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合格者体験談(2019年度)

2019年3月修了 D.S

司法試験合格体験記



第1 私は、2019年3月に明治大学法科大学院を修了し、令和元年の司法試験に合格しました。短答と論文について使用した教材などをお伝えします。

第2 短答式試験

1 使用教材 全科目共通
 全科目「司法試験短答過去問パーフェクト」(辰已法律研究所)を使用しました。
 具体的には、各問題の肢全てについて、理由をつけて正解できるまで、何回も回します。
2 憲法
 「逐条テキスト」(TAC出版)を利用。判例の要旨が長く記載され、統治分野も必要な記載(学説や概念など)があり、有益な教材です。
3 民法
 「逐条テキスト」(TAC出版)を利用。逐条テキストは、試験で出題された条文や判例、周辺知識がコンパクトにまとまっていて、有益な教材です。
4 刑法
 「判例六法」(有斐閣)と、「基本刑法」(日本評論社)、応用刑法(法学セミナー)を利用。まず、判例六法を用いて、条文(執行猶予など)や判例を押さえます。次に、基本刑法や応用刑法を用いて、学説の整理を行い、判例六法に一元化します。

第3 論文試験

1 使用教材 全科目共通
 出題趣旨、採点実感を全科目読み込みました。司法試験は、一応の水準以上を全科目確保すれば十分に合格できます。まずは、一応の水準を確保できるようにして、不良水準の答案を書かないようにすることが重要です。
2 選択科目、経済法
 主な使用教材は、判例百選、テキスト「独占禁止法」(商事法務)、問題集「論点解析経済法」(商事法務)です。
 テキストで行為類型の典型例、課徴金の計算方法などを押さえます。問題集では、事実の評価の仕方がとても参考になります。
3 公法系 
(1)憲法
 主な使用教材は、判例百選、テキスト「憲法学読本」(有斐閣)、問題集「憲法事例演習」(成文堂)です。
 判例百選で主要な判例の要旨、事案を押さえ、テキストで憲法の基本的な概念を押さえます。そして、問題集で、原告、反論、私見の組み合わせ方を勉強します。
(2)行政法
 主な使用教材は、ケースブック行政法(弘文堂)、テキスト「基本行政法」(日本評論社)、問題集「事例研究行政法」(日本評論社)です。
 ケースブック行政法で、基本的な判例を押さえます。 
 基本行政法では、処分性などの処理手順や判例の射程を学習します。そして、事例研究行政法で、具体的な事例の処理を押さえます。
4 民事系
(1)民法
 主な使用教材は、判例百選、テキスト「入門民法」(有斐閣)、「民事裁判実務の基礎」(民亊法研究会)、問題集「事例で学ぶ民法演習」(成文堂)です。
 判例百選で主要な判例を押さえます。入門民法は、全範囲がコンパクトにまとまっており、全体像を把握するのに最適です。さらに、要件事実を問う問題に対応するために、民事裁判実務の基礎を読んでおくとかなり有益です。問題集は解説が丁寧なので有益です。
(2)商法
 主な使用教材は、判例百選、テキスト「会社法」(弘文堂)、問題集「事例研究会社法」(日本評論社)です。
 まず、判例百選で主要な判例を押さえます。次に、テキストで基礎的な事項を押さえます。そして、問題集で具体的な事案の処理を学びます。当該問題集は、あてはめも具体的に示されており、とても有益です。
 なお、商法総則、商行為法及び手形小切手法は、ほとんど手が回りませんでした。
(3)民事訴訟法
 主な使用教材は、判例百選、テキスト「リーガルクエスト民事訴訟法」(有斐閣)、問題集「ロジカル演習民事訴訟法」(弘文堂)です。
 まず、判例百選で主要な判例を押さえます。次に、テキストで、基本的な原理原則などを押さえ、判例や通説以外の有力説も押さえます。そして、問題集を用いて、通説や有力説からの具体的な事案の処理を学びます。
5 刑事系
(1)刑法
 主な使用教材は、テキスト「基本刑法」(日本評論社)、問題集「ロースクール演習刑法」(法学書院)です。
 テキストで、基本的な概念や事例の処理方法を学んだ上、問題集で他説の理由付けや結論も押さえて自説を補強します。
(2)刑事訴訟法
 主な使用教材は、判例百選、テキスト「リーガルクエスト刑事訴訟法」(有斐閣)、問題集「事例演習刑事訴訟法」(有斐閣)です。
 テキストで基礎的な概念を押さえ、問題集で自説だけでなく、他説の帰結や批判などを広く押さえることで今年と同様の出題傾向にも対応できます。

