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合格者体験談(2023年度)

2020年3月修了 内木絵里子

合格体験記 


1.1回目~3回目で不合格だった原因
論文式試験は、①条文・論点が合っているか②規範や論証が合っているか③あてはめが適切かの3点が重要だと思います。点数が伸びない場合、どの部分に問題があるかを見抜く必要があると思います。
 私は、①条文・論点を誤っている、②規範や論証の記憶があいまいという部分が問題でした。①・②を徹底することで合格できたと思います。

2.論文式試験
⓵ 条文選択誤り、論点誤りについて
 私は、例えば憲法の問題文を読んで、何条の問題かわからない、というレベルで苦手でした。本を読んだり、少し考えたりしてもわからないものは、理解しようとするより、こういう問題は〇条の問題だ、と覚えてしまうようにしました。
 条文が適示できても、論点が抽出できないことがあります。論点も、こういう事例はこういう論点が問題となる、という流れを覚えました。理解が後でついてくると、暗記したことが理解に変わり、最終的な暗記量は減ると感じたため、始めは何でもかんでも覚えてしまうようにしました。
 過去問の他に、アガルートの重要問題習得講座で、条文と論点を抽出するトレーニングを繰り返しました。また、基本書の目次を見て、単元ごとによく出る条文や論点を思い浮かべるという勉強もしました。うまく出てこない部分は、暗記できていない、または理解できていない部分なので、覚え直すようにしました。

② 規範や論証があいまいである点について
 規範や論証があいまいだと、あてはめを間違えるので、暗記を最優先としました。暗記時間は1日4~5時間は確保していました。
 暗記の対象は、自作の暗記ノートです。「アガルートの司法試験・予備試験 総合講義1問1答」(サンクチュアリ出版)を参照し、その中でも絶対に覚えないといけないもの(例えば、行政法の処分性の定義や刑事訴訟法の伝聞証拠の意義など)を1科目あたり4~7ページにまとめました。ノートにまとめる必要はありませんが、基本書にマークするなどして、覚える対象を確定させる作業は必要だと思います。一文字ずつでもいいので無理やり覚えます。その過程で覚えたことにより、理解が後からついてきた知識もたくさんあることに気が付きました。覚えるべきことは後回しにしないで、覚えてしまってから理解すればいいと考えるようになったことが、点数が伸びたきっかけになったと思います。
 論証集もアガルートの論証集をほぼ丸暗記しました。私は理解力に乏しいため、とりあえず、むりやり丸暗記してから理解するようにしました。
 暗記は9月に始め、翌年2月にはだいたい覚え終わりました。7月の試験までは、覚えたことを忘れないように確認する程度の学習で済みました。3回目受験まで暗記より理解だと思い、暗記をおろそかにしていましたが、本当に暗記は大事だと思いました。
 本試験当日は、手が勝手に動くレベルで定義と論証の暗記は完璧でした。その分、わからない問題を考えたり、あてはめをたくさん書いたりする時間をとることができ、全体の点数が伸びたと思います。

③ あてはめで気を付けていたこと
 自分で立てた定義や論証の文言と、あてはめを合わせる。事実の適示はなるべく問題文を丸写しするようにし、問題文を勝手に省略したり、自分の言葉でまとめたりしない。事実への評価は比喩表現を使うなどして、自分の言葉で考えたような雰囲気で書く。解答例で、説得的だなと思ったあてはめの書き方があれば覚える。

・論文答案をフルで書いたのは、模試のみでした。誘導に乗ったり、行政法の参照条文を読み解いたりすることが得意で、かつ正確な時間配分とあてはめに自信があったことから、私にとって答案作成は、弱点克服にまったく結びつかないものと判断しました。このように、一般におすすめされている勉強を漫然とするのではなく、自分の弱点を把握したうえで、弱点を埋めるための勉強に絞ることが大切だと思いました。

④ その他
・労働法:百選の目次を見て、事件名だけで事件の内容・条文・論点・結論を言えるようにする。
・憲法:とにかく苦手なので条文を間違えない。そのうえで、過去問の解答例を参考に、21条はこう書く、23条はこう書く…と書き方を決めておく。
・行政法:処分性・原告適格・裁量論の書き方を決めて覚えておく。
・民法:条文を覚える勢いで読み込む。何条の問題か?からスタートするので。
・商法:司法試験六法を購入し、頻出条文の位置を覚える。組織再編などの複雑な条文は、本番中に探して読んでいたら解き終わらないので、事前に条文の位置を把握し読んでおく。
・民事訴訟法:定義や論証があいまいな人が多いので、特に完璧に覚える。
・刑法:字を小さめにして、たくさん書く。
・刑事訴訟法:ほぼ過去問からしか出ないので、過去問の答案構成を特に徹底する。たとえば領置は基本書や予備校テキストを読むだけでは、書き方がわからないと思うので、伝聞・非伝聞の判断など、書き方を決めて覚えておく。

3.短答式試験
1日1~3時間程度短答の勉強をしました。
教材は、パーフェクト(辰已)と択一六法(LEC)を使用しました。
学習方法は、とにかく何回も解くという方法でした。正解した問題も、忘れてしまいがちなので、何度も解きました。効率は悪いですが、穴がない勉強法だとは思います。時々年度ごとで解いて、点数を出しました。間違えた問題は、どうして間違えたか、どうすれば正解できたか(覚えればいいだけか、他の知識と混ざっていないかなど)を考えて、時間を空けて解き直しました。
 また憲法の場合、最新判例が出題されることが多いので、択一六法に載っている新しめの判例の結論と、理由付けは覚えました。憲法が最も足切りが多いため、統治で確実に得点するために、統治分野の条文はだいたい覚えました。
 民法は過去問に出題実績のない条文が出ることもあるため、見慣れない条文は覚える勢いで読みました。
 短答式試験は足切りを回避すればいいという意見もありますが、近年の足切り点は100点未満と低いです。短答合格者間での点数格差が、以前より大きいので短答も高得点を目指すことが大切だと思います。
 
4.その他
勉強時間は1日10時間以上とるようにしました。
ついついスマホを見てしまう癖があるので、タイムロッキングコンテナという、決めた
時間カギがかかる箱を購入し、勉強に集中できるようにしました。
自分の弱点を埋めるために必要な勉強ができていれば、より早く合格していたと思い
ます。模試や本試験の点数が悪かった場合、どうして点数が悪いのか、どうすれば点数が伸びるのかを考え、自分に合った勉強をしてほしいです。

 

2023年3月修了 S.S

 

                                    司法試験合格体験記
はじめに
これから、⑴私という人間 ⑵司法試験という試験の性質 ⑶合格するための勉強法 ⑷皆さんへの応援の4つに分けて文章を構成し、合格体験記とします。

