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合格者体験談(2018年度)

2016年3月修了 E.D

合格体験記 私の司法試験合格法

明治大学法科大学院未修者コース2016年修了

3回目で合格

第1.はじめに
 

 私は、大学3年生のとき、困っている人の役に立つ仕事がしたいと考え、検察官を志して明治大学法科大学院未修コースに入学しました。しかし、大学では法学部でなかったことから、ロースクールに入るまでほとんど法律を勉強しておらず、最初はかなり苦労しました。それまでは、判例百選もまともに手に取ったことがなく、民法の講義でも「署名代理ってなに?」というような状態でした。法律の勉強は、特に私のような法律になじみのなかった者からすると、道に迷いこんでしまうことが多いものだと思います。ここでは、これから受験される皆さん、特に未修コースの方の参考になるよう、私のとった勉強法やその反省を紹介したいと思います。

第2.勉強方法

1.短答式試験

 短答式試験の勉強は、とにかく早期に始めることが大切です。私は、基本的に三科目とも過去問演習のみを行っていました。具体的には、辰已の過去問パーフェクトを一日20~40問ずつ解き、間違えた問題や分からなかった選択肢は、解説を読みながら必要に応じて六法や基本書等に戻り、確認するということを繰り返していました。この勉強法の短所は、とにかく時間がかかるということです。特に、やり始めの段階では20問をやり切るだけで一日の勉強時間が終わってしまうというようなこともしばしばありました。しかし、短答式試験では法律や判例の基本的知識が幅広く問われ、その範囲は膨大といえます。そのため、地道な勉強をできるだけ早い段階から開始することが重要だと考えます。もっとも、私は最初、過去問をその正答率に関わりなく解いていましたが、受験期後半は正答率の高いものをより優先的に解くことで、効率よく過去問を回すことができました。
 受験生の間では、論文式試験に比重を置きすぎて短答式試験に時間を割かない人も少なくありません。しかし、短答式試験対策は論文式試験で問われている基本的知識を習得するための勉強としても最適です。特に、民法と刑法の短答と論文の成績は相関関係があるといえます。論文式試験で実際に書くことを意識しながら短答の勉強をすると、より効率が上がると思います。
 また、短答式試験は試験の最終日に行われます。その日は連日の論文式試験で疲れ切った状態で受験するので、その状態でも正確に解答できるよう、知識の精度をある程度高めておく必要があります。

2.論文式試験

(1)司法試験、予備試験及び旧司法試験の過去問演習
 論文式試験では、高度な法律問題について、初見の状態で、しかも限られた時間内で、それなりのレベルの答案を仕上げることが求められます。それも8科目全てで、です(失敗が許されないわけではありません)。そのためには、司法試験、予備試験及び旧司法試験の過去問の演習と出題趣旨・採点実感の分析が不可欠だと思います。なぜなら、これらは司法試験委員が受験生に対して唯一公式に提供している文書だからです。これらの演習・分析では、その問題で試験委員が最も聞きたい事項は何か、受験生の大半が解答できる問題とそうでない問題の区別を意識していました。また、論文式試験では法律文書としての文章力も重要です。そのため、条文の条項や文言を指摘しているか、法的三段論法をきちんと示しているか、事実の適示が適切かなども意識しながら行っていました。特に、事実の適示は問題文の事実を正確に引用しなければならず、自分で要約や言い換えなどをしないよう気をつけました。
 旧司法試験の過去問は、H14年以降のものに絞って演習しました。教材は辰已のえんしゅう本を利用しました。旧司法試験は法律の基本事項を問うものが多く、現行試験のように問題文も長くないため、勉強の初期段階から利用することも非常に有用だと思います。私は、ロースクール1年時では、論文の知識がある程度つくまでは論文問題の演習はまだ早いと考え、過去問を含めてほとんど演習をしませんでした。しかし、法律の勉強はインプットとアウトプットの繰り返しが必要です。初期段階のアウトプットとして旧司法試験を利用しておくべきであったと、今では考えています。

