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合格者体験談(2020年度)

2016年3月修了 H・M

第1.  はじめに
 私は、2020年度の司法試験に5回目の挑戦で合格しました。受験勉強の反省点から、司法試験に落ちないために重要だと感じたことをお話しします。
 皆さまの今後のご参考になれば幸いです。

第2.  短答式試験の勉強方法

1.          使用教材は、全科目『司法試験短答過去問パーフェクト』(辰已法律研究所)を使い、司法試験の過去問を解いていました。過去問のみで十分司法試験には対応できました。
 具体的には、問題集を繰り返し解き、間違えた問題や正解でも自分なりの理由付けが間違っていた問題の肢にチェックマークを付けます。チェックマークの数が多いところが自分の勉強や暗記の弱点であることがわかるので、付箋などをつけてすぐに参照できるようにしておきます。司法試験の直前期や短答式試験の直前は、付箋が残っているページのみに目を通し、弱点対策を行っていました。

2.          私は、1回目の受験のときは、短答式試験で2点足りずに(つまり1問差で)足切りにあい、かなり悔しい思いをしました。短答式試験の足切りにひっかかるのは基礎知識がまだまだ不足していることが原因であるため、短答式の勉強の時間を多めに取り、疑問があればすぐに基本書を確認して基礎知識を定着させました。2回目以降、短答式試験を通過するようになってからは、朝一で各教科の過去問を10問程度解いたら、残りは論文の勉強時間としていました。それでも短答式試験の平均点は取れたので、論文で勝負するためにはこれで十分だと思いました。

第3.  論文式試験の勉強で特に重要だと思ったこと

1.          答案の形式面についてですが、途中答案は厳禁です。私は書くのが遅く、途中答案の癖がなかなか抜けずに苦労しました。そこで、自分は1行に何文字書いているか及び1ページ書ききるのに何分かかるかを調べました。そして、今まで起案した答案の平均枚数から自分が時間内に書ける文字量を計算し、問題の配点割合に合わせて各設問を何ページ何行以内で書かなければならないかを調べました。私は1行35~40文字で、1ページ書ききるのに18分かかり、答案の平均枚数は5枚でした。そのため,配点の1割につき約11行(半ページぐらい)を目安に各設問の文章量を決めていました。
 さらに、実際に起案するときは、問題提起・規範・具体的検討をそれぞれ何行以内に書くかまで答案構成用紙にメモしていました。ここまで細かくメモをしておけば、書きすぎたときでもどこを少なく書けば文章量を調整できるかがわかりやすくなります。

2.          全科目の過去問の演習は必須です。解いた後、出題趣旨や採点実感もしっかりと読み、自分の論述に足りない点はないか確認していました。出題趣旨や採点実感は、どのような内容・程度の答案が求められているか知る目安になるので、しっかり読み込むことをお勧めします。
 そして、過去問に限らず作成した答案は必ず先生や友人に見せて添削してもらってください。人に見せることで自分の書き方の癖を知ることができます。説明がわかりにくい・理論のつながりが飛んでいる(又は足りない)・事実評価がない・結論が問いに対応していないといった内容面や、文字の大小・文字の読みやすさ・誤字脱字・接続詞の使い方・ナンバリングの誤りといった形式面など、人から指摘されて気づく点はかなり多かったです。

3.          自分のノートを作成することは本当に重要です。私は、ロースクール在学中は課題に追われ、ノートを作成することをサボっていました。しかし、ロースクールを修了して1回目の短答式試験に落ちた後、自分の知識を一元化する必要性を強く感じ、失敗ノートの作成をはじめました。
 具体的には、B6サイズの情報カードとバインダーを用意し、ゼミや模試などで不足していると感じた知識及びうまく書けなかった論証例をメモしました。基本書の内容を網羅しているわけではありませんでしたが、理解したものをバインダーから取り外していけば、試験直前期には自分専用の弱点ノートが出来上がります。試験会場にはこのバインダーだけ持っていけばよいのでとても重宝しました。

4.          暗記の時間はしっかりと確保しました。採点者は答案しか見ないので、自分が学習したことは答案に正確に書けなければ意味がありません。趣旨・定義・判例の規範やその理由付け等、他の受験者が書いてくると考えられるものは暗記必須です。私は上記の失敗ノートを最低限寝る直前と起床直後に目を通していました。

5.          予備校の模試等を受けた際は、必ず配点表を確認しました。自分の答案がどこで得点を逃しているかがわかりますし、司法試験の配点予想の参考にもなります。配点表を意識した論文が書ければ、戦略的に点数を取ることができます。苦手科目で落ちない答案を作りたいときにも参考になります。

第4.  受験生活について
 受験生活中は、心身の健康を保つことも重要になってきます。休むのも勉強のうちと思い、定期的に運動をしたり、友達と飲みに行ったり、趣味に没頭したりして、リフレッシュの時間を大切にしてください。私はよくカラオケで全力熱唱していました。
 また、普段から試験当日に合わせてスケジュールを組むのも大事です。起床時間や起案の時間を合わせると試験でも全力が出しやすいと思います。私は毎年自宅から会場に向かっていたので、朝5時30分に起床するよう生活を直しました。

第5.  おわりに
 司法試験は努力の方向性を間違えなければ受かる試験であるといわれています。自分なりの勉強法を確立し、心折れずにコツコツと積み重ねていけば必ず合格できます。
 皆さまの合格を心より応援しております。

以上

2016年3月修了生

 司法試験に合格するためには、合格答案のイメージと基本的な知識を得て反復練習をするという当たり前のことを淡々とこなす必要があります。

 合格体験記という趣旨からやや離れるかもしれませんが、私の合格体験から得られたコツのようなものを以下に述べていきたいと思います。

 

1 合格答案のイメージ

 論文式試験に受かるとは、合格基準点以上の評価を受ける合格答案を書くことです。そのため、合格答案について具体的なイメージを持つことが重要になります。

 合格答案のイメージについては、各年の司法試験の採点実感に記載されている「優秀」「良好」「一応の水準」「不良」が参考になるでしょう。法務省によると、100点満点の場合の各区分と得点の範囲との対応は、「優秀」(10075)「良好」(7458)「一応の水準」(5742)「不良」(410)となっており、各年の合格点をみると、「一応の水準」の幅の中に収まっています。

 このことからすれば、その当時の司法試験論文式試験に最低限合格するためには、「一応の水準」の答案が書ければよいことがわかります。ただし、あくまで「当時の司法試験論文式試験」という点には注意が必要です。なぜなら、司法試験で出題された論点については多くの受験生が勉強しており、次に同じ論点が出題された際には受験生の答案の出来が良くなっていることが多いからです。

 また、採点実感は科目や年度によっては不明確・不十分な記載に留まる場合がありますし、採点実感の記載を読んでも答案の具体的なイメージが湧かないという場合があるでしょう。

 その場合には、先輩合格者によるゼミ・添削、予備校の講座または合格者の再現答案などを活用することが考えられます。もっとも、それらを活用する際にも、最低限合格するにはどの程度の答案であればよいのかという視点が不可欠です。

 

参考資料「司法試験の方式・内容等について」令和元年1111日司法試験考査委員会議申合わせ事項

 

2 基本的な知識

 まず基本である、原理原則、体系、制度趣旨および条文を押さえてから、それらとの関係を踏まえながら論点や重要判例を学ぶ、というのが良い勉強方法だと思います。基本と紐付けられていない細切れの論点や判例知識はすぐ忘れてしまいますし、応用問題が出されたときに答えられなくなってしまいます。

 論点を原理原則や制度趣旨と関連づけて理解することについて、やや具体的な話をしてみましょう。

 多くの論点は、次の3パターンに整理することができると思います。

①その条文の文言が明確ではないため、解釈によって明確にする必要がある場合

②ある事案について、条文や原則の通りにすると妥当な結論とならないので、条文や原則の例外を解釈により導く必要がある場合

③条文の類推適用や転用をする場合

 例えば、「公共の危険」(刑法1101項)の意義は①、「第三者」(会社法4291項)に株主が含まれるかは②、民法942項の類推適用は③です。

 原理原則や制度趣旨が、①②③それぞれのパターンの論点で理解に役立ちます。すなわち、①の場合は、その条文の制度趣旨の理解がどのようにされるべきなのかがポイントになります。②の場合は、例外的な解釈をする必要性という視点と、例外的な解釈をすることにより当事者の正当な利益が害されたり制度趣旨や原則の趣旨が没却されないかという許容性の視点がポイントになります。③の場合は、類推適用や転用をする必要性という視点と、類推や転用の基礎(条文の制度趣旨がその事案にも当てはまるか)があるかという視点がポイントになります。

 もちろん勉強の途中の段階では、何が原理・原則で、制度趣旨はどのようなものなのかもよくわからないということがあるでしょう。その場合には、定評のある基本書を一読するべきです。毎日読むページ数を決めて機械的に読み進めましょう。

 

3 補論

・短答式の勉強方法は、司法試験短答式試験の過去問を何度も回すこと。これに尽きると思います。十分な問題量がありますし(18年・19年あたりの意地の悪い問題はやらなくてもいいです)、同じ択一知識を問う問題が繰り返し出題されています。