第1 ⑴について
 私は、2020年に明治大学法科大学院に未修で入学し、その卒業年である2023年に1回目の受験で司法試験に合格しました。未修で入学していることからもお分かりのように、私には2020年時点で、「法律」に対する知識はほぼゼロでした。どのくらいのレベルかというと、学部の民法における物権の分野で、必ず履修する「177条の第三者」とは誰なのかを知りませんでした。それどころか、司法試験において問われる科目の数、その内容、筆記による試験であるということも、入学時点では知りませんでした。
 実は在学中の学部は法学部ですが、すべての法律科目で期末試験の際に、初めて担当教員の顔を初めて把握する始末でした。結果、1年後期の刑法総論の単位を4年まで落とし続け、明治大学法科大学院に入学する時点で、卒業が確定していなかったという有り様です。時間を戻せるのであれば、学部4年間をやり直したいです。以上が私という人間です。
これを踏まえて、私の受験手法を聞いてください。

第2 ⑵について
 「日本で最も難しい試験」司法試験を目指す方は、一度はこれを聞いたことがあるのではないでしょうか。たしかに、2時間という限られた時間の中で、複雑な問題文から事実を拾い、その解決策を導き出す作業を8科目分もしなくてはなりません。(正確には選択科目は3時間ですが)これはその経験が全くない人からすれば、大変難しく感じることでしょう。 また、司法試験が上記のような試験であることすら、全く知らない人にとっては、メディアが面白おかしく、「エリート」として弁護士を描く傾向にあるため、まるで司法試験の一発合格を成す方々が、宇宙人か何かのように感じる人もいることでしょう。私もその一人でした。
 しかし、実際に自分が未修という、人より短い期間で司法試験を受験する立場に立ち、実際に一発で合格したからこそ、言えることがあります。
 司法試験とは、「①途中答案にならないよう気をつけ、②一応の結論を出すだけで合格する試験」であるということです。
司法試験というのは上記で述べたように、「時間内に、複雑な問題文の中から事情を選び、その事情に必要な範囲で規範を定立し、あてはめて解決する試験」です。いや「解決したように見せかける試験」です。べつに、その問題が完全に解決していなかったとしても点数は入りますし、合格もできます。考えてみてください。皆さんが一度でも過去問に触れたことがある方であれば、理解できるはずです。あんな問題、2時間では解けません。もちろん絶対にいないとは言い切れませんが、仮にいたとしても、合格するだけなら、そんな人々は気にする必要はありません。法科大学院の教授陣が、未修の方に対しても既修の方に対しても、よく言っていたはずです。「三段論法は守れ。」「途中答案はやめろ。」と。これに尽きます。
皆さんは司法試験を誤解しすぎです。数学の問題ではないので、完璧な解答など存在しませんし、そんなものはカンニングを疑われるくらいです。私もそんなことはできません。司法試験委員会の方々は「解けないことはわかっているが、どれだけ時間内に問題点を見抜き、一応の結論が出せるか」を見ています。それこそが、法律家に必要な才能だからです。
試しにA評価の答案を見てほしいです。全くの正解筋から的外れでも、一応の結論を出し、最後まで行っている答案が多いはずです。A評価が取れるのですよ。それだけで。逆に読む側で考えましょう。途中答案はどうでしょうか。これは「私はこの問題文に、時間内に一応の回答すら出せない人間です。よろしくお願いします。」と言っているようなものです。合格させたいと思いますか。期日のシビアな法律の世界で、生きていけると思ってくれますか。ですから、結論は絶対に出しましょう。最後まで書いてください。これだけで印象はいいですし、事務処理能力を示せます。私も途中答案は一通もありません。
いかかでしょうか。見るからに複雑な問題文だとしても、どれだけ世間で「司法試験」へのハードルが上がっていたとしても、「①途中答案にならないように気をつけ、②一応の結論を出すだけで合格する試験」と言われれば、何となく難しくなくなります。
司法試験とは本当にこれだけの試験なのです。

第3  ⑶について
 上記で、自分に足りないのはどちらであるか、考えるのです。①なら筆記速度を上げるか、いらないことを書いてないかを見直す。②ならば、一応の結論を出せるだけの知識を獲得するか、現場思考を鍛えるために問題演習を繰り返すなどです。幸いなことに私は①、②どちらも満たせる勉強法を知っており実践もしていました。それは「時間を計って過去問を起案しまくり、添削を受ける」です。以上につきます。
 平成18年の新司法試験の黎明期から、最新の令和4年司法試験問題まで、全て起案しましたか。時間内に、何も参照せずに、筆記で、です。添削も受けましたか。明治大学法科大学院では補助講師ゼミのシステムがありますが、毎年申し込みが少なく、申し込んでも最後までついてくる人は少ないそうです。あれは添削と解説付きの即日起案も多いため、絶対に受けるべきです。ちなみに私は3年生になってから、4つ取っていました。おかげさまで、上記の司法試験問題全て1年半で、全科目三周以上添削してもらいました。まだ甘いかもしれませんが、私としてはこれでやっと「起案できた」といえると思っています。悔いはありません。皆さんも「過去問全部起案した」とはこのくらいのレベルだと思って勉強してほしいです。また、添削は必ず受けてください。他人が採点する試験です。自分の主観を排除してナンボですし、弱点もわかります。そして丁寧にやり直し、次の機会には、ほとんど完璧な答案を目指して起案し直す。これを繰り返します。以上が、私の主な論文式試験対策になります。
もちろん、対策は短答式試験に対してもあります。受けられる模試は全て会場で、全部解いてください。明治大学法科大学院は模試の参加率が悪く、民法の工藤先生が嘆いています。せっかくお金を免除されるので、毎回会場で受ける方が、お金の節約になります。本番の雰囲気を知ることができる上、やり直しによる、自身の学力の向上に直結する最良の機会です。ぜひ受けてください。また、普段の対策ですが紙媒体で試験問題を5週以上、TKCのネット媒体で正答率が100パーセントになるまで、そして『短答攻略クエスト』というアプリで、ランキング全国1位を目指し続けました。実際に、受験の2週間前から常に1位でした。おかげさまで刑法は48点をとり、全体でもアドバンテージをとれる程度の得点を取っています。このことも、合格に寄与したと思います。
結論としては、短答、論文どちらも過去問に触れまくる。という単純な話です。一番お金もかからないし、デメリットも毎日手が疲れるくらいですので、本当におすすめの方法です。
補助講師のゼミがあることで、締め切りがつくられ、強制的に起案もできます。できるだけ重複して取ることを強く勧めます。これが私の勉強法です。

第4 ⑷について
 これまで述べてきたように、司法試験は天才だけが受かる高度な試験ではないです。その代わり、誤った勉強法や答案の書き方では、一生届かないという難しさを孕んだ試験です。
ですが、だいたいの勉強法は記したので、これを実践すれば大丈夫です。大学時代、一切学校に行かないクズの大学生が3年で合格するのです。誰だって合格できると信じています。ぜひ、自分の精神との戦いに打ち勝ち、「過去問全部起案した」と自信を持って言えるようになってください。その時には合格レベルです。頑張ってください。
                                    以上
 
 

2021年3月修了 S.A

合格体験記

1 はじめに
  私は、とある専門学校を卒業した後に、数年間、社会人及び通信大学の大学生としての生活を送りました。その後、思うところがあって、明治大学の法科大学院に2016年に入学し、2021年に修了しました。
   そして、3度目の受験で司法試験に合格しました(2023年)。
  このような者ですから、特に、人生が順風満帆でない受験生に対する応援・アドバイスとして、合格体験記を執筆させていただきます。
  なお、私の成績は非常に低いため、この合格体験記には、合格のために必要な最低限のことが書かれている、とお考えください。