 

以上

2018年3月修了 K.H

1 経歴

出身大学 明治大学法学部法律学科

2016年 明治大学法科大学院(既習コース)入学
2018年 明治大学法科大学院(既習コース)修了
2018年 司法試験不合格(短答は合格)
2019年 司法試験合格

2 はじめに


 おそらく、司法試験の合格を目指す人すべてが、どのように勉強をすれば受かるのか?と悩んでいると思います。合格するための方法は100人いれば、100通りあると思うので、自分にあった合格方法を見つけるのは難しいです。また、合格して初めて、今までしてきた勉強方法に間違いは無かったのだと確信することができるので、悩むことは当然だと思います。

 私自身も、司法試験に一回落ちているので、とても勉強方法には悩みました。
 そこで、これをご覧になっている受験生の参考になるとは限りませんが、私自身の勉強方法が悩んでいる皆様の助けに少しでもなれば良いと考え、今回、合格体験記の執筆をしようと思いました。

3 短答式試験について


(1) 私は、1回目の受験のときは、135点(1020位)で通過し、2回目は142点(460位)で通過しました。短答は、一定の範囲まではやればやるだけ伸びるとは思いますが、勝負は論文なので、程々の勉強に留めておくのがベターです。しかし、短答の点数は、論文の点数がボーダーラインにいる人にとっては大きな意味を持つので、全く対策をしないというのは、問題があります。

(2) まず、短答3科目すべてに共通することは、過去問が重要であるということです。なので、まず、新司法試験の過去問のすべてについて、一通り解くということが必要です。解き方としては、辰已出版の本を使用し、最初は時間を計るといったことはせず、肢の全てにつき、〇か×かの判定(理由も含めて)をしました。そして、判定できなかった肢、不安な肢についてのみ、チェックをしました。そして一通り短答の過去問を回したら、チェックした肢のみを重点的に復習しました(解説を読んだり、基本書・判例本の該当箇所の解説を読んだり)。目標としては全ての過去問について、8割~9割の正答率(設問単位、脚単位)を目指していました。これをクリアすれば、論文の勉強を並行している方々が短答で足切りに遭うことはまずないと思います。
(3) 次に、短答で7割、8割を目指して、他の受験生と短答レベルで差をつけたいという人もいると思います。その場合、私は以下の対策をプラスして行いました。それは、条文の素読、TKCの基礎力確認テスト、判例百選の通読(事案を軽くみて、主に判旨・決定要旨の結論部分のみ)、過去5年の重要判例解説の最高裁判例のみ確認、です。後は、TKCの模試などで、自らの実力や時間感覚を確かめていました。
(4) 最後に、短答は年が明けた1月から行えば間に合う…と言う人がいますが、これは短答プロパーの対策という意味だと私は思っています。短答は毎日決まった時間行うことで定着していくと思うので、直前期にプロパー(憲法の統治など)の詰込みをすることはよいと思いますが、対策を遅らせることは間違いだと思います。また、直前期に論文に勉強に多くの時間を費やすためにも、毎日12時間でもよいので、短答の勉強はするべきです。