・民法の短答式の問題は、全ての選択肢の正誤がわからなくても、消去法により正解の組み合わせがわかることが多いです。つまり、選択肢の中には受験生がわからないであろう難しいものも含まれているのですが、正解を選ぶにはそのような難しい選択肢の正誤はわからなくていいのです。肢別本のような選択肢がバラバラになっている教材を使うと、このような難しい選択肢も覚えることになってしまい効率が悪いです。

・答案を書く速度が遅いのは、規範・定義を正確に暗記しておらずすぐに思い出せないことや、答案の型を決めていないこと、論点の理解の不正確さなどが原因であることが多いです。

 

・先輩合格者にゼミ・添削して頂く際には、その合格者の合格年度を知っておいた方がいいです。というのも平成30年頃から、司法試験はそれ以前とは問題の傾向をやや変えてきており、従来の答案の型がそのまま使えるとは限らないからです。また、単純に、司法試験合格から年月が経ち過ぎると、司法試験の現場感覚が失われ、司法試験受験生であればどのくらいの知識がありどのくらいの答案が書けるかなどの水準がわからなくなるからです。先輩合格者の合格年度を知った上で、有益な部分は吸収し、必要な部分は自分で補う必要があります。

2020年3月修了 H・Y

1.司法試験の受験を決意した経緯

 司法試験を目指した理由は他の合格者の方のように高尚な理由があるわけではなく、学部時代の友達に司法試験を受験しようと誘われたからです。そのため、何か明確な法曹像があるわけではありませんでした。大学在学中は漠然と公務員試験を受けるつもりでしたが、友達に誘われるまま深く考えずに司法試験の受験を決めました。

 

2.具体的な受験対策

⑴短答対策

  私はとにかく短答が苦手でしたので、周りの受験生より量をこなさないといけないことは自覚していました。そもそも暗記が苦手でしたので、予備試験も計3回受験しましたが、全て短答落ちでした。模試でも短答は平均点より悪い点数でしたし、司法試験本番でも平均点はとれませんでした。したがって、自信をもって短答対策を記載することはできないのですが、私が行っていた短答対策について書かせていただきます。

  基本的には周りの受験生と似たようなやり方だとは思いますが、新司法試験の短答の過去問を印刷したうえで時間を計って解き、市販の教材を用いて正誤判定をし、間違えた肢の条文・判旨は判例六法にマーキングする方法を採っていました。そして、模試や司法試験本番前はこの六法だけを見直すということをしていました。正直短答はやり方に個性を出しにくいものだと思うので、愚直にたくさんの問題を解いて知識を付けていってほしいと思います。

⑵論文対策

  論文は論文の型を覚えないとそもそも書けませんので、まずは論文インプットの教材を用いて読書感覚で前から順番に読んでいきました。これを繰り返すと何となく論文の型を覚えてきますので、そうしたら次のステップとして答案構成を行い、答案例と比較してどこができていないのか、どうすれば書けたのかを検討します。単純に知識不足の場合もあれば表現の仕方が下手だった場合もあります。それぞれの対応を予め決めておいたうえで、答案構成の質を高めていくために何周もこの作業を繰り返します。

  ここで、実際に答案を書くか否かについては意見が分かれると思いますが、個人的には答案構成に留めておいてもいいのではないかと思います。なぜなら、フルで答案を書こうとすると心理的なハードルが上がり、勉強自体が億劫になる可能性があるだけでなく、時間もかかるため1周するのに何日も要することになります。そのため、論文インプットの段階では答案構成に留め、フルで答案を書く練習は答練を用いて行うことが効率のいい勉強法なのではないかと考えます。

  論文インプットの教材をある程度こなして力がついてきたら実際に答練を受講して「初見の問題を」「2時間で」「途中答案にならないように」「書ききる」練習をすることになります。司法試験本番では「初見の問題を」「2時間で」「途中答案にならないように」「書ききる」ことが求められますので、この練習をしないと合格は遠のくように思います。そこで、答練は必ず受講すべきであり、答案を書けば書くほど自信にも繋がります。もっとも、ただ書けばいいというものではなく、答案の型が身に付いていない状態で答練を受けても意味がありませんし、復習を疎かにしても受けた意味がありません。自分の中で答案の型がある程度分かったうえで、かつ、しっかりとした復習法が頭にある状態で受けるべきだと思います。

⑶過去問対策

私は過去問対策については出題趣旨・採点実感を読んだうえで答案例を写経することをしていました。過去問対策として挙げられる再現答案の分析は全く行わず、完全解の理解に努めていました。再現答案はいわゆるお色直しがされており、試験当日に書かれたものよりだいぶ出来の良いものが並んでいます。再現答案を実際に作成されると分かりますが、試験当日に何を書いたのかの記憶はだんだんと薄れていくものであり、実際に作成するときには論証を見ながら作成する受験生もいるとの話を聞きます。このような答案を分析することの意味が正直理解できなかったため、私は再現答案の分析という王道の勉強方法は捨てることにしました(実際、不合格答案とされているものの中には、これで不合格なのかと疑わざるを得ない答案が散見されます)

 

3.自己の反省を踏まえ、これから受験する方へのアドバイス

 私は短答が最後まで苦手でしたが、司法試験の場合は短答で足切りに合う受験生も一定数いるうえ、総合点を出すときには1科目分として換算されます。そのため、短答を甘く見てはいけないと思います(別に私も短答を舐めていたわけではありませんが…)。とくに民法は範囲が広いうえに配点も憲法刑法と比べると高いため、毎日少しずつでも触れた方がいいと思います。

 また、法科大学院に入学する方の中には自主ゼミを組むのがデフォだと考えている方もいるかもしれませんが、私は自主ゼミを組むことなく1人で勉強していましたし、無理に自主ゼミを組むことで自分のペースが乱されるようなことがあっては本末転倒です。自分がどのようなタイプでどのような勉強法が合っているのかを早めに見つけることは早期合格の鍵になると考えています。

 司法試験の合格者は1500人近くいるのですから、勉強のやり方も千差万別です。様々な情報の中から取捨選択したうえでベストな勉強法を見つけてください。皆さまの司法試験合格を心よりお祈り申し上げます。

 

 

2020年3月修了生

合格体験記

1.         はじめに

 私は、社会人を経験した後、明治大学専門職大学院法務研究科の既習者コースに進学しました。そして、幸運にも1回目の挑戦で司法試験に合格することができました。

世の中には多くの合格体験記がありますが、学習の進度や向き不向きと相談し、取捨選択することが大切だと思います。この合格体験記では、時系列的にどのような勉強をしたかを記していこうと思いますので、参考にしていただけると幸いです。

 

2.         ロースクール入学時〜既習1年目

主観的なものになりますが、ロースクール入学時の学力は以下の通りです。

・憲法/民法/刑法

予備校の論証集をおぼろげに暗記している程度でした。基本書や判例百選をきちんと読んだことはなく、条文を引くのもやっとでした。

・民事訴訟法/刑事訴訟法

予備校の基礎講座を1回聞いた程度で、ほとんど何も理解していませんでした。

・会社法

全くの初学者でした。

・行政法

他の科目よりは理解が進んでいたように感じます。ただ、司法試験レベルには到底到達していませんでした。

 

上記のような状態ではロースクールの授業についていくことさえ難しく、留年の恐怖に怯えていました。そこで、ロースクールの講義と予備校の基礎講座を並行して受講し、基礎固めに重点をおきました。規範の暗記と条文を引けるようになることが最優先事項だと考え、問題演習はほとんど行っていませんでした。

具体的な勉強法は、ロースクールの講義や基本書・百選を読んで学んだことを予備校のテキストに一元化して、それを理解し、暗記していくというものです。予備校の利用には賛否両論ありますが、試験対策の教材としてはまとまっていて使用しやすいと思います。しかし、各所で指摘されるように正確性には若干の疑いもありますので、疑問が生じたら基本書等で確認し、自ら修正するという姿勢が不可欠だと思います。予備校テキストへの一元化は、司法試験直前まで続けていました。問題の処理方法や答案構成で意識することなど、その一冊を見ればそれまで学んだことが思い出せるように工夫していました。人間の記憶には限界があり、司法試験までに学んだ全てのことを記憶しておくことは不可能です。試験直前にどれだけ記憶を呼び起こすことができるかが勝負を分けると思うので、参考にしていただけると幸いです。

 

3.         ロースクール2年目

1年目は、上記の勉強で精一杯だったため、問題演習はほとんど行うことができておらず、司法試験の過去問を一度も見たことのない科目の方が多いような状態でした。

 そこで、2年目は問題演習に重点を置くようにしました。前期は、ロースクールで演習の授業が増えるため、答案を多く書くようにしていました。この時点では、司法試験の過去問に取り組む力もなかったので、短文事例問題が中心でした。予備校の教材や市販の問題集など、評判のよい教材をインターネット等で調べ、実際に書店で内容を確認して自分に合うものを選ぶのが良いと思います。