2 学習について
⑴ 精神論
  私個人としては、精神論はあまり好きではありませんし、また、合格体験記の内容として相応しいものか、正直自信がありません。しかし、私自身は受験生に対するアドバイスとして、精神論は避けて通れないと 考えています。
  もし貴方が、残念ながら何度か司法試験の合格を逃している受験生ならば、また、そうでないとしても、是非今一度、「自分は本当に司法試験に合格したいのか」という点を、真剣に考えて欲しいと思います。この試験は、相当に勉強が得意な人以外は、「できれば合格したいな〜」という程度の、軽い気持ちで合格できるほど優しいものではありません。動機自体はどのような内容でも良いと思います。時間をかけて、自分自身と向き合ってみて下さい。
  また、動機の見直しが終わったら、次は必ず合格する日を決めて下さい。これは技術論との関係でも、非常に重要なことです。司法試験は「いつか合格できたらいいな〜」で合格できるほど簡単なものではありません。
  私は、昨年の司法試験に落ちた時、2023年の司法試験には必ず合格すると決めました。そして、試験に落ちたこと、2023年は必ず合格することを、周囲の人に言って回りました(誰も本気にはしていなかったと思いますが)。これがなければ、今年の司法試験合格はなかったと断言できます。

⑵ 技術論
ア 導入
 私は、まず合格する日(つまり、2023年の司法試験の試験日)を調べ、その後は数回ほど、自分で書いた論文式試験の答案を講師の方に採点してもらい、出題の趣旨及び採点実感を読み込みました。そして、合格 に必要な学習量を割り出し、それを試験日までの日数で割り、一日あたりの学習量を決定しました。
 いうまでもなく、この作業をするためには、合格する日を決めることが必要です。よって必ず自分が合格する日を決めなくてはなりませんでした。

イ 短答式試験の学習について
 私は短答式試験を「合格に最低限必要な知識・道具を持っているかどうかを確認するもの」と考えています。そのため、短答式試験については、高得点を取るためではなく、足切りを避けるための勉強をしようと考えました。
 そこで、人気の過去問集である、辰已法律研究所の「短答過去問パーフェクト」のうち、正答率が60%以上の問題に絞って、繰り返し学習しました。この場合、解くべき問題数は、民法が530問程度、憲法が210問程度、刑法が250問程度になります。
 このような学習方法を採用した理由は、正答率60%以上の問題を全て正解できるなら、足切りは余裕で避けられるだけでなく、合格に最低限必要な知識・道具を備えられると考えたためです。
 なお、私の短答式試験の成績は合計126点。つまり、この辺りが司法試験合格のための最低ラインということです。

ウ 論文式試験の学習について
 週末を除き、毎日2問ずつ過去問を起案もしくは答案構成で回し、合計で5年分(2017年〜2021年度です)の過去問を約3周ほど、こなしました。
論文式試験の学習の際、特に意識したのは、①過去問を実際に解くこと、②一つの科目に集中しないこと、そして、これは非常に失礼な物言いになってしまい恐縮なのですが、③教えてくれる先生方の評価を真に受けすぎないこと、④論点を記憶しようとしないこと、の4点です。
 以下、それぞれ理由を説明します。

①過去問を実際に解くこと
  当たり前のことですが、過去問は過去に実際、司法試験に出題された問題です。そのため、初見の過去問に対して、合格水準の答案が書けるなら、十分に合格する実力がついているということになります。
  そこで、実際に過去問をプリントアウトし、時間を決めて解きました。(選択科目以外は、起案であれば1問あたり1時間45分、答案構成であれば35分としました)

②1つの科目に集中しないこと
  前提として、1つでもF評価がつけば、その他が全てA評価でも不合格です。そして、私は上記のような者であるため、記憶力も人並みかそれ以下です。そのため、1つの科目に集中していると、それ以外の科目がすぐ、頭の中からすっぽ抜けてしまいます。
  そこで、特定の科目に絞って学習を繰り返すのは危険だと考え、1科目ずつローテーションすることにしました。(選択科目→憲法→行政法→以下略、という具合です)

③教えてくれる先生方の評価を真に受けすぎないこと
  この点について、あえて雑な言い方をしますと、結局のところ、先生方は司法試験の論文答案を採点する人ではない、ということです。先生方に褒められると非常に嬉しいですし、貶されれば深く傷つきます。しかし、実際に採点する人ではない以上、そのような先生方になんと評価されようと、司法試験の合否には全く影響ありません。それよりも、沢山の先生方の、多様なご見解に振り回されてしまう方が、危険だと考えました。(特に、先生方のご見解は、どれも根拠は十分で、説得力も極めて高いため、どうしても振り回されやすいのです)
  そこで答案採点は、明治大学法務研究所の答練などを除いて、全て出題の趣旨及び採点実感を読んだ上で、自分で行いました。
  この点は相当に傲慢であったと思いますし、低い成績に繋がった可能性も否定し難いと考えています。しかし、私は、得点に繋がる可能性が高い事項を教えていただけるリターンよりも、多様なご見解に振り回されて、自分の勉強方針が定まらないリスクの方を重視したことにより、結局その選択が私にとっての正解だったと思っています。

④論点を記憶しようとしないこと
  論文式試験で問われているのは、知識そのものではなく、知識を前提とする事案の処理能力です。そのため、論点を「論点」として記憶したとしても、合格には繋がらないと考えました。
  そこで、予備校などから発売されている「論証集」を記憶するという方法は取らず、その代わりに、重要判例や参考判例を可能な限り読み込み、自分ならどう考えるか、もし類似の事例が出題された場合には、どのように答えるか、自分の言葉で論証を作り上げて、それを一つのノートにまとめるという方法に終始しました。
  論証集そのものは持っていましたが、(辰已法律研究所:「趣旨・規範ハンドブック」)あくまで、論証を作成する際の参考という位置付けに留めました。

⑶ まとめ
  私の学習方法は、一般的ではないと思います。特に③や④は「非効率的な勉強方法」として槍玉に挙げられることもあります。ただ私にとっては、この方法が最適だと考えましたし、結果論ではありますが、最も効率的だったのだと思います。(数人にリサーチした結果にすぎませんが、それによると、私の勉強時間は平均的受験生の半分以下であったと思われます)
  繰り返しになりますが、私の合格順位は極めて低いです。そのため、あくまで「こういう勉強方法で合格した人がいる」という程度に理解し、ご自身の勉強方針を決定する際の、参考にしていただければ幸いです。                                                                                                                   

3 最後に
 合格のために最も大切なことは、合格までの道筋を作り上げることです。道筋さえ作り上げてしまえば、あとはその道を進むだけで合格できます。
 ただし、合格までの方角や距離は、人によって全て違います。そのため、安易に他人が示す道筋に乗っかってしまうと、合格になかなか辿り着けないだけでなく、悲惨な場合、合格から遠ざかってしまうこともあります。
 自分の目で見て自分の頭で考えて、自分だけの合格への道筋を見つけて下さい。
 心から応援しています。
 
 