4 論文式試験について


(1) 論文は、新司と旧司の過去問を書きました。その際に、自分の起案した答案を人に見てもらうことをしました。これは、1回目の受験の時には怠っていたことであって、一番大事なことです。私は、答案を人に見てもらうことが恥ずかしくて、あまりしていませんでした。しかし、それでは第三者が答案を見てどう思うか、という点が欠けてしまいます。答案は自分で採点するものではなく、司法試験委員会の採点者が行います。ですから、人が読んでわかる答案でなければならないことは言うまでもないので、答案を人に見てもらう機会を増やすことを強くお勧めします。

(2) 次に答案を書くにあたっては、時間、文字数、文字の大きさ、ナンバリング、見出し、三段論法といった形式面を注意するのはもちろん、司法試験委員会の方々は何を書いてほしいのか、どこに点数が振られているのだろうか、ここはみんなが書けた記述なのか、という点についても検討しました。例えば、「過失」を基礎づける事実が多く問題文に記載されていれば、ここに点数が振られているし、ここを厚く書いてほしいというメッセージでもあり、そのことが出題趣旨で言及されていればなおさら書かねばなりません。
(3) また、出題趣旨や採点実感を読むことでわかりますが、受験生のレベルはそんなに高くありません。ということは、上記の点について、検討し、それを自らが受験する時にも生かすことで、他の受験生に差をつけることができます。
(4) 最後に、論文を書くにあたってはテクニックのみでなく、最低限の知識(基礎的な知識)はもちろん必要です。それは、辰已の趣旨規範ハンドブック程度で足りると思います。また過去問のみで心配な方は、評判の良い演習書を読み物として利用するのもありだと思います(私は、ロープラクティスや刑法事例演習教材等使用していました)。

5 終わりに


 司法試験は、誰もが受かる試験ですから安心してください。ただし、努力の方向性を間違えると合格するまで年数をかけることになってしまうと思います。私も、皆さんと同じように不安や悩みを抱えていた受験生でしたので、一般の受験生の気持ちはよくわかります。しかし、合格に向けて、自分に合った方法を見つけることで必ず合格できます。受験生の皆さんの健闘を祈っております。

 

以上

2015年3月修了 T.S

1 はじめに

 私は大学卒業後、社会人経験を経て純粋未修として明治大学の法務研究科へと進みました。2015年に未修者コースを卒業し、5回目の司法試験でなんとか合格をすることができました。やってきたことをすべて書けばきりがないので、大学院在学時の勉強・卒業後の勉強の中で合格につながったなと感じた勉強方法と仕事との両立をするために工夫したポイントを共有しようと思います。大切なのは復習をおろそかにしないことと限られた時間を有効に使うための計画を立てることです。
 以下の体験記が皆さんの参考になれば幸いです。

2 択一

 私は1度目の司法試験で基礎知識不足で択一で不合格でした。
 そのため、肢別もパーフェクトも何周回したかわからないほど回しました。その中で重複して間違えている問題や苦手と思う分野に関しては基本書に立ち返り、ノートに必要部分を手書きするなどして記憶の定着に努めました。択一は反復と暗記がものをいうのではないかと思います。
 大学院在学時は肢別をメインに解いていましたが、択一プロパーの勉強をする時間はなかなか作れていませんでした。
 大学院卒業後は、各科目の分野ごとに解くことと過去問を通しで解くことを繰り返していました。また、苦手な民法だけは肢別を使って一つ一つの問題を解き、間違えたら択一六法などで見直すことを繰り返していました。また、過去問の成績は逐一データとして残し苦手分野の改善を試みました。

