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学生相談室

「相談室の窓から」~悩みは続くよ、どこまでも……~

2014年04月21日
明治大学

『悩みは続くよ、どこまでも……』
前学生相談室相談員
文学部准教授 櫻井智美

 
「人間は考える葦である。」フランスの思想家・数学者パスカルの言葉で、「人間は自然のうちで最も弱い葦の一茎にすぎない、だがそれは考える葦である」として、自然において脆弱だが思考する存在としての人間の本質を表現したもの(『大辞林』)らしい。確かに、人はいろいろな目標や夢を持ち、それにどう近づくか考え工夫し努力し、時に困難や予想外の出来事にぶつかると考え悩む。ボーッとしていても勉強していても、常に人は脳みそを動かしている。

さて、自分自身の大学時代を振り返ってみる。「こんな人になりたい」という夢は、入学直後からだんだんと、つまらないおかしなことに思えるようになっていった。それは、周囲に勉強以外でも得意分野を持つ強者がゴロゴロと転がっていたからである。大学に合格したことで持っていた自信も、いつの間にかペシャンコになっていき、「自分には何ができるのだろうか」と思い悩んだ。こんな大学入学後の無力感は、生活が落ち着いてくるゴールデンウィークを過ぎて大きくなったように記憶している。

しかし、その時代はまだ、モラトリアムは大学生の特権だ、思い悩んで「自分探し」をすることも大切だと、友人と長電話し、時には次の朝まで語り合うことが許容されていたと思う。そうやって人と話すことで、悩みは昇華され、物事のとらえ方や対処の幅を広げていった気がする。

時が過ぎ、入学試験日の街頭では「受験生の親御さんですか?」と聞かれる年齢になった。そして、学生の皆さんには「難しいことを言う大学の先生」に見えているのであろうか。そんな私も、学生相談室に勤務する中で、部屋にある心理学・教育学関係の本を読むことが増えた。ただ、『毒になる親』・『不登校○○』……、つい先に手にとってしまうのは、自分の普段の悩みを解決してくれそうな本である。そう、私は今も悩んでいる。大学生の時と同じように。でも、悩むからこそ悩んでいる他の人に優しくもなれる、という思いが、年を重ねて大きくなってきている。そう、悩みはどんな時にも無駄ではない。

皆さん、大いに悩みましょう!大学は今でもきっと、モラトリアムを許容してくれる場所なのだから。そして、悩み疲れたら、いつでも相談室に遊びに来てください!