2023年3月修了 K.A

1 経歴
2021年3月 明治大学法学部法律学科 卒業
 2021年4月 明治大学専門職大学院法務研究科(既修) 入学
 2023年3月 明治大学専門職大学院法務研究科(既修) 修了
 2023年11月 司法試験合格

2 短答式試験の勉強方法
⑴ 使用書籍
『短答過去問パーフェクト』(辰已)
⑵ 勉強量
法科大学院2年生の10月から徐々に始め、本腰を入れたのは3年生の5月くらいから。疲労度によっては1時間未満の日もあったが、毎日欠かさずやっていた。時間としては、1日2時間~2時間半。
⑶ 勉強方法
机に向かってやることは滅多になく、ほとんど行きと帰りの電車内でやっていた。
やり方としては、肢ごとに見ていき、5~10秒ほどで正誤とその理由を考え、分からなければすぐに解説を読むといった感じ。とにかく周回することを意識した。何周したかは正確に覚えていないが、全科目10~15周はしたと思う(最初の1~2周は多少時間がかかってもやむを得ない)。
とにかく、早い時期から始めることと、過去問を回すことが重要だと思う。早い時期から始めれば、その分だけ周回数が増え、短答式に対する不安は減り、論文の勉強に専念できる。また短答式は、誰でも回数をこなせば点数が上がる(但し、普通の人は7~8割が限度だと思う)ため、毎日やり続けることも大切。

3 論文式試験の勉強方法
⑴ 使用書籍
憲法:『合格思考』(辰已)
行政:特になし(本試験の過去問、予備試験の過去問(平成27年~令和4年))
民法:『実況論文講義』(アガルート)、法学教室の演習問題、百選(ⅠとⅡ)
商法:『リークエ』、『ロープラ』
民訴:『リークエ』、『ロープラ』、『事例で考える民事訴訟法』(ロープラを補うために数問)
刑法:『基本刑法』、『応用刑法』(総論のみ)、『悩みどころ』(総論・各論)、『刑法事例演習教材』
刑訴:『事例演習刑事訴訟法』、『エクササイズ刑事訴訟法』
選択科目(労働法):『事例演習労働法』(有斐閣)、『1冊だけで労働法』(辰已)
その他:過去問(新司法試験全年度)、『ぶんせき本』(辰已)
⑵ 勉強量
民法『実況論文講義』、商法・民訴『ロープラ』、刑法『事例演習教材』は5周以上、労働法『事例演習労働法』は3周ほど回したと思う。
過去問については、直近5年分は3~4周ほど、それ以外は2~3周ほど回した。
⑶ 勉強方法
  問題集について、最初の1~2周目は1冊をさらっと周回する感じで解いていた。その後は、1冊の問題集を完璧にすることを目標に、何周もやっていた。
  過去問について、法科大学院3年次の4月から取り組み始め、時間を気にせず、基本書などを見ながら起案していた。8月からは、何も見ずに2時間で起案することがほとんどであった。書いた答案は、補助講師の先生方に添削して頂くことが多かったが、自分で添削することもあった。

4 最後に
  客観的な評価が大切であることはよく言われますが、自分で自分の答案を評価することも大切です。客観的評価と主観的評価の擦り合わせを繰り返して、自分に合った勉強法や論文式試験の書き方、考え方などを見つけていってください。
また、試験までの時間は有限です。短期合格したいのであれば、勉強時間であっても、休憩時間であっても、1分たりとも無駄にしないよう心がけてください。そして、試験本番では、最後の最後まで諦めずにペンを動かし続けてください。
明治の学生なら最後まで努力し続ければ、きっと合格できます。頑張ってください。
 

2019年3月修了 椎名希純

第1 はじめに
 私は、司法試験受験資格が失権してしまう5回目にして、司法試験に合格いたしました。これから司法試験を受験される方には、私のように複数回受験にならないように、複数回受験の方(特に3~5回目の方)には少しでも私の勉強方法が参考になればと思います。また卒業後、親に頼ることは極力避けるべく、週4~5日アルバイトをしつつ勉強していたため、同じような状況の方たちに、工夫をする大切さをお伝えしたく思います。
 このような思いから、優秀ではないものの、努力は報われる例になればと思い、筆を執らせていただきました。

第2 経歴
2011年4月 専修大学法学部法律学科 入学
2015年3月 専修大学法学部法律学科 卒業
2016年4月 明治大学専門職大学法務研究科 既修者コース 入学
2019年3月 明治大学専門職大学法務研究科 既修者コース 修了

第3 勉強方法
 1 短答式試験
  ⑴ はじめに
    私は、短答式試験が大の苦手でした。ロースクール時代は、短答式試験で6割を取れるかのレベルでした。しかし、なぜ苦手なのかを追及していくと、1つ1つの肢がなぜ正しい・誤りなのか、自分の中で理由を完璧に落とし込めていなかったことだと思います。このことに気づいたのは、ロースクール3年生の時でした。   
そこから、司法試験の過去問のみを行い、短答パーフェクトの理由を読み込むという作業を繰り返し行うことで、苦手を克服できました。ただ、6割を切ることがなく、短答式試験で落ちなくなったという程度でした(令和5年を除き、これまでは平均117点程度)。しかし令和5年では、140点を獲得することができました。そこで、今年はどのような勉強方法の違いがあったのか、振り返ってみたいと思います。
  (2) 10~3月TKC全国模試前まで
    司法試験の過去問を解き、間違えた問題や偶然正解した問題で、かつ、理由が正しく言えないものをストックしていきました。具体的には短答パーフェクトから、その問題を裁断してファイル化し、通勤時間中に何度も同じ問題を解きました。
    その結果、12月に行われたTKCの短答式模擬試験では、126点を獲得しました。
  (3) 3月TKC全国模試後
    短答の模擬試験で上記成績を収めた私は論文式試験に、より一層力を注ぐようになり、短答式試験の勉強を少し、蔑ろにしてしまい、その結果3月のTKC全国模試で、驚愕の89点(合格点85点)を取ってしまいました。このままでは短答式試験を突破できないと大変焦り、先に合格した友人に相談すると、まだ時間があるのだから模試で落ち込まず、その点数になってしまった原因を分析すれば、問題ないと言ってくれました。そのため、4回目までの勉強方法では、また110点台しか取れないと思い、短答式試験の勉強を、論文式試験と同様に力を入れ始めました。
    敗因分析としては、やはり何度も自分の苦手な肢を解くにつれて、理由付けができていないにもかかわらず、繰り返すことに重点を置いてしまっていたことだと思いました。また、正解して理由もできていると思い込んでいる部分があるのではないか、ということも点数が取れない原因だと考えました。
    そこで司法試験過去問を10年分、解答用紙も毎回コピーして準備し、時間を計り8回ほど解きました。アルバイトをしていたため、出勤前や休憩中、退勤時間を早めてもらい、帰宅後に毎日1年分ずつ解きました。また、本番中見直しや想定外のことが発生しても対応できるよう、通常の試験時間より10~20分早めの時間に設定し、問題を解きました。そして、自分の苦手なところをファイリングして、理解を完璧にするようにしました。
    その結果前述の通り、司法試験本番では全体で8割を取ることができました。