3
 論文

1)ゼミ
 法科大学院在学中は主に授業と友人と一緒に自主ゼミを組んで勉強していました。
 ゼミのやり方としては、大学院在学時は自主ゼミの他に教授や補助講師の方にお願いして定期的にゼミを開催し答案を添削してもらいました。
 様々ゼミのやり方はあると思いますが、答案が書けるようにならないと意味がないと考えていたので、演習書やオリジナル問題の答案を決めた時間内に作成し添削してもらうという形で行っていました。
 純粋未修ということもあり、基礎知識がゼロからのスタートでしたのでゼミを通じて基礎知識と答案の書き方を学びました。そして友人同士のゼミで書いた答案の添削をしあうことで他の受験生のレベル感を確認し、自分の至らない部分を見つけ、基本書に立ち返って勉強しなおすという作業の繰り返しでした。判例百選は在学中にすべての科目において全頁読み、また、ゼミで使った問題に必要な判例やよく出てくる箇所、気になる言い回しなどはチェックしていました。このようにして基礎知識をある程度身につけていくことができたのが在学中だったと思います。
 また大学院卒業後は、既にやったことのある演習書であっても答案作成時間を短縮して書いて添削するゼミなどを行いました。ある程度の知識を習得できた後であっても答案の書き方や、読みやすさ、他者への伝わり方など、一人では気づかない部分を指摘し合える場なのでゼミは有効だと思います。
 ゼミを行う上で大切なのは復習です。自分が納得できるまで復習を絶対にしてください。復習ができたなと思うのは、「もう一回やれば書けるな」と実感できるまでです。
(2)      ひとり演習
 これは主に大学院卒業後に行っていましたが、自分の苦手だと感じる箇所を初学者向きといわれている「えんしゅう本」や伊藤塾・辰已の教材・「事例で考える…」シリーズ・事例演習など様々使い論証を形にしました。いずれの演習書も有効だと思いますが、大切なのは自分の実力レベルに合わせたものを選ぶ点だと思います。もちろん添削し、ゼミができれば尚良いのかと思いますが、卒業後は仕事を平行していたため、ゼミの時間を確保することが難しく、ひとり演習をしていました。
(3)      過去問
 私は大学院2年次後期か3年次から開始しましたが、可能な限り早く始めることをお勧めします。過去問が解けなくて合格するということは可能性として高くありませんので、過去問を時間を計って何も見ないで本番さながら解くことを繰り返す必要があると思います。
 もっとも、基礎知識やある程度の感覚がなければ解けないと思いますので、ご自身の勉強レベルに合わせて、いち早く過去問を制限時間内に解くことを通常の演習レベルの起案と思って解けるようになることが大切だと思います。
 大学院在学中は、起案したものを自主ゼミで添削し合っていました。
 卒業後は、特別指導や知り合いの弁護士仲間などに協力をお願いし合格者からの客観的な指摘をもらっていました。また、予備校等の過去問解説講義は過去問を解いたら必ず聞く(2度目でも3度目でも)ようにしていました。合格に近づいた要因は過去問の復習に重点を置いた点にあると考えています。

4
 仕事との両立

 私は民間企業で週に5日フルタイムで働いていました。そのため平日の勉強時間は朝始業前、昼休み、帰宅後で合計4~5時間ほどでした。(本当はもう少し少ない日が多かったのですが、目標5時間としていました)そのためまず、試験当日までに確保できる勉強時間を算出しました。(年末年始や休日含め)そしてその限られた時間を使って合格するために足りないものは何か、行うべき勉強は何かを一つ一つスケジュールとして落とし込んでいきました。
 具体的には、平日の起案は諦め、平日の朝と昼は択一と論文の復習時間に充てていました。夜は論文対策の時間と決めていました。そして休日は起案を1日に平均3本書いていました。ゼミを組む時間もとれなかったので、ゼミは特別指導で弁護士の先生に見ていただくことと、弁護士の知り合いにメールで送って添削してもらっていました。心がけたのは必ず添削してもらうことで復習を怠らないようにすることです。そのために起案のペースを落としたりもしましたが、1週間で全科目1年分を目標としていました。
 また、Webで視聴できる予備校も活用し、行き帰りの電車は講義を聞いていました。