(2)自主ゼミ
 私は、主に論文式試験対策として、友人と自主ゼミを組んでいました。論文式試験では上記のように文章力も重要であるため、客観的に自分の答案を評価してくれる仲間の意見や、仲間の作った答案を参考にして答案をブラッシュアップしていく過程はとても重要であると思います。

(3)予備校・指導ゼミ
 予備校の答練や全国模試も利用していました。答練は合格者や予備校講師等による採点で、改善点を的確に指摘してもらえるため、非常に有用だと思います。また、全国模試は本試験と同じ会場で行われるため本試験のデモンストレーションとして最適なだけでなく、試験結果からその時点における受験生の中での自分の立ち位置を把握することができます。予備校や全国模試は金銭的に決して安くはありませんが、得るものも大きいので受講することをお勧めします。
 また、明治大学法務研究所では、指導ゼミも行われています。そこでは弁護士講師等による添削と指導が受けられるので、定期的に自分の疑問を質問できる機会として利用できました。

第3.その他

 まず、司法試験は長丁場の試験であるので、心身の健康を保つことも重要な試験対策です。疲れて勉強が手につかない時には一度休んで、何もしない時間を作ったり、友人と飲みに行く等の時間を作ることも大切です。
教材について、最近は基本書もレイアウト等が読者にわかりやすく工夫されており、また予備校本の質もかなり高いものが多いです。多くの受験生が使っている本ほど定評があると考えて良いですが、その中から自分に合うものを選んで使用すればいいと思います。
 最後に、当日の意識について、私は、自分にわからない問題は他人もわからないはずだと考えるようにして、そのような問題には時間をかけず、基本的な問題にこそ時間と紙幅を割くことに専念していました。本試験では、誰にもわからないような問題がたびたび出題されますが、司法試験は相対評価ですから、そのような問題でしっかりと解答する必要はありません。基本的な知識のみ正確に論証し、法的三段論法で簡潔にあてはめをして、次の設問に取りかかればいいと思います。

第4.おわりに

 司法試験は国家試験最難関の試験ですから、合格は容易ではありません。しかし、合格ができない試験でもありません。最後の最後まであきらめず、試験問題、答案用紙そして司法試験用六法にかじりついて、試験を受けきることが大切です。必ず合格できます。頑張ってください。

以上

2017年3月修了 S.Y

1.経歴

 2011年 山梨県立市川高等学校英語科卒業
 2015年 成蹊大学法学部法律学科卒業
 2017年 明治大学法科大学院(既修)修了
 司法試験受験回数2回

2.はじめに

 今回は、昨年不合格になってから、今年合格するまでの勉強への取組み方法の変化について振返りたいと思います。
 なお、以下では一般的なことしか記していないつもりですが、合格体験記はあくまで「その合格者」にとって、今回は「私」にとって良かった勉強法が記載されているだけなので、過度に一般化しないでください。

3.短答について

 私は、昨年の短答試験は111点と非常に低い点数しか取れませんでした。これは単純に取組み始める時期が遅かったこと、過去問を回す回数が少なかったことが理由であると考えたので、今年は10月から短答に着手し、過去問の各問題を三回以上は回しました。
 短答は単に機械的に繰り返すだけでは、問題と答えを覚えるだけになってしまいます。多くの合格者が言うように、頭を使って解かなくてはいけません。私は、一周目はとりあえず読むだけで、肢ごとに正誤を確認し、二周目からは肢ごとに問題を解き、三周目ではテクニックも確認しながら問題ごとに解き、四周目以降は間違った肢や、不安な肢を、またはその肢がある問題全体を繰り返し解いていました(特に民法の家族相続分野、憲法の統治分野などは沢山回しました)。そして、当然ですが、条文問題が出てきた時には必ず条文の素読、百選レベルの判例知識を間違えたら必ず判例の確認を行っていました。特に、条文の素読は有効だったと感じます。また、これも当然ですが、論文でも出題されるような論点が問われている場合には、その理由まで覚えているかも逐一確認すべきです。
 このような勉強をしていたおかげか、今年は昨年より30点程度高い点数を取ることができました。