 2 論文式試験
  ⑴ はじめに
    これまで、司法試験の過去問は行ってきましたが、短答式試験と同様の繰り返し解くという作業を疎かにしていました。理由は、論文は水物と言われているため、復習は自分の知識不足や、理解不足を補えばいいと思っていたからです。しかし、その考えを変えなければ最後の司法試験も落ちると思い、過去問のみを使い、繰り返し解くという勉強方法に切り替えました。
  ⑵ 10~3月TKC全国模試前まで
    法務研究所の主催する、論文対策講座を受講しておりました。その中で、先生に褒められることを目的とするのではなく、ぼろぼろでもいいから、自分に何が足りないかを探すために、論文を書きました。 
またゼミで、ご指導いただく先生のみならず、ロースクール時代に出会った実務家の先生方にも協力していただき、ほぼ毎日答案を書き、添削をしていただきました。
    また、添削の返却を待っている間、可能な限り答案作成後すぐに出題趣旨・採点実感を読み、【落ちない答案】のポイント(例えば採点実感であれば、一応の水準といえる程度は何か、出題趣旨の最低限書いてほしいのは何か)を分析しました。
    その上で、添削していただいた答案が返却された時点で、再度自分の答案を見直し、出題趣旨・採点実感・添削中のコメント、そして合格者の再現答案をもとに、完璧な答案をWordで作成しファイリングをしました。この作業も出来る限り毎日、仕事の休憩時間などの隙間時間を利用して、休日は丸一日行いました。
    作成後は時間を再度図り、答案構成を行って、出題趣旨・採点実感を繰り返し読みました。この作業中に重要なことは知識を入れるのではなく、落ちない答案に重要となる【論文の型】の徹底化を目的にすることだと思います。
  ⑶ 3月TKC全国模試後
    模試では、上位37%程度の合格圏内に入っていました。しかし、これで満足せず、上記作業を引き続き繰り返し行いました。直前期には、これまで書き込んできた趣旨規範ハンドブックと、ファイリングした完全答案を読み返しました。また超直前期には、ファイナルペーパーを作成し、自分の癖を本番では注意するよう心掛けました。

第4 まとめ
 ここまで読んでいただければわかる通り、特に知識を詰め込むという作業は一切しておりません。私が合格できたのは、いかに真剣に司法試験過去問に向き合い、司法試験が何を求めているかを突き詰め、粘り強く研究したからだと思います。また、お忙しい中、たくさんの先生方や友人にお力添えいただいたおかげで、自分の弱点や癖、論文の型や三段論法の徹底的な重要性に気がついて、合格を勝ち取れたのだと思います。決して知識量ではありません。
 正しい努力をすればきっと報われます。心から応援しております。頑張ってください。
以上

2023年3月修了 H.H

 第1 はじめに
 私が司法試験を一度で合格できた勉強法や、気を付けていたことなどについて書きたいと思います。参考にしていただけると幸いです。

第2 経歴
令和3年3月 法政大学法学部法律学科卒業
令和5年3月 明治大学法科大学院既修者コース修了

第3 ロースクール1年目の学習状況
春学期は、大学院での講義の課題や授業に応えられるように予習することが大変で、大学時代とは比べ物にならない学習量に困惑したのを、覚えています。しかし、そのような環境で勉強できたことが、司法試験にも活かされたような気がします。1年目は講義において教授からの質問に応えられるよう、しっかり予習をし、講義での内容は復習し、課題を淡々とこなしていくことが重要に思います。
また、週に1度開催される補助講師ゼミは、ぜひ活用していただきたいです。ゼミは少人数で行われ、補助講師の方は現役の弁護士で、比較的若い先生が多いので、教授には聞きにくい質問を気軽にできたり、自分たちのやりたい科目や内容について講義してもらえます。自分の苦手分野克服には、大変役立ちました。
自分は、早くから司法試験の過去問に触れることが重要と考えていたため、補助講師ゼミでも積極的に司法試験や予備試験の過去問をやってもらい、添削をしていただきました。

第4 ロースクール2年目の学習状況
 2年目に入ってからは、ゼミに3つ入り、とにかく過去問をこなしていくことに注力しました。1科目2時間で書き切ることを意識しながら、実際の試験と似たような環境で解いていました。そして、解き終わった後は、必ず自分の答案を教授や、補助講師の先生に見てもらうようにしていました。司法試験は、自分の答案を全く知らない方が見て、理解できるかが重要です。第三者から見て読める字であることはもちろん、自分の伝えたいことが答案に落とし込めているか、どうしたら答案がより良くなるか、これは第三者に見てもらうことでしか確認できません。よって、人に添削してもらうことは、自分の合格に必要不可欠でした。

第5 短答式試験
短答式は早い時期から、とにかく継続的にコツコツと続けることに尽きます。
模試は必ず受け、可能であれば会場に足を運んで受けるのがおすすめです。受験生がたくさんいる環境に慣れておくことで試験当日、緊張が少なく短答式に臨むことができます。
司法試験の短答式は平均ぐらいしかとれませんでしたが、短答式の成績は高いに越したことはありません。特に民法などは、短答式で勉強したことが、論文式に活かされる場合が大いにあります。短答式はコンスタントにやり続け、試験当日も安定して高得点がとれるようにもっていってください。

第6 論文式試験
 早いうちから司法試験の過去問に触れ、2時間で答案を完成出来るように書けることが重要と考えます。
ロースクール1年目は友達と自主ゼミを組み、予備試験の過去問を一通り解いていました。2年目は平成18年~令和4年の司法試験過去問を、全科目最低でも1周はしてください。
私は辰已から出ている趣旨規範ハンドブックに、論証や答案に書くべきことを自分なりに付箋などを貼って、一元化していました。その本を見れば答案に書くべきことは定まってくるので、司法試験当日までとにかくその内容を頭に叩き込んでいきました。
 論文については、2時間で完璧な答案を書くことは、不可能に近いです。よって、難しいことを書こうとはせず、与えられた質問や課題を真摯に応え、基本的な内容を落とさず、書き切ることが重要かと思います。みんなが書けることを、いかに落とさず答案に書けるかが点数を下げないコツです。

第7 その他
 勉強は友人と一緒にすることが、合格の手助けとなりました。自主ゼミや講義で行なった内容は友達と話し合ったりして、あーでもないこーでもないと考える過程が良かったように思います。司法試験を採点する方々は、テンプレートで論証集をそのまま張り付けたような答案を嫌います。自分なりに一生懸命考えた内容で、質問に応えられている答案の評価は高いです。よって、友人と一緒に問題を考えることが大切です。また、友人と自分の答案を見比べたりすることで、自分の答案のいい点や修正すべき点が見えてきます。それを活かしていければ、答案が良いものになっていくと思います。
司法試験の勉強は、孤独でストレスが溜まり、サボってしまう日もあるかと思います。しかし、友人と一緒に勉強することで、短答式の点数を競わせるなど、勉強に対する孤独感は少なくなり、友人も頑張っているから頑張ろうという、モチベーションの向上に繋がります。友人と勉強することは、自分の合格の大変大きな一助となりました。
 また、体力面と精神面を試験までに仕上げてくることも大切だと思います。
司法試験は5日間行われ、1日7時間、手を動かし続けなければならず、非常に体力の奪われる試験です。その過酷な試験をまず受け切るために、勉強することはもちろんですが、自分なりの休憩方法やストレス解消方法を、試験までに身に着けてほしいです。勉強はたくさんやるに越したことはありませんが、適度に疲れを取る方法を探し、試験まで自分のスケジュールを立て、継続して勉強を続けること、そして試験当日に最高のコンディションで臨めることが大切です。体力面・精神面は、試験には重要な要因となってくるので気を遣ってください。