5
 最後に

 目標を立てても上手くいかなかったり、途中で追加したくなる演習や答練等が入りうまく調整するのは難しかったですが、合格した年は計画作成時からの予定を変更することなく行えたのが合格の一因だと感じています。
 私は自分の悪い癖が抜けず、復習がおろそかになっていたのでなかなか合格できませんでした。なので皆さんはたくさん復習して、ぶれない勉強計画を立て、次回合格できるよう応援しています。

以上

2016年3月修了 T.I

合格体験記



1.
経歴

2013年 高崎経済大学経済学部経営学科 卒業

2016年 明治大学法科大学院(未修) 修了
2016年~2018年 短答式試験のみ合格
2019年 司法試験合格

2.
はじめに

 私は,司法試験を合計4回受験しました。この受験期間中,勉強内容・方法について試行錯誤を繰り返し,それが功を奏し合格することができたと感じています。

 以下では,受験生の参考になればと思い,2019年司法試験に向けて行った私の勉強方法を紹介したいと思います。なお,人によって合う合わないがあると思うので,いろいろな人の合格体験記を参照し,自分に合う勉強方法があればいいとこ取りをし,各受験生オリジナルの勉強方法を確立してほしいと思います。

3.
短答式試験

(1)勉強の必要性

 短答式試験は,勉強をすれば得点できる試験であるため,短答式試験に落ちてしまった受験生の原因は,単に短答式試験対策に時間を割いていないことにあると考えられます。
 また,ご存じの通り,短答式試験を合格しなければ,論述式試験の添削をしてもらえません。短答式試験に落ちた場合,論述式試験の出来の良し悪しを知ることができないため,翌年の論述式試験に向けた勉強方針を立てることが難しくなります。
 さらに,短答式試験の特徴としては,論述式試験では出題されないようなマイナー条文に関する出題もなされるため,論述式試験の対策ではカバーできな問題も多いといえます。  
 以上から,短答式試験の勉強時間を十分にとる必要があります。
(2)勉強方法
 ア 使用教材
  私は,肢別本(辰已)を使用していました。これには2つ理由があります。1つ目は,肢別本だと,同じ論点や関連する論点の肢が連続することがあるので,覚えているうちに反復学習ができ,かつ,相互に関連付けて覚えることができる点です。短答過去問パーフェクト(辰已)は,本試験と同じ形式である点は良いかもしれませんが,一題の問題のテーマが抵当権,債権者代位権等と範囲が広いため,肢別本ほどは効率よく勉強できないと思いました。これはあくまで個人的な意見です。2つ目は,持ち運びの便利さです。パーフェクトに比べ小さく軽量であるため,気軽に持ち運ぶことができ,通学時間などのすき間時間に勉強することができます。
 イ 具体的な勉強方法
  毎日,一定の時間を決め短答式試験の勉強に充てていました。[肢別本の問題を解く→その解説や基本書の参照]をひたすらに繰り返しました。このとき,解説の理由が不十分であれば,基本書等を参考にし理由付けを書き込んだりしました。このような勉強をすれば単なる暗記に陥らず,知識の定着率も高くなると思います。
  また,問題を解く際に,自信あり,微妙,わからない,とういように3つの肢に区別し,2周目以降は,微妙・わからない肢のみを解答し,微妙・わからない肢を減らす作業を繰り返しました。これを憲法・民法・刑法で行い,すべて終えれば2周目に入ります。微妙・わからない肢が少なくなってきたときに,その肢及び解説をワードでまとめ印刷しました。これを1サイクルとし,最終的には3サイクル行ったと思います。
 司法試験2ヵ月前くらいの段階で,かかる印刷物を確認する方法で勉強しました。