4.論文について

 まず、昨年の大きな反省点は、月並みなものですが、多くの受験生が知っている論点の知識が不足していたこと、過去問の検討が不十分だったことでした。また、中日に体調を崩してしまったので、体調管理ができていなかったという反省点も挙げられました(これは各自で気を付けるしかないので、以下では触れません)。逆に、良かった点は、各科目の論文の書き方についてはある程度の型が完成していたこと、得意という自覚があった科目、本番で手ごたえがあった科目は合格水準を超えた評価がされていたので、自分の努力の方向や感覚は間違っていなかったのだと実感できたことでした。
以上の分析を踏まえ、「多くの合格者が当たり前にやっていることを当たり前にやる」という方針の基で、①まずは全科目につき、過去問を徹底的に検討する、②合格水準に達していなかった科目については、変なこだわりは捨て、シェアの高い基本書や問題集(受験新報に年一で載っているのでチェックしてみてください)を使用するというごく平凡な対策を講じました。
 上記①については、出題趣旨採点実感、辰已の再現答案集やぶんせき本、受験新報の解説、憲法ガール行政法ガール等を参考にしました。過去問検討では、一応の完全解はどんな感じなのか、どのレベルが合格水準答案なのか、という二点を常に意識することが大切だと感じました。なお、上述の通り、答案の書き方自体は身に着いていると感じていたので、実際に答案を書くのは答練や模試の時だけで、過去問検討は答案構成で済ませていました。しかし、文章を紡ぐ能力が落ちるのは怖かったので、答案構成を見ながら答案を頭の中で書いてみたり、ブツブツつぶやいてみたりということはしていました。
 次に②について、特に有益だった教材としては、事例研究行政法、民法総合事例演習、民訴百選、読解民事訴訟法、ロースクール演習民訴、刑法事例演習教材、応用刑法、刑訴百選、古江本等が挙げられます。解答や解説がついていない問題集については予備校やSNS等で上位合格者の解答例を手に入れて使用していました。また、解説しかついていないものについては、常に答案ではどう書くかを意識して読んでいました。
 なお、昨年の時点で身に着いていると実感できた答案を書く能力については、院入学一年目から組んでいた自主ゼミの友人たちに鍛えられた結果備わったものだと感じています。皆さんもぜひ自主ゼミを組んで答案の書き方を探ってみてください。

5.終わりに

 司法試験の本番では、途中で「やらかした~」と感じることが多々あります(私も、今年、複数科目で問題文の読み間違いがあることに試験期間中に気づいてしまい非常に焦りました)。ですが、決してそこで諦めないでください。「やろう!解こう、全力で!だってそのために今日まで頑張ってきたんだから!」と自分に言い聞かせ、最後まで全力を出し切ってください。わりと何とかなるものです。
 最後に、夢や目標に向けて努力し続けることはそれ自体も才能で、素晴らしいことです。ですが、自分が壊れてしまうほど頑張らなければいけないことは世の中にありません。まずは、何より自分を大切にしてあげてください。そして、頑張りすぎない程度に頑張ってください。

以上

2018年3月修了 S.M

1.経歴

2016年 明治大学 法学部 法律学科 卒業
2018年 明治大学法科大学院 法務研究科 法務専攻 修了
2018年 司法試験 合格

2.はじめに

 この合格体験記をお読みくださっている方の中には今司法試験受験生であるという方々が少なくないと思います。そこで、この体験記では、司法試験の勉強をする上で私が意識したこと、その意識に基づいて導き出した勉強方法を可能な限り具体的に述べていきます。ここで述べることが絶対確実なことではありませんが、合格した一つの方法論として参考にしていただければ幸いです。

3.法曹の道を目指したきっかけ

 高校生の間に漠然と弁護士になりたいと考えていたため法学部に入学しました。その後、司法試験予備試験の存在を知り大学2年時の5月に1度受験したところ、短答式試験でボロボロに惨敗しました。この悔しさをバネに大学3年時の春から本格的に勉強を開始し、弁護士を目指したことが私が法曹の道を目指そうとしたきっかけです。