 ゼミについては、補助講師の先生を交えたものに参加していました。そこでは、過去問の起案をし、添削をしてもらっていました。自分の書いた文章を他人に読んでもらうのはとても大切だと思います。自分がわかっているつもりで書いても伝わりにくい文章になっていたり、論証のバランスが悪かったりと修正する箇所は多いので、可能であれば合格者に添削してもらうと実力が上がると思います。一方で、自主ゼミといわれる学生だけで行うゼミは組んでいませんでした。自主ゼミを組んでいなかったことに積極的な理由はなく、ただ時間的な余裕がなかったためです。

 夏休み以降は、過去問に取り組む時間を増やしました。過去問で聞かれたことが繰り返し出題されることも多いので、できる限り丁寧に検討することが必要だと思います。過去問に取り組む際は、再現答案を参照していました。司法試験も「試験」である以上、試験会場で書ける現実的な内容はどういったものか、どの程度の答案でどの程度の評価を獲得できるのかを知ることはとても大切です。

 

4.         ロースクール修了〜試験当日まで

ロースクール終了後は、短答式試験対策にかける時間を増やしました。それまで、本格的に短答式試験対策をしていなかったので、3月に行われた予備校の模試では絶望的な点数をとっていました。私は、この時期にかなり短答式試験対策に時間を割くことになってしまいましたが、可能であればコツコツ進めておくべきです。短答式試験の教材は、短答過去問パーフェクトを使用しました。試験本番と同じ形式で、選択肢の切り方を練習することができ、かつ、問題が体系的に並んでいるので、知識の整理にもなります。

 その他には、それまで作っていた一元化した予備校教材を隅から隅まで読み直しました。そして、論証の暗記を重点的に行いました。

 令和2年は、司法試験が3ヶ月も延期になったため、特例ではありますがその期間の過ごし方も紹介します。私は、過去問検討が全年度分終わっていなかったので、手の回っていない過去問の検討を重点的に行いました。また、知識が抜けてしまうのが怖かったので、短答式試験対策と論証の暗記は継続して行いました。

 

5.         最後に

 司法試験は運の要素も含みます。私も、もう一度受験して合格するかと言われれば、自信はありません。ただ、合格可能性をあげることはできます。そのためには、自分に合った勉強方法を確立し、進度に応じて軌道修正をすることが大切だと思います。それまでやってきた勉強法を変えることには勇気がいると思いますが、いろいろな方法を試してみて自分に合ったものを見つけてください。皆さんが合格できることを心から祈っています。

 

以上

2020年3月修了 T・H

合格体験記

                                    

令和元年度 明治大学法科大学院修了

令和二年度 司法試験合格

                                           

1,志望動機

会社員生活を経て、定年に関係なく働ける資格が欲しいと思ったこと、苦しい立場の人の力になりたいと考えたことから、学生時代に漠然とあこがれていた弁護士を目指そう決めました。

2,短答対策

(1)   使用教材

憲法・刑法は『短答パーフェクト』(辰已法律研究所)、民法は『体系別 短答式過去問題集』(LEC)です。民法だけLECを選んだのは、1冊にまとまっていること、解説が比較的コンパクトであることが理由です。もっとも、LECの問題集は初期の問題の正答率が載っていないので、正答率で問題を絞ろうと考えている人は注意が必要です。

(2)   勉強方法

学期中は法制研の短答特訓講座をペースメーカーにしました。忙しい中でも強制的に勉強ができますし、ゼミの先生に、いろいろと質問ができますのでおススメです。既習2年の夏休みから、友人と一緒に20問を40分で解く会を始めました。ロースクール終了後は、1日40問に増やしました。今年はコロナの影響で試験が3か月延期になり、結果的に問題数を稼げました。最終的に全科目5周程度は回しました。

(3)   取り組み方

憲法は、判例がある問題については、長めに引用している判例(『逐条テキスト 憲法』早稲田経営出版など)を必ず読み、ポイントとなる文にマークしました。

直前期はマーク部分のみを読み返しました。統治は、暗記要素が強いので、直前期に条文素読で暗記に努めました。民法は、解説・条文を読み、出題された条文と判例について、逐条テキストにマークし、直前期はマーク部分を読み返しました。刑法は、基本的に過去問とその解説のみです。論文の理解があれば、合格点はとれると思います。あとは、贈収賄や放火、刑の減免など、暗記プロパーを直前期に詰め込みました。

1,論文対策

(1)   方針と使用教材

   ア、勉強方法の方針は、1,過去問 2,問題集 3,規範の暗記を3本柱にすることでした。基本書は辞書として利用しました。特に過去問には最優先に取り組みました。2年夏休みから、クラスの友人2人と週3回の過去問ゼミを組みました。ここで1問につき12~15時間くらいかけて徹底的に過去問を検討しました。具体的には起案、起案直後の小ゼミ、各自復習、添削、事後ゼミ(自作レジュメに沿った正解筋の検討、メンバー答案の検討))を実施しました。2年の夏休みはほぼこれで終わりました。かなりきつかったですが、底力がついた気がします。このゼミは、回数や内容を修正しながら、受験1週間前まで2年間実施し、常に論文対策の柱の一つでした。ゼミのメンバーに感謝しています。

   イ、授業についてですが、明治ローには素晴らしい先生がたくさんいらっしゃいます。そのような先生の授業は真剣に取り組みました。先生方は、我々の情熱に報いてくださいます。私は司法試験に関係ない講義についても、ほぼすべての授業に全力で取り組みましたが、これは人によると思います。聴講も何科目かしていたため、過労で倒れそうになりました。ほかにも、副担任ゼミ、L特ゼミ、教育補助講師ゼミ、合格者ゼミなど、積極的に利用しました。

   ウ、教材は、最終的に1科目1冊にしました。これは功を奏したと思います。お薦めは、行政法は『事例研究 行政法』、民法は旧試験の過去問、民訴は『ロジカル民事訴訟法』、商法は『ロープラクティス商法』、刑法は受験新法の大塚先生の連載(特に旧試験と予備試験の過去問)、刑事訴訟法は『事例演習 刑事訴訟法』、労働法は『事例演習 労働法』です。これらの問題集については1問15分でどんどん解いて質疑応答するゼミを4人で組み、3年の期末試験後に2か月実施しました。過去問研究については、法科大学院の演習のほか、資格スクエアの加藤講師の講座かLECの矢島講師のものがおすすめです。

   エ、暗記はかなり苦手でした。最後まで苦戦しました。一番の反省点は暗記から逃げたことです。

   オ、私は筆力がなく、本番でも全科目5ページ程度が限界でしたが、その分答案構成に力を入れ、内容で勝負しました。結果もそこまで悪くなかったので、筆力がない人は、分析力で勝負するのも方法かもしれません。

4,最後に

   メンタルについてですが、私は二人で同じ場所で勉強し、相互に監視する方法で緊張感を保ちました。合格してみると、本当に司法試験は基本的な概念や論点がマスターできていれば受かるんだなと思います。私としては、過去問を素材として重要分野の理解に徹底して取り組むことが一番の司法試験対策だと感じました。合格の瞬間はうれしかったです。親や友人、先生方が喜んでくださることが、とくにうれしかったです。受験期間は苦しいことが9割でしたが、その中でもローの友人と飲みに行ったり、励ましあったりしていました。今まさに苦しんでいる受験生の皆さんにエールを送ります。

 次の司法試験に絶対に合格してください。そう決めて、毎日突き進んでください。

 

 今は見えないかもしれませんが、合格は手の届くところに迫っています。

2020年3月修了 A・I

 合格体験記

1 経歴

20183月 大阪経済法科大学 法学部法律学科 卒業

20184月 明治大学専門職大学院 法務研究科 法務専攻(既修)入学

2020年3月 明治大学専門職大学院 法務研究科 法務専攻(既修)修了

20211月 令和2年度司法試験 合格

 

2 はじめに

 幼いころから、法曹になりたいという夢がありました。しかし、私は大学に入学するまでまともに勉強をしたこともなく(というかなぜ勉強しなきゃいけないのかが分かりませんでした)、いわゆるテストのための勉強しかしてきませんでした。そのため、成績は悪く、司法試験を目指しているなんて恥ずかしくて口にはできませんでした。そんな感じで大学に入学しましたが、こんな中途半端な人生は嫌だと思い、一念発起して勉強を始めました。その結果、予備校などを利用することなく一発で司法試験に合格することができました。そのため、私が以下に紹介する勉強方法は、あくまでも、勉強が苦手な私には合っていたというだけです。ただ私の体験談で、こんなやつでも司法試験に合格できるのだとみなさんが自信をつけてくれたり、少しでも参考になれたらと思い、お話させていただきます。

 

3 法律の勉強を始めた頃(大学生時代)

 私の通っていた大学では、司法試験を目指す人向けの学内講座が開講されていたので、その講座を受講しました。まず民法から勉強が始まったのですが、理論的な話が始まり、聞いたこともない難しい法律用語が飛び交うので、私には法律の勉強は無理だといきなり挫折しました(笑)。その第一印象が抜けず、今でも民法は苦手であまり好きではありません。そこで、個人的にお勧めするのは刑事系科目から勉強してみることです。普段のニュース等でも事件報道はされていますし、警察24時のような番組では職務質問の様子なども流れています。法律科目の中でも一番なじみがあり、具体的なイメージをもつことができるので、苦手意識を持たずに勉強に入っていけるのではないかと思います。