2023年3月修了 矢澤恒典

 私は、司法試験対策を始めた時期が遅く、ロースクール受験でも大変苦労する有様でした。
そのような中、1年目で合格できたのは、最後の1年間で教育補助講師の助言を受けつつ、①勉強時間の確保と②効率的な学習を実現できたためと考えております。
 そのため、最後の1年で行なった受験対策を中心に説明し、これから受験をされる皆様の参考になればと思っております。

1 略歴
 2021年3月 早稲田大学法学部 卒業
 2023年3月 明治大学専門職大学院法務研究科 修了
 2023年11月 令和5年度司法試験 合格

2 勉強時間の確保
そもそも、絶対的な勉強時間を確保できなければ、合格に近づくことはできません。この点は、よほど自分を律することができる方でない限りは、意識して行う必要があります。
そこで、決して「自分を律することができる」受験生ではなかった私が、勉強時間を確保した方法をご紹介します。
(1) 勉強習慣をつける
 要するに、規則正しい生活を送ることです。極めて初歩的な内容ですが、多くの誘惑がある中では意外と難しいことでした。そこで、起床時間・大学院に居る時間・就寝時間を固定することが有益でした。
私の場合は、6時に起床、9〜20時の間は大学院で勉強し、23時に就寝する生活を送っていました。
これによって、「気分が向かないから今日は休む」といった言い訳をして逃げることができなくなり、正味10時間程度の勉強時間を確保することができました。
(2) 学習計画を立てて可視化する
 学習に対するモチベーションを維持し、毎日継続して勉強するため、1週間ごとに学習計画を立てて取り組むことが効果的です。
これにより、その日に取り組むべきタスクが可視化されて、危機感を持って勉強を進めることができました。また、全体の学習状況がはっきりしたことで、内容の重複する勉強が減り、効率性向上にも繋がったと思います。
具体的な方法としては、以下の通りです。
① 各科目の課題分析
② 課題解決のために取り組む勉強内容の決定
③ 可処分時間を元に1日に取り組む内容を決める
 私の場合であれば、刑法で問題となる論点を発見できない(①)→固定の問題集で問題演習を繰り返して問題発見能力を習得する(②)→1問1時間程度要するので、週15問(平日1日3問)取り組む(③)、といった形でした。
 (3) 実現するために
「強制力を持たせる」こと、具体的には他人を巻き込むことが重要だと思います。
 私の場合は、生活習慣を維持するために、毎朝決まった時間に友人と短答式の勉強をするようにしました。これにより、他人に対して、迷惑をかけてはならないという意識が生じるため、朝早く起きることへの強制力として機能しました。

3 短答式試験の効率的な学習
短答式の配点は、得点調整後でも全体の1割以上を占めています 。また、不確定要素のある論文式と異なり、学習の成果がそのまま得点に反映される唯一の試験です。そのため、「第9の試験科目」と考えて取り組むべきです。
(1) 勉強方法
 ひたすら、過去問を回すことです。私の場合は、紙媒体の方が使いやすいと思い、「短答過去問パーフェクト」(辰巳法律研究所)を使用し、最低6周しました。
(2) 効率良く進める方法
「短答過去問パーフェクトを繰り返し読む」学習方法が効果的でした。このような手法を取ることで、解説を見る手間を省いて、問題を解く効率を上げることができました。
手順としては、以下の通りです。
1周目:全問を解く。分からない点は解説を見て正誤の根拠を確認する。
2周目:全問を解く。この際に、解いた肢の正誤を問題文のページに書き込む(解説や間
違っている点は書き込まない)。
*正解を覚えてしまうことが不安であれば、オレンジ色のペンで書き込み、以後
は赤シートを使って解く。
3周目:全問を解く。正解できない肢と正解に至る根拠を正確に説明できない肢にチェッ
クを付ける。
4周目以降:チェックが付いている肢を解く。以後正解できたものは二重線を引いて、チェックを消す。
直前期:正解できない肢に付箋を付けて、正解するまで徹底的に解く
(3) 本番で問題を解く際の視点
民法と刑法については、多くの問題で全ての肢の正誤を判断できなくとも、正解に辿り着くことができます。具体的には、以下の通りです。このような方法を駆使することで、少しでも正解を増やすことが重要です。
① 正誤が分かる肢を決定(この時点で正解できる場合もあります)
② 正誤がわからない肢を比較し、正しいと思われるもの、誤っていると思われるもの、全く判断できないものに分ける
③ 分別した正誤を比較して、最も近い回答を選択する

4 論文式試験の効率的な学習
 私は、論文式試験対策においては、①固定した問題集の周回と②時間を測った過去問演習を両立して取り組んでいました。①は論点の把握とその処理方法を習得するインプット、②は時間内に答案を書き切るためのアウトプットです。
(1) 問題集の周回
 定評ある問題集を何回も解くことで、論点把握能力や論証が自然と身に付きました。もちろん、一冊の問題集で全ての論点はカバーできませんが、この点は後から他の問題集や模試で補充することで、十分対応できます。
なお、問題集を解くよりも過去問の形式に慣れる方が重要であると考えた科目には実施せず、過去問の復習を行いました。
 以下、使用していた問題集等をご紹介します。
・憲法:司法試験(H18~R4)/予備試験(一部)
・行政法:司法試験(H18~R4)/予備試験(一部)
    *予備試験の解説は「実戦演習行政法」(弘文堂)が参考になります。
・民法:論文マスター(伊藤塾内部の教材)
    *「Newえんしゅう本3民法 改訂版」(辰已法律研究所)で代替可
・会社法:論文マスター/商法演習の問題(一部)
    *「Newえんしゅう本4商法 改訂版」「Law Practice商法」(商事法務)で代替可
・民訴法:論文マスター(伊藤塾教材)/「Law Practice民事訴訟法」(一部)
    *「Newえんしゅう本5民訴 改訂版」で代替可
・刑法:「Newえんしゅう本6刑法 改訂版」(辰已法律研究所)
・刑訴法:「Newえんしゅう本7刑訴 改訂版」(辰已法律研究所)/司法試験過去問(一部)
・経済法:司法試験過去問(ほぼ全年度)/「論点解析経済法」(一部)
(2) 過去問演習
 可処分時間との兼ね合いで、直近10年は起案をし、残りの年度は30〜40分で答案構成する形で対応しました。特に、行政法、刑訴法、経済法に関しては、既出の論点が繰り返し出題される傾向にあり、繰り返し答案構成することが極めて有益だと思います。
 そして、起案した答案は、必ず他人に見せ、客観的に評価してもらうことが重要です。自分ではよく書けたと思っていた答案でも、他人の目からは分かりにくい論述になっていることがあるためです。在学生は特にこの点に関して、教育補助講師制度を積極的に活用して下さい。同じ先生に継続的に答案を見て頂くことで、間違えやすい点や、改善できた点が明らかになり、学習を効率的に進めることができると思います。