4.勉強の期間

 2で述べた通り、大学3年の春から主に短答式試験の勉強を開始しました。論文式試験の勉強は、大学4年の予備試験短答式試験が終了した後の6月ころから開始しました。諸事情によりロースクール在学中も長期休暇期間には最後の春季長期休暇を除き勉強時間を確保することができませんでした。

5.勉強の方針

(1)私は、一般的な司法試験受験生と比較して相対的に時間的側面、経済的側面において不利な状況にあると感じました。そこで、日々の勉強では、「常にこの時間で最大の学習をするためには、何をどういった方法で行うことが司法試験合格のために必要か」という観点で学習することを心がけました。また、短答式試験については直前期に仕上げることができなかったため、簡単に後述する程度に留め、以下は論文式試験の勉強方法から述べていこうと思います。

(2)上述の方針から、まず①司法試験において何を書くことが求められているのか、次に②求められているものを書くためには何を身に着けるべきかという観点で勉強計画を立てました。
ア ①司法試験において何を書くことが求められているのかについて
 出題趣旨、採点実感、教授の先生や予備校の解説を見ながら、司法試験本試験過去問の再現答案に書かれていることからどの部分が評価され、評価されないのかという点を検討しました。評価されない部分は、無益な記載と有害な記載(減点)部分まで検討しました。高低各順位を比較することで見えてくる部分もあります。なお、この分析・検討を行うにあたっては前提知識として記載内容の意味は理解できるようにしておく必要があるので、本当の初学者の方はまず入門書や入門講座でこれをできるようにしてから取り組むとよいと思います。
 そして再現答案を分析すると、問題文に対して書くべき論点が見えてきます。論点だけ書けても論点に飛びつく印象を持たれると思うので、論点を展開するまでにどのような思考過程を見せると評価されるのかまで分析します。すると、大きくは「みんなが書けることは書く、みんなが書けない部分は書くと加点事由にはなるが書きすぎると減点も見えてきてリスキーでありそう」ということがわかります。細かくは、形式的な条文操作や、明らかに充足する要件についても触れておき、そのうえで論点についての論証を展開するべきであろうなど司法試験において何を書くことが求められているのかが把握できます。
なお、この分析は行えば行うほど論文の質が上がる部分だと考えられるところだと思いますので、最初のうちはある程度でとどめ、学習の途中段階で立ち戻り、学習計画を修正することを繰り返すとよいと思います。学習初期では自己の勉強計画の大枠を決める方針を定めるためという意味合いでよいと思います。完璧主義になると進めなくなります。

イ ②求められているものを書くためには何を身に着けるべきかについて
 ①で求められている部分を把握したら、これを身に着けるため何が必要かを考えます。ここで抽出した必要事項をすべて充たすものはないと思うので、一つ一つ必要なことを検討するとよいと思います。ここでは全て書くと膨大な量になるため「問題を解いて答案を作成する行為を行うにあたり必要だ」と考えたことを述べます。
私は、問題において聞かれていることを把握する能力と、これを解いて答案に記載する能力は別のものと考えました。使用したのは市販の問題集と論証集です。
 前者については、問題文から問われてる条文や定義、論点を抽出する能力を養う必要があると考えました。そのため、問題文を見てすぐこれらを反射的に適示できるよう、使用していた問題集にメモを作成し答え合わせをする作業を繰り返しました。
 後者については、さらに論点を展開するまでの過程部分と論証の展開部分に分かれると考えます。過程部分については参考答案がついている問題集を使用し、その参考答案を問題文を見て頭の中で再現できるか繰り返しました。その際、私は参考答案を要素ごとにマーカーで色分けし印象に残るよう工夫しました。例えば青は問題提起、オレンジは定義などです。
 次に、論証展開力については、基本的に判例に基づいて作成されている論証集を利用しました。ここはどうしても暗記に頼らざるを得ない部分でしたので、当該論証中の核となる部分を最初に頭に入れました。核とは、趣旨や定義、規範の部分のことです。そのうえでその規範等を導くために必要な理由付けを頭に入れました。またどうしても長すぎて頭に入らないものは必須の要素は含めるようにして短縮しました。その際、参考にしたのは再現答案です。どこまでの短縮は許されるのかその相場観を養いながらこれを行いました。1周で覚えることは私にはできませんでしたので、ロー3年時11月頃から司法試験当日まで永遠に繰り返しました。移動中、食事中、入浴中もです。また、論証だけ覚えていても実際の試験現場で使用することができないので、どの要件の問題なのか、どの場面で使用する論証なのかまで意識して覚えました。そして、あてはめで必須の要素や認定の仕方も併せて押さえることで、当てはめ部分でブレることがないように意識しました。特に定義や規範との対応関係は意識しました。