 次のおすすめは、勉強を始めた最初の頃に、司法試験の過去問を見てみることです。解く必要までありません。全科目、問題文だけでも読んでみてください。きっと、ちんぷんかんぷんで何を言っているのかもわからないのが最初だと思います。でも、先にゴールを見据えておくことで、逆算しながら勉強を進めていくことができます。ターゲットを知ることや、合格にどのくらいの力が求められているのかを知ることは大事です。私も興味本位で読んでみましたが、後々、すごくよかったと感じています。あとは、ある程度勉強が進んでからもう一度過去問を見たときに問題の意味が分かるようになっているので、自分の成長に気づくことができてモチベも上がります(笑)。

 そしてどんなに分からなくても起案の機会を設けていました。インプットの次の日はアウトプットを必ずしていました。最初は参考答案を写すことからでしたが、まずは問題文だけ読んで、自分の頭で一応の解答を考えていました。自分の中で答えを出してから、解答を見たり基本書を読んだりして答え合わせをしていきます。この繰り返しで初見の問題でも自分の頭で考えて答えを出す力が養われていったのかと思います。またアウトプットをすることで、どれだけインプットが足りていないかを痛感できます。そもそも論点に気づかなかったのか、問題になるところには気づけたけど定義や規範を覚えていなかったから書けなかったのか、規範まではしっかり出せたけどあてはめを間違えたのか…。どこが出来ていないかで今後の勉強内容も変わってきますので、適宜アウトプットをして自分の位置を客観的に知ることが大事です。個人的には、定義については暗記ノートを作って毎日寝る前に音読をして暗記の時間をとっていました。これを大学時代にやっていたことでロースクールに入ってから助けられたのだと思います。

 

4 ロースクールに入ってからの勉強

 授業の予習が大変でしたが、予習の段階で司法試験の対策もしていました。授業の予習については制限時間を決めてその範囲内で出来ることをやるようにしていました。もっとも、明治ローの授業は有益なものが多いので、司法試験の論文対策としても先生方が作成した演習問題をひたすらに繰り返していました。

 2年次の夏休みからは自主ゼミを組んでいました。2つのゼミに参加していましたが、どちらも私より賢い成績の良い人たちと組ませていただいていました。取り扱う問題はすべて過去問です。このゼミの中で過去問はプレテストも含めて全年度分、解きましたし出題趣旨や採点実感も読み込みました。また解いたことのある問題は10分や20分、時間を短くして解いていくようにしました。特に有意義だったのは相互添削です。自分ではきちんと意味を持って書いているつもりでも、客観的には伝わらない記載や違う意味に捉えられてしまう場合などが多くあります。自分が口頭で補足説明をしなくても伝わるような答案を書けるようになるまで時間がかかりましたが、これを継続することで自分の悪い癖を直して複数人が読んでもそんなに評価が変わらない答案を書けるようになってきたと思います。

 それからどうしても後回しになる選択科目は長期休みを利用して対策をすることをお勧めします。私は労働法選択でしたが、同期の労働法選択者とゼミを組んで過去問全年度を解きました。ゼミを組むことで半ば強制的に勉強しなければならず、ある程度の時間はとられてしまいますが、後から思い返すとすごく有意義だったと思います。

 

5 司法試験直前期

 2020年はコロナで、直前に司法試験の延期が決定しました。ロースクールに入ってからの2年間、毎朝8時~9時には登校して、21時~22時まで自習室で勉強する毎日を送っていた私にとっては、直前に勉強場所がなくなることが大打撃でした。延期後の日程も明らかではありませんでしたが、それでも私がすべきことは勉強に変わらないと思い、気が乗らない日も机には向かいました。

 私はずっと短答式試験の点数が悪く、模試では合格ラインを超えたことがありませんでした。そのため、直前期はとにかく短答対策をしていました。毎日条文の音読と法制研究所の短答対策講座で配布された問題集を何周もこなしました。民法の配点が大きいことや改正法での出題とのことで、特に民法には時間をかけました。短答は足切りを超えればOKという意見もありますが、個人的にはそうは思いません。私自身、司法試験の論文の成績はかなり悪かったですが、短答式試験で133点取れたことで合格できました。短答対策を馬鹿にしてはいけないと思います。

 論文対策は本番3日前まで自主ゼミメンバーとオンラインでこれまで通り、過去問の起案と相互添削を行っていました。精神状態が不安定になる時期でもこれまで頑張ってきたメンバーと一緒に勉強できたことで平穏を保つことができたと思います。

 

6 最後に

 私の勉強は、基本書を読む→過去問や授業での演習問題を解く→復習、をひたすら繰り返してきただけです。予備校本を利用したこともありません。それでも毎日コツコツ勉強していれば必ず合格できる試験です。分からないことは知ったかぶりをせずに、ひたすら理解するまで先生や同期の友人に教えてもらっていました。どんなに対策をしてきても、本番ではめちゃくちゃ緊張しますし、普段やらないようなミスもあるでしょう。しかし、勉強してきていれば「何とか足掻けるかもしれない」と思えます。また、5日間の試験で長丁場となりますが、最後の1秒まで諦めないことです。最後の最後まで挽回することは可能です。いつも通りの実力をいつも通り発揮することが難しい試験ですが、必ず結果はついてくるので頑張ってください。心より応援しております。

2019年予備試験合格  2020年3月卒業 Y・K

 合格体験記

 

0.自己紹介

私は大学4年時に予備試験に合格し、翌年度の司法試験に合格しました。入学当初は法科大学院に進学する予定でした。予備試験というものが具体的にどのような制度なのかも知りませんでした。しかし私が一年生の時に明治大学内で「予備試験対策講座」というものが始まり、その講義を受ける過程で具体的に予備試験を意識し、合格を目指そうと思いました。

以下では予備試験の勉強法、予備試験合格後の司法試験までの勉強法についてお話しできればと思います。

 

1. 予備試験

 

・短答式の勉強方法

過去問以外やらなくていいです。参考書は短答過去問パーフェクトがいいです。私は一回目の試験の時はこれを6周、二回目の試験の時は5周しました(4周目以降は間違えた箇所や自信のない箇所だけ)。意識すべきは過去問に出てきた肢は必ず本番で出し切れるようにすることです。これが未知の問題に対する一番の対処法です。肢別本と過去問パーフェクトはどっちでもいいです。ただ過去問パーフェクトの方が短答合格するための必要最小限度の実力を早く身に付けられるように思います。

 

・論文式の勉強法

何よりまず過去問を解くべきです。演習書をたくさん解く人もいますが、優先順位は予備過去問→新司過去問→旧司過去問→演習書です。演習書はよっぽど解き方がわからない場合にのみ手を出すべきです(私の場合は行政法がそうでした)。特に早めに予備過去問を一周して、新司過去問に着手すべきです。なぜなら新司の出題趣旨、採点実感は充実しており、これを通して論述の構成やあてはめの方法について多くを学べます。

まとめノートとしては趣旨規範ハンドブックを利用しました。まとめノートは論文対策に必須です。作成には早めに着手しましょう。ベースとなる教材(ハンドブック、北斗論証集等)から加筆していくのも、一から作成するのもありです。過去問を解く過程で気づいたことを忘れないように書き込むことが大切です。論証はなるべく短く、キーワードを覚える感じで暗記するのがコツです。

あとはたくさん答案を書いて添削してもらうことです。書けば書くほど伸びると思います。私は大学1年から明治大学の予備試験対策講座、大学3年から明大法曹会答練、大学3年時の辰巳法律研究所によるスタンダード論文答練で答案を書きまくりました。書いた答案をなるべく合格者に添削してもらうことが大切です。自分では気づけないミスが絶対にありますし、何より採点方法がブラックボックスの状態なので、合格者のアドバイスは合格に向けて参考になります。

 

・口述の勉強方法

 口述は新しいことに手を出さず、これまでの短答∙論文知識を本番までに維持できていれば十分に受かる試験です。ただし民事については要件事実が出題されます。これについては論文試験のレベルを超えているように感じるので、対策が必要です。私は新門研3周、類型別4周、大島本4周しました。また、民事保全執行についても加点事由だとは思いますが、論文レベルを超えた問題が出るので、対策が必要です。私は辰已の実務基礎ハンドブックを使用しました。とはいえ合格率は90%を超えており、緊張せずに受け答えさえできれば必ず合格します。私も落ちたと思い結果発表までの十日間かなり落ち込んで過ごしましたが、無事受かっていました。私を含めた周囲の受験生も勉強は論文合格後の二週間しかしていないという人がほとんどでした。心配な方は論文試験後から要件事実、民事保全執行の対策をしておくことをお勧めします。

 

2. 司法試験

 

・短答式の勉強法

予備試験の短答の方が難しいので、あまり時間をかける必要はありません。ただ注意が必要なのは予備試験と異なり司法試験では短答の点数が最終合格に影響するということです。そのためある程度余裕をもって受かることが必要になります。

私は三科目の予備試験、司法試験の過去問を3周しました。それで十分だと思います。過去問の教材としては短答過去問パーフェクトを使用しました。

 

