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学生相談室

「相談室の窓から」~日本人って利他的あるいは利己的?~

2015年09月20日
明治大学

『日本人って利他的あるいは利己的?』
                            学生相談室 相談員
経営学部 准教授 青木 克生 

 経営学部の青木です。2014年度から学生相談員をしています。
相談員をしていて思うことは,皆さんが学生生活をしていく上で周りの人(たとえば同じゼミやサークル,クラスのメンバー)との人間関係について考え直してみることがいかに重要かということです。
 私は過去に2年間イギリスに住んでいたこともあり,外国人(特に西洋人)との付き合いが非常に頻繁にあります。そこで思うことは,彼らはいい意味で利己的であるということです。これは,西洋人は個人主義なので自分のことしか考えていない,ということではありません。
 私の経験から言えば,彼らは自分に対してより忠実であると思います。自分が興味のないことは引き受けませんし,合わない人と無理に友情を深めようとはしません。人の誘いを平気で断りますし,断られたからと言って気分を害するわけでもありません(もちろん人にはよりけりですが)。
 それに対して,日本人はお誘いを断ると相手が気分を害するのではないかと気にしますし,頼みごとをされると相手のことを考えて興味のないことでも引き受けたりします。
 これは,日本人は利他的ということなのでしょうか? 多くの日本人は本当に他人のことを考えて頼みごとを引き受けているのでしょうか? 「日本人は人の和を重んじる」といいますが,私もその意見に賛成です。しかしこれは,「利他的である」ということではないと思います。
 「利他的」の意味には様々なものがあると思いますが,ここでは単純に「他人のためになるように」と考えてみましょう。本当にわれわれが利他的であるのであれば,お誘いや頼みごとを断られても気分を害さないでしょう。でも実際には,相手に気分を害されるのが嫌だからお誘いや頼みごとを引き受けているのではないでしょうか?
 最後になりますが,無理に他人の誘いや頼みごとに応じてストレスをためる必要はないと思います。自分に忠実であることは悪いことではありません。そうではなく,誘った側が断った相手のことを気遣ってあげる。また別の機会に気兼ねなく誘ってあげる。これが他人に対する思いやりなのだと思います。
 人の和を重んじることが悪いことだとは思いません。ただ,それが重荷になっている人がいることを分かってあげること,そのような人に思いやりを持ってあげることも重要だと思います。