(3)形式面
 文の長さには特に配慮しました。短文を基本とし、同じ意味でより短く言うことのできる単語、表現はないかと日頃から意識しました。字の大きさは可能な限り大きくしました。接続語は決まったものを決まった順序で用いることで、文のつながりが変になることを防止しました。

(4)現場思考
 再現答案を見て相場観を養いました。その際も、みんなが書けることは何かを意識しました。私は、法的三段論法を死守し、趣旨や定義から論証を展開するなどを意識すればここで落とされることはないだろうと考えました。

(5)論文の勉強まとめ
 長くなりましたが、どの勉強をするにしても「みんなが書けることが書けるようにするために、自分に何が不足しており、これを補うためには何が必要か。その達成過程として最大限自分の身になる方法は何か。」といった方針は変わりません。

(6)短答の勉強
 前述の通り、司法試験本番の直前期にまとまった短答の勉強を確保できませんでした。しかし、論証集として用いていたものがほとんど判例の規範等をそのまま掲載されているものでしたので、おそらく短答の問題の中で基本的とされる問題には対処できたのだと思います。また、ロー2年までの予備試験の短答対策として前年度を各分野ごとに体系化された問題集を利用して知識化しておいたものが多少残っていたことにも助けられたと思います。
 もっとも、これは短答の対策は不要という意味ではありません。短答式試験を受験する前も最中も自信をもって答えられるものが少なくとても不安でしたし、短答式試験の結果が返ってきてからもとても最終合格していると安心できるような順位でもありませんでした。私の勉強開始後直後のように知識偏重に陥り、短答式試験の対策ばかりに時間を使い論文には目も当てられない状態になるのもよくないとは思いますが、対策しないで論文式試験の採点すらしてもらえない状態になるのもその後の学習に著しく悪影響を与えるので学習量のバランスはよく考えた方がいいと思います。

(7)勉強環境
 体調にはとても気を付けました。特に空腹や体調不良、睡眠不足によりすぐに集中力が途切れてしまう気質がありましたので、内的外的それぞれの勉強環境の整備にも努めました。この体験記を読んでくださっている方の中には、時間のなさによる焦りから睡眠時間をとにかく削って勉強時間に充てる方も少なくないと思いますが、私は睡眠時間不足による生産力の低下は著しいものがあると痛感しました。例えば、睡眠時間1時間減るごとに自分の集中力にどの程度変化があるのか計測してみるなどして私に絶対的に必要な睡眠時間は何時間かと検討しました。このように、自身の最高の体調で勉強を継続することが合格につながるものと考えて勉強していました。これは、5日間という過酷で長い試験本番において自分の実力を全て出し尽くすという意味でも効果があるものと思います。結果、論文式試験については受験後後悔はなく、今年で最後という気持ちにすぐ切り替えることができました。