・論文式の勉強法

論文の問題自体は予備試験より複雑で難しいです。もっとも問題が難しいだけで合格難易度は予備試験が上です。

 予備試験合格者は何よりもまず司法試験の問題形式に慣れることが大切です。分量も多く事案も複雑なため、慣れないと本番に本来の力を発揮できない恐れがあります。そのため予備試験の合格発表後はすぐさま過去問に取り組んでください。予備校の答練や新しい演習書、基本書には基本的に手を出す必要はありません。すでに論文合格に必要な知識は予備試験合格時点で備わっているので、下手に新たな知識を身につけようとしないことが大事です。そして過去問を解いた後は出題趣旨、採点実感を読み込んでください。採点者が何を聞いているのか、どんなことを書けばいいのか、そのようなことが詳細に書かれています。これをぜひ答案の改善に活かしてください。

 私は新司の過去問をすべて3周しました。答案を実際に書いたのは一週目の直近6年程で、残りは答案構成だけにとどめました。一科目答案を実際に書くのに2時間を要し、予備試験合格発表から司法試験まで時間が少ないため、あまり答案を実際に書く機会は作れません。そのため、一回一回本番のように臨むことが大切です。

 

・選択科目の勉強法

 まずはどの科目にするのか速やかに決めてください。そして時間がないので、予備校の基礎講座や基本書を通じて、基礎を素早く身につけてください。後回しにして時間が足りなくなることを最も警戒すべきです。選択科目のための勉強時間を十分確保できる勉強計画を立てることが極めて大切です。

予備試験合格者は労働法を選択する方が多いと聞きます。また労働法が選択科目の中で一番教材が充実していると聞きます。そのため私も労働法を選択しました。以下私の労働法の勉強法につき説明していきます。

 私は予備試験最終合格まで選択科目に一切触れていなかったので、十分な時間がありませんでした。まず基礎を基本書の通読で身につけようとしましたが、時間がかかりそうだったので、伊藤塾の労働法基礎講座を受講しました。これを大急ぎで3周回しました。そしてこれと並行して「一冊だけで労働法(辰已)」に同講座や基本書で得た知識を書き込む等して、論文式試験に対応できるようこれを自分用にカスタマイズしていきました。基礎講座終了後は、新司の全過去問を1周しました。「一冊だけで労働法」に平成28年度までの出題趣旨、採点実感及び再現答案が載っていて、それを参考にしていました。手に入らない年度はネットから再現答案を集めました。過去問を1周した後は、「事例演習労働法」を1周しました。その後更に過去問、「事例演習労働法」を一周しました。直近三年分の過去問について一回ずつ実際に答案を書きました。時間がかかりますが答案構成、時間配分等がほかの科目と異なるので3回ほど答案を実際に書いてみることは必要だと思います。

 

3.その他合格に役立つ方法

勉強計画表の作成が必須です。私は試験まで月単位、週単位、日単位でやるべき勉強内容を決めていました。計画表を自分の机の前に貼って、やった分だけマーカーで塗りつぶしていました。計画表を作成する際には急用等が入ることを考え、詰め込みすぎず余裕を持つことが大事です。

また勉強はコツコツとすることが大事です。特に予備試験、司法試験は範囲が膨大なので、できるだけ早い周期で全範囲に触れることが必須です。

 

4.参考書

憲法→憲法(芦部)、憲法Ⅰ基本権(渡辺他)

行政法→行政法(さくはし)、基礎演習行政法(土田)

民法→総則∙物権(佐久間)、担保物件(松井)、債権総論(中田)、債権各論(塩見)、親族(LQ

商法→会社法(田中)、北斗論証集(手形小切手対策)

民事訴訟法→民事訴訟法(LQ

刑法→基本刑法ⅠⅡ(大塚他)

刑事訴訟法→刑事訴訟法(LQ)、事例演習刑事訴訟法(古江)

民事実務→新門研

口述→新門研、類型別、大島本、民事実務基礎ハンドブック、刑事実務基礎ハンドブック

労働法→労働法(水町)、詳解労働法(水町)、労働法(菅野)、事例演習労働法(水町、緒方)、一冊だけで労働法(辰已)

 

2020年3月修了 H・T

 司法試験 合格体験記 

 

第1 経歴

私は、早稲田大学社会科学部卒業者で、2020年3月に明治大学法科大学院を修了し、令和2年度の司法試験に合格しました。

 

第2 法曹の志望動機

 私が法曹の道を志すようになったのは、最初は、ドラマを見て弁護士にあこがれたのがきっかけです。そして、法律の勉強をするのが面白かったこと、また、働くうえでは専門知識を身につけて勝負したいと考えるようになったこと、さらに、親友が交通事故に巻き込まれた際に弁護士の先生に大変お世話になって感謝しているという話を聞いたこと、これらの経験から自分の将来の進路として法曹の道を進もうと決めました。

 

第3 短答式試験

短答対策は、辰已法律研究所出版の「短答過去問パーフェクト」を使いました。この本を使い、まず、司法試験が開始した2006年~2019年までの司法試験・予備試験で出された3科目全ての短答の過去問題を解きます。この時、単に正解すればいいというのではなく、自信を持って正解した問題・なんとなく正解した問題・間違った問題の3つに分けてチェックします。そして、なんとなく正解した問題と間違った問題は、どんな知識があやふやだったのかを分析して、裏の解説にマーカーを引いたり基本書の該当箇所にマーカーを引いたりします。短答対策は、電車の中や寝る前の10分間など隙間時間に対策をしました。この隙間時間に、自分でマーカーを引いた個所をパラパラと見返す事を繰り返しました。そうして、1度短答過去問と解いてからしばらく時間が経った後に、2周目として、前回、なんとなく正解した問題と間違った問題だけを解きます。このような作業を繰り返していき、短答対策をしていきました。

 

第4 論文試験

1 全科目共通

論文式試験全てに共通した話をしますと、まずは、ロースクールの授業や基本書を読む等して、基本的な知識を身につけるのが良いと思います。この時に大切なのは、最初からあまり完璧を目指そうとしない事です。初めはわからなくてつまずく事も多いと思います。それでも、繰り返していけばだんだんと分かってくるものです。ある程度、知識を身につけたら、実際に司法試験の論文の過去問を2時間(選択科目は3時間)で書いてみる事をオススメします。最初は、あまりできないかもしれませんが、ゴールから逆算して、今の自分に何が足りないのか、しっかりと分析する事が大切です。個人的には、演習書に取り掛かるよりも先に論文の過去問に取り組む方が良いと思います。

2 憲法

基本書は、「憲法学読本」を使いました。演習書は使っていませんが、憲法の過去問を解説している「憲法ガール」を使いました。後は、判例百選等を読み込んで、なぜこのような結論に至るようになったのか、似たような事案が出てきたらどのように対処するか、を考えていました。

3 行政法

基本書は、「基本行政法」を使いました。演習書は、「事例研究行政法」を使いました。行政法は、全科目の中で一番、試験時間内に書ききるのが難しかったです。行政法は条文の解釈が大切です。司法試験の問題等を使って、時間内に資料を読み込み条文を解釈する訓練をするのが良いと思います。

4 民法

基本書は、佐久間先生の「民法の基礎1 総則」「民法の基礎2 物権」、松井先生の「担保物権法」、潮見先生の「プラクティス民法債権総論」「基本講義債権各論ⅠⅡ」、親族相続は「リーガルクエスト」を使いました。演習書は、改正法に対応しているものがあまりなかったので予備校の答練などを使いました。

5 会社法

基本書は、「リーガルクエスト」を使いました。演習書は、「事例で考える会社法」を使いました。会社法で何より大切なのは、条文です。本番の司法試験では、関連条文のページは書いていませんから、ある程度条文番号を覚えておき、素早く条文を引けるようになると良いと思います。

6 民事訴訟法

基本書は、「リーガルクエスト」を使いました。演習書は、「ロジカル演習民事訴訟法」を使いました。民事訴訟法は、全科目の中で一番勉強時間が長くなったと思います。例えば、既判力など、基本書等を何度も読み込んで深い理解をしておくことが大切です。そして、問題を解いたら「基本書のここの箇所の理解が浅かった」などわかるようにチェックして基本書と問題集を往復すると良いと思います。

7 刑法

基本書は、「基本刑法Ⅰ総論・Ⅱ各論」を使いました。また、大塚裕史先生が法学セミナーで連載している「応用刑法」も読んでいました。演習書は、「刑法事例演習教材」を使いました。刑法は、論文の過去問の中で一番初めに取り組んでみるのが良いと思います。

8 刑事訴訟法

基本書は、「リーガルクエスト」を使いました。演習書は、「事例演習刑事訴訟法」を使いました。刑事訴訟法は、伝聞の箇所を深く理解することに努めました。

9 労働法(選択科目)

基本書は、水町先生の「労働法」を使いました。演習書は、「事例演習労働法」を使いました。労働法は、過去問でだいたいの論点を網羅できる為、過去問の取り組みが有用です。

 