5 最後に
 試験本番の緊張の中で唯一の安心材料になるのは、過去勉強してきたことに対する自信です。あと数ヶ月、十分な勉強して、これを自信に司法試験に合格されることを願っております。
以上

2023年3月修了 G.T

合格体験記
第1 初めに
 合格者には様々な方がいらっしゃいますので、合格体験記を参考にする際は、自分と似通った方のものを参考にすることをお勧めします。
 私は東北大学の法学部を卒業後、明治大学のロースクール(既修)に入学し、1年目で司法試験に合格しました。学部1年生の頃から予備校の講座をとっており、ロースクールに入るまでに、7科目の基礎講座と、論文の書き方講座のようなものは聞き終えていました。予備試験については、大学2年生から4年生まで3回受け、全て短答式試験で不合格でした。 学部時代は上記予備校の講座を消化することしかしていないので、以下ではロースクール入学後の学習に絞って、述べていきます。

第2 短答式試験について
 ロー1年目は、短答式試験を意識して勉強したことはありませんでした。ただ、無料で受けられたTKCについては、なるべく受けるようにしていました。点数は本番基準で足切りや、科目足切りになるような点数でした。2年目も、年明けまでは1年目と同じで、特別対策はせず、1月から短答式の対策に着手しました。
 大まかな計画としては、①短答パーフェクトを解いて、常識で解ける問題を増やしていく、②何回解いても間違える問題を一元化教材に落とし込む、③一元化教材を元に、周辺知識を埋めていき、過去問にも出ていない問題も解けるようにする、といった感じでした。ちなみに、短答パーフェクトは分厚くて開きにくく、解きにくいため、裁断してファイルに入れていました。
 1月から3月にかけては論文式対策と並行して、1日20問くらい解くことを目標にしていました。3月が終了する時点で、パーフェクトは2周していました。4,5月は論文式対策をメインにしていたので、短答式は細かい知識を軽く確認する程度でした。6,7月は短答式の比重を増やしていきました。具体的には、既に2周しているパーフェクトを軽く見て、これはもう解けると思った問題を、ファイルから破って捨てていました。その際、捨てるか悩むような知識は一元化教材にメモしていました。そして、パーフェクトの厚さを3分の1くらいにして、それを何回か解いていました。あとは一元化教材を何回も見返して、細かい知識まで詰めていきました。試験当日、パーフェクトに残った、自分が苦手な問題を解いて、論文式の頭から短答式の頭に切り替えていました。
 一元化教材は、民法・刑法は逐条六法、憲法のうち人権は百選、統治は予備校のテキストを使っていました。また、配点が大きい民法については、予備校の条文解説講義をとって、通学時間などに聞いていました。
 上記の方法で、3月に受けたTKCの模試では100点台だったのが、本番では8割をとることができました。個人的に司法試験は、短答式でいかに点数を取るかが重要になってくる試験だと思います。足切りを突破すればいいという考えではなく、満点を目指して勉強するべきだと思います。短答式の点数差が論文式の点数にどう影響するかは、様々なところで言われているので、調べてみてください。
 
第3 論文式試験について
 論文式試験で合格点を取るには、十分な知識と論理的にわかりやすい文章を書く能力の2つが必要だと考えました。そこで、2つの力をつけるためにやってきたことを説明します。
1 知識面について
 知識については、予備校が教えてくれる知識で、一旦は十分であると思います。(それを答案にうまく落とし込めるか否かは別の話なので、予備校だけで合格できるということを言いたいわけではありません)ただ、せっかくロースクールに入学したのに、予備校が与えてくれる知識しかないのはもったいないと思い、予備校の知識をアップデートするイメージで、授業を受けていました。具体的には、今まで単に暗記していたことを理解すること、一つ一つの知識を有機的に繋ぎ合わせて、体系的に理解することをしてきました。そうすることで、一般的な基本書には記述がないような問題が出た時に、既にある知識を応用して、対応する能力がついたと思います。結果、ローで勉強を進めているうちに、予備校のテキストはほとんど使わなくなり、代わりに自分で作った論証集に知識を一元化していき、基本書は辞書的に使う、というスタイルに落ち着きました。
2 論理的でわかりやすい文章を書く能力について
 私自身、この能力が欠けていると自覚しており、学部時代に組んでいたゼミでもよく、文章がわかりにくいと言われていました。そこで、文章が上手い人の真似をすることから始めようと考えました。具体的には、過去問演習に取り組む際、上位合格者の答案例(ぶんせき本に載っているもの)の、当てはめの部分で真似できそうな言い回しを、そのまま拝借して文章を書くようにしました。また、できるだけ一文を短くして、接続詞を多用しないように意識しました。それにより、文章が読みにくいと言われることは、以前に比べて減りました。
 また、上記2つの他に、暗記の必要性も一定程度あると思います。ただ、全てを暗記するのではなく、できるだけ制度趣旨を理解して、そこから規範を導き出す能力も必要だと思います。暗記と理解のバランスをうまく保つことも、合格する上では重要だと思います。
具体的な論文式対策は、①網羅性の高い問題集1冊を繰り返し解くこと、②司法試験の過去問を解くこと、そこで学んだことを自分の論証に落とし込む、という勉強をしていました。
 ①について、憲法は『判例から考える憲法』(法学書院)、行政法は『実戦演習行政法』(弘文堂)、民法は『ロープラ』、商法はローの演習で使った教材、民訴法は『ロープラ』、刑法は『事例演習教材刑法』(有斐閣)、刑訴法はローの演習で使った教材、経済法は司法試験の過去問を使っていました。
 ②について、刑事系科目は、処理の仕方が同じだったり、同じ論点が出る可能性が高かったりするので、できるだけ全部やるように心がけ、15年分くらい取り組めました。民法は同じような問題が出る可能性は低く、処理パターンも特別なことはないので、過去問の重要性は低いと考え、2年分くらいしかやりませんでした。商法・民訴法については、頻出のテーマが被る可能性があると思い、7年分くらいやり、行政法の解き方は予備試験の過去問でだいたい掴めたので、司法試験過去問については7年分ほど解きました。憲法は好きだったので、全ての過去問を解き、経済法は出る分野がほぼ決まっているので10年分くらい解きました。なお、公法系については、大島先生のガールシリーズを使って、過去問分析をしていました。