6.最後に

勉強方法は各人に最適なものがあると思います。しかし、実践してみなければどれが最適かということは分かりません。そして、今はインターネットの普及により勉強方法に関しても多くの情報が溢れています。私のものを含め、中には偶然成功した事例もあるかもしれませんが、いろいろと試してみてご自身にあった勉強方法を確立して頂ければと思います。
 また、司法試験の勉強でご質問がある方はなんでもお答え致しますのでお気軽にして頂ければと思います。司法試験の勉強は大変で辞めたくなる時もあると思いますが、乗り越えた先には大きな成長があると思います。最後までお読みいただきありがとうございました。がんばってください。
以上
(平成30年9月30日執筆)

2015年3月修了 N.H

 私は、平成30年、司法試験に合格することができました。以下、拙い体験記や感想等を書こうと思います。

1 短答式試験について

 総合点との割合で言えば、論文よりも比重が軽いこともあり、どの程度の時間を割くか、いつの時期から取り組むか、どの教材を使うかなど、100人居れば100通りの考え方があると思います。他方、客観的データとして、平成30年であれば1600人を超える人数が短答式試験で不合格となっています。
論文式試験は、短答式試験を通過しなければ採点してもらえません。論文式試験は8科目を合計3日間行われますが、短答式試験が不合格になると、3日間の苦労が水の泡になります。
このような観点からすれば、短答式試験も軽視する事はできないと考えています。
私は、短答式試験の対策をやりすぎないように注意していました。特に苦手な分野だけは肢別問題集をやったりしましたが、それを除くと過去問のみしか解いていません。過去問を回すと(私の回し方は後述します)、繰り返し出ている問題や苦手・嫌いな分野がはっきりしてくると思います。他方、ケアレスミス等を除いて、たとえば、短答式試験の民法177条に関する問題を間違える方は少ないと思います。このような何度やっても間違わない問題を繰り返し解くのは、いたずらに時間を消費するだけだと考えました。
 そこで、過去問を印刷してB5サイズのファイルに閉じ、できない・不安な問題のみ、肢番号の隣に「注意」「不知」「苦手」というように明記して、解説を書き込んでいました。「注意」等が書かれた肢だけ、何十週も回すというやり方です。
 私のやり方のメリットは、自分が間違いやすい問題のみを繰り返すので時間効率がいいという点です。他方、デメリットは、全年度分の素材を作成するのに時間がかかるという点です。

2 論文式試験について

(1) 自己分析
私は、論文式試験の8科目のうち、平均的に合格点とかけ離れていたタイプではなく、特定の科目が爆死するというタイプでした。爆死の原因も様々ですし、司法試験の本番では、緊張や焦り、出題形式の変更等、必ずしも実力を発揮できないと思います。しかし、他の受験生も同じ状況であることから、ミスをしたり、よく分からない問題が出ても、合格答案に留まるように準備・対策することが大切であると思います。
 そのためには、自分の癖や思考過程、徹底した敗因分析、それらを基にした計画を立てることが必要であると思います。私は、後述する法制研究所の特別指導を受講することで、本番で失敗しても合格答案に留まることができたと考えています。

(2) 特別指導
 私は、法制研究所が主催する特別指導にて、上原誠弁護士に約半年間、ゼミを担当して頂きました。
特別指導は、受講生と弁護士が1対1のゼミ形式で行われます。取り組む内容は、各々の受講生と弁護士が話し合ったうえで決定されるため、おそらく何をやるかの決まりはないですし、受講生の要望や弱点に応じて、臨機応変に対応して頂けるはずです(私は上原先生との特別指導しか知りませんので、詳細は法制研究所に問い合わせ頂くのが確実かもしれません)。ちなみに、私の場合は、直近3年間(平成27年から平成29年)の司法試験過去問7科目を、事前に起案、提出し、ゼミ内で添削した答案の講評といった形で行いました。
 上原先生は、とても熱心に、そして熱き心を持って、ご指導くださいました。具体的には、事前に提出した答案のみならず、私の答案の記載から、思考過程の癖や傾向を指摘して下さり、また、理解が怪しい箇所に関しては参考資料を添付して、私の思考を辿りながら、ゆっくり着実に誘導して下さいました。
 特別指導にて添削や指摘を受けているうちに、自分の爆死した原因や、爆死する可能性のある要因等に気が付くことができました。たとえば、平成28年司法試験民事系第1問設問2(2)の添削を受けた時に、合格までに修正しなければならないことが、明確にわかりました。その当時のご指摘された後作成した分析メモを、作成当時のまま記載します。