第5 最後に

ここまで色々と真面目に書いてきましたが、時には法律の勉強を忘れて息抜きする事も大切です。そうやってリフレッシュする事で法律の勉強もはかどっていくと思います。また、大学の友達や予備校やロースクールでできた友達と話し合ったり相談しあったりするのも大切だと思います。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。司法試験は確かに大変な試験かもしれませんが、これを読んでくださった皆様が、少しでも司法試験合格を目指そうと思って頂けると嬉しいです。

 

2018年3月修了 T・H

 第1 私は、20183月に明治大学法科大学院(既修)を修了し、20208月に実施された司法試験に合格しました。短答は辛うじて不合格を免れる程度の成績、論文は600位程度の成績でした。以下に体験記を付させていただきます。参考になりましたら幸いです。

 

2 短答式試験

はじめに、私自身、短答式試験に対してかなりの苦手意識を持っておりましたし、実際もギリギリの点数で通過したにすぎませんので、なにか指針を提示できるような立場ではありません。もっとも、短答式試験については、ある程度の時間をかけて、受験生自身がそれぞれ様々な工夫を行いながら、適宜の方法で過去問を反復して定着を図るという点に尽きるのではないかと考えます。

また、私の合格した年の場合、ちょうど改正民法による初回の試験でしたが、改正された分野に関しては、もっと条文を意識した学習をすればよかったという後悔があります。改正後の条文に関する問題で多くの失点をしていたからです。したがいまして、受験生の方へ向けた短答に関する唯一のアドバイスとして、改正されていないものについてももちろん、特に改正された分野に関しては、意識的に条文を参照されることを強くお勧めいたします。

 なお、短答の点数が芳しくない場合には、論文の採点がされないリスクのみならず、最終の合否が出るまでに唯一明確な数字がでるところで不安材料を抱えてしまうことになりますから、短答式試験にもきちんと注力していただくと良いでしょう。

 

3 論文式試験

私が受験を通じ最も重要だと感じたことは、出題趣旨や採点実感等を活用(応用)することです。

私は、問題演習を行う段階に至ってからは、出題趣旨や採点実感、そして各種答練等の採点表を軸に学習を進めてきました。周囲の受験生との比較によって相対的に点数が算出される司法試験において、独りよがりな自分の主観を軸に据えていては、方向性を誤ってしまうことでいつまでも結果が出ない可能性が高いと考えたからです。そこで、出題趣旨や採点表から出題者の意図が問題文にどのような形で表れているのかを察知する感覚を養ったり、採点実感や採点表から合格水準とされるためにはどの事項につきどの程度の記述が求められていたのかを把握したりするということに努めました。同様の観点から、第三者に添削を受ける機会を設けるのも有益でしょう。この方法によって、問題文のなかにどのような事実がどの程度記載されているかをみて、どの事項にどれくらい点数が乗りそうかを現場で判断できるようになると、いわゆる「守りの答案」を作りやすくなるという利点もありますから、お勧めいたします。

現に、私は2020年の試験において、手ごたえがあった科目についてはすべてA評価をいただくことができました。また、失敗した自覚のあった科目も失敗の大きさに応じてすべてBかCでした。つまり、主観と客観がほとんど乖離せず、かつ「守りの答案」を揃えることができたという結果でした。

一方で、「採点実感等は特定の過去問に対して発表されるものであって、過去問と全く同じ問題はでないのだから、そこまで読み込む意味はない」と仰る方もいます。たしかに、採点実感等は当該設問に関する記述ですし、私も同じことを思っていた節がありました。しかし、これらをよく熟読していくと、当該設問以外の一般的な学習に対してもひろく応用が利くことがわかるはずです。たとえば、憲法の採点実感のうち違憲審査基準の定立に際してのコメントは、毎年のように複数の記載がされています。これらをすべて抽出してまとめてみると、違憲審査基準を定立する際に検討すべき事項や受験生が気を付けるべきことなどの多くを容易に網羅できます。そうすると、当該事案を離れてもなお、違憲審査基準に関連する部分については、より的確な検討が可能になるでしょう。

このように、ただ字面を追って復習に用いるのみにとどまらず、試行錯誤を交えて活用していただくことで、論文式試験の得点の向上に資する有用な教材とすることができます。ぜひお試しいただければと思います。

 

第4 おわりに

 司法試験は難しい試験として知られており、相当な勉強量を積んでも不合格となる方が多いため、受験生は、「本当に合格できるだろうか」と自問自答する機会に不幸にも恵まれてしまうことでしょう。

しかし、そもそもこの試験で求められていることは、基本をきちんとおさえ、これを本番に答案上で表現することです。基本事項はどのような教材でも網羅されていますし、採点実感等でもそのほとんどが示されています。自分がそれを答案上に表現できているか否かは、客観的な視点からのチェックによって検証できます。トライ&エラーを繰り返して適切な検証を行うことこそが合格への近道であり、これさえ徹底できれば、特別なことを要せずして、誰だって合格することができる試験です。

受験生の皆様の検討を祈っております。

2017年3月修了 N・T

 1.         経歴

20143月 龍谷大学法学部法律学科卒業

20144月 明治大学法科大学院入学(既修)

20173月 明治大学法科大学院修了

20211月 司法試験合格

 

2.         はじめに

 私は中堅大学を卒業し、既修で入学したものの留年して修了し、4年目になってようやく合格しました。

このようにあまり出来の良くない私であっても司法試験に合格できたことを考えれば、これを読んでいる方も合格は難しくない試験であるといえるでしょう。正しい方法と勉強量をこなしていけば容易に合格できる試験といえます。

もちろん勉強方法は人それぞれではありますが、私をはじめ合格者の体験は参考になることも多いのではないでしょうか。そこで、私がどのような勉強法を取ったのか、やってよかったことなどを紹介し、良いものがあれば是非真似て見てください。

 

3.         合格者の類型化と自分に何が足りないのかを把握する

 まず、3年目の司法試験受験後、合格に手ごたえを感じませんでした。そのため、不合格だった場合に備えて司法試験終了の翌日から来年に向けてどのような勉強をすべきかについて考え始めました。

 その際に参考にしたのは合格体験記です。合格体験記を通して合格者がどのようにして合格したのかを類型化することができ、また今後自分がどのような受験対策を講じるべきかが見えるようになりました。

 

4.         敗因分析とその対策

 合格体験記を読み、合格者がどのように合格を掴み取っているかを把握すると、①教材を絞って何度も繰り返すこと、②勉強量をしっかりこなすことの2点にあると考えました。

 また、合格者と私を比較すると論点を抽出する能力及び規範を正確に書く能力が特に劣っているということが分かりました。そこで、これを養うために短答式と論文式では以下のような対策を取り司法試験に臨みました。

 

5.         短答式対策

 私の短答の目標は、短答式が論文式の足を引っ張らないことだったので、それほど深い知識は必要ありませんでした。そのため、過去問とその正誤が記載された1つの教材を何度も繰り返すことにしました。

使用した教材は早稲田経営出版の『司法試験・予備試験 体系別短答式過去問集』です。民法は今年度の試験から改正された問題が出題されるので、それに対応した答えが記載されているもので、11月の早い段階で出版されていたのが理由です。私の場合は過去問集の選択肢が限られていましたが、すでに改正民法に対応したものが多く出版されているため、受験生の方は自分の気に入ったものを選べばよいと思います。大切なのはしっかり繰り返して、自分の頭に知識を定着させることです。

 また、私が短答式で意識したのは、5肢択一の問題をただ漫然と解くのではなく、肢ごとに正誤を検討し、かつ理由付けも正確におさえていくことです。これにより、普通に解くより正確に学ぶことができ、正誤は正しいものの理由付けが間違えていた、そもそも正誤が分からなかったといったものを認識できます。そのため、より豊富に学ぶことができ、学習効果の高い勉強法です。もし短答式の勉強に悩んでいる方がいましたら、是非真似してみてください。

 

6.         論文式対策

 論述では、先に挙げた私の弱点を補うため基本的な論点が潰せるような教材を何度も繰り返すこと及び合格者に答案を見てもらい、自分の書き方をより合格できるような形に修正するということを行いました。

(1)    基本的な論点をつぶす対策

 アガルートの重要問題習得講座の教材を何回も繰り返すことにしました。司法試験対策の中でもこの部分を重点的にこなしました。

この教材では旧司の過去問や判例の事例を問題にしており、短い問題から論点を発見することができるようになります。また、問題ごとに参考答案もあるので、どのように問題提起すべきか、規範からどのような事実を評価し当てはめるべきかといった点についても参考になりました。

 私は、問題を見る→別の白紙に答案構成を書く→参考答案を見て論点や規範に誤りがないかを確認するといったことをただ繰り返していきました。1周目は問題となっている論点や理解が進んでいない学説が多くありました。そこで、市販の基本書を用いて「なぜ問題となっているのか?」「どのような考えの下で学説が分かれているのか」をしっかり学ぶことにしました。時間は必要ですが、ここでしっかり対策を行うことにより精度の高い論述ができるようになりました。

 これを読んでいる方に向けて言いますと、大事なのは基本的な論点をしっかり自分のものにすることです。そのため、私が受講した講座以外でも、定評ある演習書を用いて何回も繰り返すことによりこの目的をしっかり達成できるでしょう。