4.
論述式試験

(1)使用教材

 直近5年の司法試験の過去問に加えて,苦手な科目や起案慣れしたい科目については,直近5年以前の過去問も起案しました。
 その他にも,憲法は,自分なりに答案の書き方や各人権の意義・保障根拠等をまとめたものを冊子にし,熟読しました。行政法は,土田伸也『実践演習行政法-予備試験問題を素材にして』(弘文堂,2018年),民事系・刑事系は,『えんしゅう本』(辰已法律研究所)を使用しました。
(2)具体的な勉強方法
 司法試験の過去問については,すべて時間を計り,起案しました。私の場合,4回目の受験ということもあり,問題の論点について覚えている点が多かったため,起案に際しては,解答時間を90分から100分に制限し,三段論法,端的な表現を意識し起案しました。これを通じて,答案の書き方の訓練をしました。
 行政法,民事系や刑事系で使用した問題集については,時間の関係上起案することはせず,詳しめの答案構成をするようにしました。詳しめの答案構成とは,問題となる条文,趣旨,規範,当てはめ,結論を具体的に箇条書きにしたもので,これをつなげればほぼ答案になるという程度のものです。この勉強は,➀司法試験の問題が旧司法試験や予備試験野焼き回しが多いといわれていたことから,その対策として,また,➁司法試験の過去問にないような論点についての知識を増やすために行いました。

5.
ゼミ

 私を合格に導いた一番の要因は,ゼミでの勉強だと感じています。3回目の受験に向けた勉強のとき,友人2人とゼミを組み,司法試験の過去問を90分で解答し,その後,答案の回し読み,問題点の指摘を繰り返しました。これにより,自分では気づけないような答案上の形式面の問題点を把握することができたと思います。

 このゼミを週1~2回行い,試験本番のシミュレーションとして,公法系・刑事系なら1回につき2科目,民事系なら1回につき3科目を起案していました。これにより,本試験での忍耐力や司法試験で要求される答案の書き方を鍛えることができたと思います。
 ゼミの友人は2人とも2018年に合格し,私一人が取り残された状態にはなりましたが,上記ゼミでの友人のアドバイスを踏まえ,4回目の受験に向けて勉強を継続できたため,合格できたのではないかと思います。

6.
予備校

 一言だけ,予備校の模試は,司法試験受験生の中で自分の位置を把握できる唯一の機会であるため,金銭的に負担が大きいかもしれませんが受けることをお勧めします。


7.
その他

 1週間ごとに勉強の計画を立てるのが良いかと思います。試験は朝から行われることから,私は朝方の勉強をしていました。日曜日だけは絶対に勉強しないと決め,ひたすらゆっくり過ごしていました。


8.
おわりに

 いろいろと述べさせてもらいましたが,自分に必要な勉強内容を見つけ,それを達成できる勉強方法を確立し,それを継続することができるのであれば,ほぼ合格できたようなものです。

 問題は,自分に必要な勉強や,それを達成するための良い方法を見つけることが難しいことにあります。これを見つけるためには,やはり,ゼミなどを組み自分の弱点を他の人に判断してもらう必要があると思います。司法試験当日は個人戦ではありますが,その前段階の受験勉強中は団体戦です。そのため,お互い高め合える仲間とともに勉強に励んでみてください。
 長くなりましたが,以上が私の合格談となります。がんばってください。

以上

2013年3月修了 2018年予備試験合格 S.E

合格体験談


1 司法試験において重要なのは、やはり論文式試験だと思いますが、その論文式試験においては、私が大事だと感じたのは、以下の二点です。

 一つは、答案の型を確立すること、もう一つは、事実の評価を重視することです。

2(1) まず、答案の型を確立するという点について、答案の型とは、答案を作成する際の具体的な流れ、書き方のテンプレートを指します。各科目や、論点毎に、型が存在すると思います。これをしっかり構築することが、非常に重要であったと考えます。