処理手順プロセス例
 ①MからHには何らかの請求が立ちそうだな。400万払ったのに、譲渡債権無効じゃねーか。
 ②とすると、少なくとも不当利得が立ちそう。でも、請求は、「MからE」だよな。何か直接の請求ってたつのかな。
 ③MEは契約関係にないな。
 ④とすると、不当利得か不法行為だな。なんか公序良俗とか出てきているし不法行為よりは不当利得じゃないかな。
 ⑤じゃあ、直接の不当利得に決めよう。
 ⑥え、無理そうじゃない。認定すんなりいかないんだけど。Mの損失とEの利得って本当に因果関係あるの?M400万なのにE500万よ、100万どうするの。
 ⑦いつもなら⑥でテンパって、事実を無理やり評価してどうにかするか、意味不明な因果関係を認定して終了なのがオチ。
 ⑧それをぐっと我慢する。不安であるが、⑦だと0点又は-20点レベル。ただひたすらその衝動を抑える。
 ⑨⑤で決めた訴訟物の要件を記載する。それを当てはめる。事実を抽出する。評価する。この評価を捻じ曲げず、無理なら無理で認められない!って書く。
 ⑩でもやっぱり不安だから、何か書きたくなる。認められないって言っても…、設問も500万円だし。
 ⑪しかし、その設問はそれで終了。他の設問で趣旨書いて規範出して当てはめ出来るのであれば、そっちを充実させる。しょうがない。無理のない(うそではない)訴訟物の設定に対して、要件を出して、事実を当てはめていれば、そこには点数が付く。少なくとも基礎点は。設問2は配点割合が6割だから、単純に20点だけど、最小限10点はつく。⑦をやると最高0点。10点の差はでかい。
 ⑫結局直接の不当利得返還請求権は、出題趣旨に明示されていたが、その請求は困難であるといった記載だった。ということは、⑧~⑪の過程はある意味出題趣旨に合致しており、受験生がテンパって沈んでいけば、勇気ある逃げ方で相対的に点数が付いていることになる。
 ⑬確かに、司法試験の過去問では、額に争いがある場合いくらの金額で請求が認められるかといった設問形式が多いと思うが、設問の金額はオールorナッシングじゃなくて、場合によっては下がり得るってイメージもつけておくと、テンパりにくい。

 上記問題を解いたときは、何とか500万の訴訟物を立てなければ…といった凝り固まった思考に支配されておりました。そして、債権者代位も被保全債権が設問より少ないから無理でしょ、というように答案に示さず頭の中で処理する癖がありました。その結果、書けばエクセル点が入る箇所を拾うことが出来ず、むちゃくちゃな答案の方向に行くことが多かったです(上原先生は、私のこのような答案を、ファンタジー、異世界答案などと表現しておりました。今振り返るとその通りだなと思います。)。
以上のような弱点や癖に気が付いてからは、演習の方法や問題を見た時の視点・思考過程が劇的に変化し、過去問や問題集を解く際に、上記の分析による思考過程や癖に意識を払いながら取り組むことができました。
結果が出るまで不安でしたが、直前のTKC全国模試でもそれなりの結果が出たため、本番前までの精神衛生はかなりよかったです。
 私が受かったのは、間違いなく、上原先生との特別指導があったからだと思います。皆さんも、特別指導を受講することを強くお勧めします。なお、法制研究所に所属していれば、受講料は7000円と安く、弁護士と1対1という贅沢な講座です。上原先生と巡り合えた方は、合格に極めて近くなると思います。

3 最後に

私は、多くの先生や先輩、友人や後輩と共に勉強をさせてもらい、また、父親が支援してくれたおかげもあって、合格することができました。来年以降合格を目指す方にとって、私の勉強法や体験記が、少しでも参考となれば幸いです。
以上