである。

2,学部生時代から変わり者

私は,大学入学前から法律家になるという強い希望をもっていた。それにもかかわらず,学部では,司法試験に特化した勉強は一切してこなかった。法史学はじめ教養系の勉強が多かったように思う。法科大学院でやればよいと考えていた。司法試験を考えているならば,法制研の授業を受けるなど早期に対策を始めた方がよかったかもしれない。善は急げ,である。

3,法科大学院での孤立 ~連盟よさらば!遂に協力の方途尽く~

いくつか法科大学院には受かっていたが,経済的な事情,そして師匠が教鞭をとっているということを理由に明治大学法科大学院に進学した。そのまま持ち上がった形なので,法科大学院生活も要領よくいけるかと思いや,どういうわけか私は周りから浮いていたようだ。否,むしろ周りが沈んでいるのだと考えるようになり,孤立を深めた。
学内の定期考査はもちろん,司法試験に向けた勉強も情報戦であるから,法科大学院内の交流は,不即不離の関係を維持すべきであった。このせいで,私は,自主ゼミ等を組みことは基本的になかった。
それでも,私のことを気にかけてくれた人はいた。とりわけ,国際法クラスの謎の結束に私は救われたところが大きい。ここで御礼申し上げる。
学習を効果的に進めるためにも,まずは自分の居場所を作るということは大切だと思う。

4,「基本」の意味

司法試験は,基本的なことを理解していれば受かる試験であると言われる。ここで勘違いしがちであるが,「基本=ちょろい」ということでは決してない。例えば,行政法でよく言われる法の一般原則は,いかにも当たり前のことを言っているだけのようであるが,具体的場面でどのように用いられるのだろうか。そしてそれを答案化するとしたらどのように書くべきか。基本は,決してちょろい問題ではない(大事なことなので2度言いました)。

5,敗戦

結局のところ,基本をちょろいことだと勘違いしていたことが敗因である。知識があってもなくても,書き方が分からなければ,それは無用の長物である。1回目の受験では,書き方の作法について,あまりにも無知すぎた。
書き方について,法制研で出している合格者再現答案は非常に参考になった。敗戦後,直ちに取り組んだのは,合格者再現答案で段落ごとに何を言っているのかメモし,ラインを引くなどして解答者の意図を分析するというものである。とくに,複数の人の答案を同じ問題について読み比べる作業は有益であったと思う。なぜならば,皆が書く内容と,そうでもない内容を見分けることができ,試験当日の環境でどういうことを書くべき効率的に学べるからである。もちろん,市販の合格答案集のようなものでも参考になると思う。

6,再戦 廃墟からの復活

落第直後は,やる気が起きなかった。とくにアウトプットの時間をとることができなかった。こうした中,とりあえず机に向かう。とりあえず合格答案集を読むなどできることから回復し,学習ペースの復活に努めた。気持ちの切り替えは非常に重要だと思う。

7,短答式の慢心

私は,短答式のテストは比較的得意のようである。1回目の受験の時も比較的高い得点で短答式試験には合格していた。だから2回目の試験のときは,なんとかなるだろうと考えていた。実際には,2回目の試験の短答式の点数はかなり下がってしまっていたので,焦った。
やはり,司法試験の中心は,論文式試験であるが,短答式の合格を得なければ,採点もしてもらえない。その意味では,平素から短答式も一定の時間を割くべきである。
ちなみに,私は,自宅から大学までの距離がかなり遠く電車の時間が長いので,iPadを用いて過去問を解くサービス(TKC提供の修了生向けのサービス)を利用することが多かった。

8,失敗ノートを作る

これまでの数々の失敗について,私は「失敗ノート」を携帯しまとめてきた。指名されて誤答したことなど様々なことが書かれている。これは,門外不出の秘書にして,初心を忘れないために残してある。法科大学院や学部ゼミ形式の授業では間違いを恐れず,発言し,恥ずかしがらずに質問をしてほしい。失敗したとしても,それが一番知識定着には役に立つと思うからだ。

9,必勝の信念を持つ

1回目の受験の敗戦後,精神的に不安定になった。このまま受からなければ自分の将来はどうなるのか,家族はどんな顔をするだろうかと取るに足らない小さなことを考えるとき,弱い自分がいた。
しかし,合格した暁には,国家のため,社会のためにどのような働きができるだろうかと,大きなことを考えるとき,強い自分がいた。今から思えば,1回目のときは,強い自分を保つという意味で必勝の信念が足りなかった。必ず勝つとの信念をもって臨めば司法試験など鎧袖一触である。
恥を忍んで,私の失敗の数々を述べてきた。ぜひとも私を反面教師として,同じ轍を踏まないようにお願い申し上げる。

以上