(2)    合格者に答案を見てもらう

 3年目終了後の司法試験終了後、69月までは牛島先生の予備試験民法・刑法・民訴・刑訴ゼミ及び大久保先生の司法試験過去問起案ゼミを受講しました。

 牛島ゼミでは予備試験で問われるような基本的な論点をしっかり抽出できるか、大久保ゼミでは書き方に誤りがないかをしっかり把握することを主眼に、合格発表前でも勉強していない期間を作らないように努めました。

 10月~3月は法制研の特別指導ゼミで北村先生の指導を受けました。このゼミでも司法試験の過去問を利用して合格者に書き方を教わることを目的にし、無事合格に必要な書き方を教わることができました。

上記のように合格者に答案を見てもらうことにより、自分が不合格となる書き方をしていないかなどをチェックでき、大変参考になりました。

 

7.         やっていてよかったと思うこと

(1)    演習書の裁断

私は、重要問題習得講座の教材と短答式過去問集の背表紙を裁断し、穴をあけてファイルにとじるということを行いました。これにより答案構成や問題検討の際に本が勝手に閉じることやページを押さえるなどの手間がなくなり、ストレスなく勉強を進めることができます。また、短答式過去問集の裁断は、最後まで分からなかった問題だけをファイリングして試験会場に持っていくことができ、試験前の数分で素早く見直すことができます。

業者に頼めば1100円程度で裁断してくれるので、リーズナブルに勉強中のストレスを解消できるので、是非やってみてください。

(2)    1日ごとの復習

 110分ほど、前日に解いた問題を見て復習するようにしました。これにより記憶の定着がスムーズになり、確実に自分の頭の中に知識を埋め込んでいくことができるようになりました。

(3)    試験途中はしっかり休憩の時間を作る

 試験の合間に休みなく勉強する人も多いですが、私は意図的に休憩の時間を作るようにしました。勉強も大事ですが、休憩の時間を作らないと次の試験時間中に疲れが出てしまうこともあります。私の場合、試験会場から離れた場所に座り、5分程目を閉じることで休憩をしていました。

(4)    マスクをして答案を書く

コロナの影響が長引くと、今後もマスクを着用して試験に臨まなければならないでしょう。そのため、試験と同じ環境で起案するため、あえてマスクを着用して起案を行いました。当日マスクを着用した状態でも落ち着いて答案を書くことができたので、是非本試験でマスク着用が予想される場合は真似してみてください。

(5)    図書館で勉強する

 私はスマホやパソコンが身の回りにあると、ついつい遊んでしまうような誘惑に弱い人間です。そのため、3年目の試験終了後はそのような弱さから脱却するため、図書館での勉強をメインにすることにしました。私でも集中力を欠くことなく勉強できたので、おすすめです。

8.         さいごに

 このように、基本的なことをしっかりやっていけば司法試験の合格は難しくありません。私のように合格体験記を参考に受験戦略を立てることもできます。もしこれを読んでいる方が少しでも勉強の参考になるようでしたら、大変光栄に思います。是非合格を勝ち取ってください!

2018年3月修了 後藤晋太郎

 2021/01/20 合格体験記 私の司法試験合格法 


1、経歴

 2016年3月 明治学院大学法学部法律学科 卒業

 2018年3月 明治大学法科大学院既習コース 修了

 2021年1月 司法試験合格

 

2、はじめに
 私は、3回の試験に挑み合格を掴むことができました。法科大学院終了後、私は地方公務員として働きながら司法試験の学習を続けていました。そこで、私が司法試験を受験するにあたっては、「何をやるか」ではなく「何をやらないか」を意識して勉強していました。試験までの限られた時間の中で出来ることは僅かです。この限られた時間の中で、司法試験合格に必要最低限の知識・能力は何なのか意識するようにしていました。ここで誤解をして欲しくないことは、ヤマを張れば良いとか、特定の分野は試験では出ないので学習しないなどと思うことです。優先順位を考えて試験に臨むことが大切だと考えています。
 以下は、私なりの短答式試験と論述式試験の勉強方法です。同じ合格者の中でも、学部在学中に合格した者、ロースクールを出て合格した者、働きながら合格した者、さまざまなバックグラウンドが存在します。したがって、私の学習方法があなたに合った学習モデルかは分かりませんが、その一助として利用していただければ幸いです。

3、短答式試験
(1)意識したこと

短答式試験では、「確実に点を取る肢」と「やらない肢」を峻別していました。

ご周知の通り、短答式試験を通過しなければ、論述式試験の審査はしてもらえないため、合格点の獲得は絶対条件です。もっとも、満点を取る必要はない試験なので、合格者平均点を取れるように目指していました。

過去問を研究すると、5年に一度出るかどうか分からない条文や、重箱の隅をつつくような裁判例まで出題されています。しかし、これらの問題をカバーするのは多くの時間を割き、費用対効果が低いと判断できます。一方で、論述式試験と内容が重複する問題や例年出題されている分野の問題もあります。これらの問題は、他の受験生も十分に学習してくることが予想され、また、再度出題可能性があることから、確実に点を取る必要がある肢と判断できます。したがって、前者の問題については復習を軽く行い、後者の問題については復習を十分に行いました。
 
(2)方法

私は、新司法試験の過去問を回していました。使用教材については、短答パーフェクト(辰已)を使用していました。これには2つの理由があります。1つ目は、正答率が分かるためです。過去の正答率を把握することで、確実に点を取る脚の見極めができるようになります。2つ目は、体系別に問題が作成されているからです。各分野の出題頻度・類似の問題が把握しやすいです。また、演習を繰り返すうちに、自分の苦手分野を把握しやすかったと感じています。

具体的な勉強方法について、私は、毎日、一定の時間を決めて学習していました。この際は、5問を10分で解くようにしていました。この時間感覚を意識できるようになると、本番で時間不足になることはないと思います。そして、前述のように、必要だと思う箇所は基本書に戻って復習をしました。

4、論述式試験

(1)意識したこと

論文のルール(三段論法)を遵守すること、問題文には素直に従うこと、こういった基本的なことを意識しました。もっとも、意識することはできても、答案で示すことができるとは限りません。そこで、答案を複数回書いて教授や合格者の先輩、友人に見てもらいました。第三者に見てもらうことで、自分では気がつかないクセや弱点を見つけることができます。


(2)方法

私は、新司法試験の過去問を解き、合格答案とは何か研究しました。とりわけ、直前3年分の問題は時間をかけて起案・復習を行いました。なぜなら、出題傾向が近いのは前年度のものであり(考査委員から考えても)一番時間をかけて勉強するべきと考えたからです。また、単純に論点をたくさん勉強したいのであれば、過去問ではなくて定評ある参考書を用いればよいと考えたからです。
 その他に、予備校の答練と模試も受講しました(どちらも辰已のものを受講)。本番と同じ工程で、他の受験生がいる中で答練・模試を受けることは、実戦感覚を養えると感じています。また、周りに差をつけられないためにも、受験者数の多い模試は受けるべきだと思います。

5、思うこと
 令和2年の試験は、新型コロナウイルの影響で4月に延期が発表され、8月に試験が実施された。空白の3ヶ月間は気力.体力ともに限界だったと思う。
 この状況下でご教示くださった先生方、共に勉学に励んだ同志達には感謝を申し上げたい。

以上

 

2020年3月修了 N・K

 令和2年度司法試験 合格体験記

令和3年1月30日

1 はじめに

 2015年4月 明治大学法学部   入学

 2018年3月 明治大学法学部   卒業

 2018年4月 同大学法科大学院  入学

 2020年3月 同大学法科大学院  修了

 2020年8月 令和2年度司法試験 受験・合格(翌年1月に発表)

         →74期司法修習生

 わたしは、中学生の頃からドラマの影響を受けて法律に興味をもち、法律を学びたいという思いから、明治大学法学部に進学しました。大学では、語学や教養科目の履修を経て様々なことを学びましたが、より専門的に法律を勉強したいと考え、3年次早期卒業制度を利用して、同大学法科大学院(既修コース)へ進学しました。

同大学法科大学院を選択した理由は、学費全額を奨学金で賄うことができること、学部ゼミに引き続き参加できること、学部3年次に大学院の授業を先取りで履修できること等でした。

 

2 法科大学院在学中

(1)授業

 入学した時点では、入試科目が上3科目であったこともあり、下4科目は周囲に比べて圧倒的に知識が足りず、初学者同然の状況でした。そのため、2年次の必修科目であった下4科目の講義の予習・復習は大きな負担となり、消化不良になる日々でした。今思い返すと、やみくもに基本書やレジュメを読まなければと考え、演習書に取り掛かることができず、答案のイメージが全くできていなかったことが一つの要因であったように思います。

2年次の前期には、民事訴訟法の単位を落とし、プチ挫折を経験しました。その後、教育補助講師の先生の助言をもとに、予備校本や演習書(下記使用文献参照)を適宜活用し、抽象論に終始せず、具体例をもとに考えることを心掛けていました。その甲斐あってか、後期の試験では下4科目もまずまずの成績をとることができました。