第4 最後に
 これまでロースクールにおける勉強を書いてきましたが、私が現役で合格できた一番の要因は、ロー入学前に予備校の基礎講義を7科目分聞き終えていた点にあると思います。それにより、ローの授業も理解が進み、過去問演習もやりやすく、特に躓きませんでした。なので、もしロースクールにいる時点で、予備校の基礎講義に相当する勉強が終わっていない方(予備校の講座に限らず、基礎的な基本書の通読等)は、それを終わらせることを最優先にする方がいいかもしれません。
 受験勉強は、精神的に辛いことが多いと思います。詰め込みすぎず、自分なりのリフレッシュ方法を見つけて、気持ちを楽に過ごすことも大事かと思います(私は直前の1ヶ月、よくサウナに行っていました)。ロースクール生活も楽しく過ごした方が、良い結果がついてくると思います。入学当初の私や、TVドラマ『女神の教室』の登場人物のように、勉強する場所だからといって、人間関係を遮断することはあまりお勧めしません。友人とゼミを組んで勉強したり、一緒にご飯を食べに行ったりすることも重要かと思います。気楽に頑張ってください。
 

2023年3月修了

 合格体験記
第1 はじめに
私は、ロー入試のとき、受験したほぼすべての学校から、不合格通知を受け取りました。司法試験の全国統一模試は、二度受験しましたが、いずれも合格ラインを超えることができませんでした。司法試験本番に至っては、設問をまるまる落とすレベルの大規模な途中答案を、3通も作ってしまいました。それでも、最後まで諦めなかったら、受かりました。自信がない受験生や、不安でいっぱいの受験生が、この合格体験記を読んで、少しでも可能性を感じることがあれば、とても嬉しく思います。

第2 合格までの道のり
1 学部時代
学部時代は、某予備校に通っていましたが、なかなか要点を掴むことができず、早すぎる進度においていかれ、法律の勉強を苦と感じていました。そのような惨状でしたので、与えられた論証を、意味も分からずに暗記するのが精一杯でした。法曹養成に力を入れている大学の法学部でしたので、周りには頼れる先輩や友人がいることにはいましたが、自分の現状に引け目を感じ、助けを求めることができませんでした。結果ロー入試は、国公立3校、私立3校を受験して、明治のⅡ期(後期)以外はすべて不合格となりました。

2 ロー入学から司法試験合格まで
学部時代の学習状況を踏まえて、予備校だけを頼りにした勉強からは距離を置き、ローの授業と基本書を、学習の中心に据えました。事の本質をよく考えるようになり、法律の勉強が楽しくなりました。また、どんなに些細なことでも、分からないことや気になったことは、先生に質問しました。あまりに基本的なことを聞いて、驚かれることもありましたが、先生方はいつでも丁寧に対応して下さりました。ひとりで勉強することの危険性は、学部時代で痛いほど学んだので、基本的に友人と一緒に、勉強するようにしました。得意分野を教え合ったり、進捗の確認をしたり、時に不安を吐露できる仲間がいてくれたのは、とても有り難いことでした。
司法試験の全国統一模試は、本番の4ヶ月前と2ヶ月前に受験しました。いずれも合格推定点には40~50点ほど届きませんでしたが、肝心の本番では合格最低点をごくわずか、10点ほどですが、上回ることができました。

第3 司法試験対策
1 短答式試験対策
民法は、「短答過去問パーフェクト」を使用して対策しました。ひとつでも多く正確な知識を身に付けたかったため、消去法は用いず、一肢ごとに正誤を検討し、解説を読み込みました。この勉強方法なら、「肢別本」の方が適していたように思います。正誤が分かっていても、その答えになる理由を、自分の言葉で説明できない場合には、不正解として扱いました。そのような肢には付箋を付けておき、正解として扱えるようになるまで、まわしました。この勉強方法により、表面的でない、使える知識が身に付いていったと感じています。担保物権は、コスパが悪いと思ったので、捨てることにしました。
憲法も、民法と同じ方法で対策することを予定していたのですが、優先順位を考えた上で、しばらく温めていたら時間が無くなってしまったため、直前期に「判例六法」を素読して、試験に挑みました。突貫工事で良い点数を取れるはずもなく、一歩間違えれば、足切りというような成績でしたが、それでも残された時間でできることをやったのは、良かったと思っています。試験対策が順調に進めばそれが一番ですが、順調でなくなった時に取捨選択を間違えないことが肝要と感じます。
  刑法は得意だったので、論文式試験では出題されない細かいところを「判例六法」や基本書で確認する他は、取り立てて短答式試験対策をすることはありませんでした。
  直前期には、過去問を刷って友人と一緒に、実戦形式で演習を行いました。自分のレベルを確認しつつ、ペース感覚を養うことができました。

2 論文式試験対策
(1) 授業の活用
授業の復習と課題が論文式試験対策でした。基礎知識がない上に、要領が悪かったのもありますが、復習と課題を完遂するのに、かなりの時間をかけていました。
復習では基本書を丁寧に読み込み、分からないところは先生に質問するなどして、扱った論点をきちんと理解するよう、努めました。そうして得た理解は、自分の言葉で論証の形に起こして、まとめノートにストックしました。まとめノートは、完全オリジナルの科目もあれば、「趣旨規範ハンドブック」に書き込んだ科目もあります。直前期にはこれを暗記し、本番当日も会場に持っていきました。
課題では、いわゆる完全答案を作成するようにしていました。完全答案の作成は、時間と労力がかかる大変な作業ですが、問題の所在を履き違えていないか、きちんと規範の意味を理解できているか、事実と評価を区別できているかなどの点を吟味する機会となり、最終的に目指すべき答案のイメージを持てるようになるので、個人的にはとてもおすすめです。

(2) ゼミのすすめ
勉強方法に正解はないので、それは自分なりのものを模索すべきと考えますが、その上で、ゼミに入ることだけは強くおすすめします。ゼミには、添削を経て浮き彫りになる自分の答案の癖や、周りの受験生のレベルなど、ひとりで勉強していては気付くことが難しい貴重な情報が、たくさん集まります。また、気にかけて下さる先生や、高め合える仲間とも出会うことができます。同期の合格者は、ほぼ全員がゼミに所属し、積極的に参加していた人でした。それだけ、ゼミの学習環境は良いものだったのだろうと感じます。

(3) 自分なりの勝ち方
私の論文式試験対策は、上述したように授業を中心にしていましたが、すべての授業、科目に等しく力を注いでいたわけではありませんでした。            
ロースクール生活の大半は、好きな科目の学習に充てていたように思います。面白さに気付くことができなかった科目は、3年の秋学期以降、すなわち、授業がある程度、落ち着いてきてから、危機感に駆られて嫌々取り組みました。そのような科目の多くは、案の定、悲惨な成績を取りましたが、足切りにさえ遭わなければ、私としては十分でした。あとは、得意科目で埋め合わせをして、全科目の合計で、合格最低点を超えられれば良いので、上位合格を目指すのでなければ、そういう戦略もありだと思っています。どの科目で、どのように得点を積み重ねて合格最低点に辿り着くかは、ある程度シミュレーションしておいてもよいかもしれません。もちろん、全科目満遍なく高められるのであれば、それに越したことはありません。

第4 伝えたいこと
 司法試験に対するイメージは、少しでも和らいだでしょうか。受けてみて気付いたことですが、司法試験は何も特別な試験ではなく、努力の方向性さえ間違えなければ、やった分だけ、きちんと評価してもらえる試験です。現状を不安に思うこともあるかとは思いますが、勉強中も本番の5日間でも、届かないと決めつけるのではなく、冷静な分析と適切な取捨選択を繰り返してみてください。結果は自然とついてきます。