 なぜなら、答案の型ができていると、必要に応じて論点が出てくるという、流れのよい答案ができるからです。論文式試験においては、自分の準備してきた論点が問題に出ると、つい、それに飛びついてしまい、論点主義的な答案になりがちだと思います。
 しかし、論文式試験では、あくまで、各科目とも、当該事案の法的問題について、これを指摘し、法を解釈、適用して、結論を導くことを求められているものと考えます。論点は、この中で、論ずべき点ですから、適切な流れの中で論ずることが必要です。
 答案の型を、しっかり確立し、準備しておくと、問題提起、規範定立、あてはめ、結論という流れの中で論ずべき点を論ずることができるため、採点者にとって、読みやすい答案が書けると思います。また、自分自身も、慌てることなく、答案構成ができ、充実した答案になると思います。
 また、参考書や、参考答案を読む際も、今、自分の答案の型でいうところのどの部分の話をしているかを意識することで、理解が高まり、記憶にも定着しやすくなると思います。
 (2) 答案の型の学び方について、私の場合は、市販の優秀答案や、先輩等の答案を見ながら、科目毎に、自分で整理をしました。
 憲法などは、特に顕著ですが、行政法や、刑法、刑事訴訟法なども、既に、論点毎に、確立された書き方がある科目だと思います。そのため、意識して、優秀答案や、参考書を見ていくことで、どのような書き方をすればいいかに、気づくことができると思います。
 民法や、民事訴訟法、商法といった科目においては、より細かく、論点毎に書き方が分かれてくると思います。そこで、えんしゅう本などの、市販の論文問題集を用いて、細かく書き方を検討するようにしていました。
 そのように、自分なりに、書き方を整理した後は、とにかくその型を身につけるため、これにそって、過去問などの問題演習を行っていました。解説を読むときも、自分の型でいうところのどの部分の話をしているのかを意識して読むようにしていました。このような勉強を繰り返していく中で、試験本番でも、慌てずに答案が書けるくらいには、型を確立することができたと思います。

3(1) 事実の評価を重視するという点について、これは、あてはめの段階では、自分で考えて評価を加えるということです。前述のように、答案において求められているのは、事案における事実について法律を適用し結論を導くことだと思います。そのためには、事実を摘示したうえで、これに評価を加えることが重要となります。

 あてはめについて、その前の、規範の定立までで力を使いすぎて、ただ問題文中の事実を羅列し、よって~となる、というように結論につなげてしまう答案がよくあります。
 しかし、私の実感としては、高い評価を受ける答案とは、論点に触れて、正しい規範を書けているというだけでなく、自分で考えていることが表れている答案だと思います。
 そして、自分で考えていることが表せるのが、あてはめにおける評価の部分だと思います。
 具体的に、評価とはどのようなことかというと、問題文中の事実を指摘した上で、この事実は、社会通念上、このような法的意味を持つ、法の趣旨にそって考えれば、~を示すものといえる、といったように、問題文中の事実について、自分で考えて、法的意味を持たせるということです。
 その際に重要なことは、法の趣旨や、社会通念から、自分で考えることです。あくまで、答案練習会や、本試験を経ての、私の実感ですが、規範を立てるまでの部分と違い、あてはめ、評価においては、正解や、このように書かなければというものはないと思います。ある程度自由に、社会通念や、自分の経験、自分の考えた法の趣旨をもとに、書いていい部分であり、むしろそれが求められているものだと考えます。私の答案も、自分で法の趣旨などに照らして考えたということが示せたときは、高い点がついていたように思います。
 (2) 事実を評価する力を身につけるには、自分の考えを示すのが大事といった点と、矛盾するように思えるかもしれませんが、人の答案をたくさん見ることだと思います。人の答案を見ることで、このような考え方もあるのか、こういうことを書いてもいいのか、ということを知ることができ、学ぶことは多いと思います。それを繰り返すうちに、自分で、評価を加える姿勢が身につくと思います。

4 以上、論文式試験について、重要と考えることを述べてきました。辛いことも多い受験生活ですが、その分、合格した時の達成感も大きいと思います。くじけそうなときは、今、自分は、うまくやれているはず、大丈夫と考えて、頑張って下さい。そのためにも、重要なポイントを押さえて、正しい勉強をしていただきたいと思います。

 

以上