(2)答練

 予備校に通う時間的余裕がなく、また大学院の教育補助講師制度が大変充実していたことから、模試(下記TKC模試参照)を除いて予備校を利用することはありませんでした。

教育補助講師の先生には、2年次から司法試験の過去問や予備試験の過去問を題材に上3科目の答案を添削していただき、上3科目に関しては2年次である程度の答案の型が仕上がっていたと思います。これは、その後のメリットとして大きかったです。

3年次は、授業も演習形式のものがほとんどであり、教育補助講師が主催してくださったゼミもあったことから、問題演習を多くこなすことができました。自習の時間もほとんど起案に使っていましたが、これは、わたしがアウトプットに重点を置くことで結果的に暗記も捗るという性格の問題でもあったと思います。上記のとおり、上3科目はある程度の型が仕上がっていたため、苦手意識の強い下4科目を重点的に履修し、1年間で苦手意識もだいぶ払拭することができました。

在学中に、新司法試験の全過去問のうち約9割5分の過去問を解くことができたと思います。

 

3 法科大学院修了後

 自習室には行けず、自宅学習を強いられました。その結果、在学中と比較して、勉強時間は少なくなってしまったように思います。なにがなんでも、毎日(ただし、日曜日の午後は休み)8時間以上は実勉強時間(机に向かう時間ではない)として確保することを心掛けていました。

(1)短答

 わたしは、短答がすこぶる苦手でした。在学中は、日々あわただしく、継続して短答の対策をすることができなかったことが要因であったと思います。そのため、3年次後期試験が終了した2月からは、本格的に短答の対策を始めました。

 具体的には、過去問パーフェクトを使用し、1日50問を確実に解くことをノルマに掲げて淡々とこなすようにしていました。外出する際にもその日やるべき50問をファイリングして持ち歩き、どこでも勉強することができるようにしました。解説は長く、すべて読んでいると時間がかかりすぎてしまうと考えたので、趣旨や理由部分にのみ下線を引き、2回目以降はその部分を含めて正誤判断ができるかを意識して解いていました。

 序盤は、わからない問題が多くイライラすることもありましたが、2周、3周と進めていくうちにできる問題が増えていき、4周目からはできる問題を取り除いて、残った中から50問ずつ進めていきました。その結果、3月のTKC模試の結果では、足切りを20点上回るほどまで得点できるようになりました。加えて、この時期からは憲法の条文を音読する音声を家事等の作業中に聞くようにしていました。また、どうしても覚えられないものは、Wordでまとめて隙間時間に確認したり、壁等の目につきやすい場所に貼ったり、携帯のロック画面にしたりしていました。司法試験の延期が決まった後も1日のノルマは継続して課し、本番までに10周前後したかと思います。

本番は合格者平均点の少し上くらいの点数でしたが、1科目目の民法で失敗したと思いました。民法改正により、条文知識の正確さがより強く求められていると感じましたので、来年度以降受験される皆さんには、民法は特に条文の素読をされることをオススメします。

(2)論文

 ア 勉強姿勢

 上記のとおり、在学中から教育補助講師ゼミを受講して、答案を書いていましたが、書きっぱなしにして十分に復習できていない(次に同じ問題を解くときに前回からの成長があまりみられない)状態にあると自覚していたので、その復習を重点的にやりました。正解筋を頭の中で何度もなぞり、思考回路を叩き込むことを心掛けていました。しかし、合格答案はあくまで100点ではないため、気負いすぎないように(教育補助講師の助言のもと)中位(下位)合格答案も適宜読むようにしていました。

 また、下記参考文献に記載した演習書を繰り返し解き(特に労働法)、苦手克服に努めました。

 イ 意識していたこと

 どの合格者も口をそろえて言うと思いますが、重要なのは条文とその趣旨です。

 わたし自身、本番の試験では知らない、考えたことのない論点がいくつもありましたが、そういうときこそ、基本に立ち返り三段論法は絶対にくずさないという心持ちで答案を書いていました。パニックになっても、そこだけは死守すべきだと思います。

 論証の暗記は正直していませんでしたし、必要ないと思っていました。平均的な受験生が、すらすらと書けるもの(「行政庁の処分」の定義や不法領得の意思の定義等)のみ完璧に、あとはほどほどにという感覚です。まとめノートは、民事系と労働法は趣旨規範ハンドブックをもとに、行政法と刑事系はWordで(自己流)作成していましたが、そこでは完全なる綺麗な文章にするのではなく、キーワードやエッセンスを記載したメモを作るというイメージでした。直前の復習でも、その確認だけで済んだので非常にスムーズでしたし、それで十分事足りたと思います。この点も、教育補助講師の助言があったのですが、この本質に気が付くことができた(と思っている)のは、何度も起案を重ねた修了後4月頃だったと思います。

 また、起案において、筆力が足りないと自覚していたため、構成は30分、答案の書き起こしは90分と決めていました(行政法だけは、構成40分でなんとか)。結局、書くスピードはあまり重要ではなく、いかに書き起こし中に筆が止まらないか、構成段階での個人の裁量だと思います。ナンバリングは必ずすべきです。ただし、結局4枚であっても上位合格される方はいますし、7~8枚書いても結果が出ない方もいます。枚数に拘らず、自分に書ける分量と配転割合を参考にバランスよく書くことが最も重要だと思います(ちなみに、わたしは本番平均的に5枚~6枚半ほど書き、中位合格でした)。

 ウ 過去問の意義

 司法試験の受験中に改めて感じたことですが、司法試験や予備試験の過去問は極めて有用です。わたし自身、憲法、行政法、民法、民事訴訟法、刑事訴訟法の6科目は過去問題をやっていたからこその出来であったと自負しています。

作問者が問いたいことは普遍的なものであり、それは出題趣旨や採点実感から伝わってくることと思います。よく言われる話で、処分性の問題は何度も出題されていますが、これは規範とあてはめをうまく合致させ、正確に分析できている受験生とそうでない受験生との差が大きいからです(この点も補助講師の先生からの受け売りで恐縮ですが)。

(3)模試

 模試は、在学中の短答模試のほか、修了後の3月にTKC全国模試を受けました。本番さながらの会場、解答用紙、時間割で受験できたことは、大変役立ちました。いすの高さや隣との間隔等知っておいてよかったと思うことも多々ありましたので、このご時世ですが、会場受験されることをオススメします。採点者の質は様々かもしれませんが、誰が読んでも一定点数つく答案が理想だと考えていたため、その観点からも指摘された点の確認は有用であったように思います。

 ちなみに、結果はギリギリ合格推定ラインに達していましたが、民法と刑法が悪かったです。模試返却後も時間があったので、すべての科目を納得がいくまで復習しました。

 

4 さいごに

 わたしが1回で合格することができた勝因は、周囲の環境に恵まれたことに尽きると思います。教育補助講師ゼミを複数受講し(大学院の制度の一部であり、無料でした)、大学院の授業で学んだことをそのままにせず、答案の形に起こすための過程をみっちり教え込んでいただいたことが大変役立ちました。いわば、「利用できるものは全て利用する」の精神です。ぜひ、受験生の皆さんにも実践していただきたいと思います。

 これを読んでくださっている受験生の中で、法科大学院の選択に悩まれている方がいましたら、ぜひ明治大学法科大学院を候補に入れていただきたいです。(無論、これはわたしの一存ですが)少人数かつ優秀な教授による授業、その他最高の設備のもとで勉強ができる贅沢な環境です。現役合格率の高さ(同期は10人合格しました)もこれに起因していると思います。明治大学法科大学院で勉強できたことを、心から感謝しています。

 

5 使用文献(通読したものは極めて少ないですが、)

 ・判例百選

 ・短答過去問パーフェクト(憲民刑)

 ・ぶんせき本

 ・司法試験・予備試験 過去問

(1)憲法

 ・憲法[第6版] 芦部信喜

 ・憲法学読本[第3版] 安西文雄ほか

 ・ケースブック 憲法

(2)行政法

 ・基本行政法[第3版] 中原茂樹

 ・基礎演習行政法 土田伸也

 ・事例研究行政法[第3版] 曽和俊文ほか

(3)民法

 ・債権総論[第4版] 潮見佳男

 ・債権各論ⅠⅡ[第3版] 潮見佳男

 ・民法演習サブノート210問 沖野眞巳ほか

(4)商法・会社法

 ・会社法[第2版] 田中亘

 ・Legal Quest会社法 田中亘ほか

(5)民事訴訟法

 ・民事訴訟法 瀬木比呂志

 ・論点精解釈民事訴訟法 田中豊

 ・Law Practice民事訴訟法 山本和彦ほか

 ・試験対策講座 民事訴訟法[第3版] 伊藤真

(6)刑法

 ・基本刑法ⅠⅡ[第2版] 大塚裕史ほか

 ・理論と実務の架け橋

(7)刑事訴訟法

 ・Legal Quest刑事訴訟法[第2版] 宇藤崇ほか

 ・事例で考える刑事訴訟法[第2版] 古江頼隆

 ・理論と実務の架け橋(捜査・公判)

(8)労働法

 ・労働法[第7版] 水町勇一郎

 ・事例演習労働法[第3版] 水町勇一郎

 ・労働判例INDEX[第3版] 野川忍

応援しております。以上